【ピロリ菌】ピロリ菌除菌に保険適用範囲拡大が奏功、胃がんリスクに大きな成果。

 日本人の罹患率が最も高い胃がん。
 その主な原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌の保険適用範囲が、公明党のリードで慢性胃炎にまで拡大して2年が経過した。除菌による予防効果に加え、保険適用の要件である胃内視鏡検査(胃カメラ)が胃がんの早期発見・治療に結び付くなど、命を守る取り組みは着実に進んでいる。
 国内で年間約12万人に発生し、約5万人が亡くなる胃がんの98%は、ピロリ菌感染による慢性胃炎が進行したものと考えられている。国内のピロリ菌感染者は推計約3500万人。水道など衛生環境の整っていない時代に幼少期を過ごした中高年以上の年齢層に多い。
 除菌については、以前は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などに症状が進んでいないと保険適用ができなかった。
 このため公明党は、胃がん撲滅に取り組む北海道大学大学院の浅香正博特任教授と連携。2013年2月から
 (1)内視鏡検査で慢性胃炎または萎縮性胃炎と診断
 (2)ピロリ菌検査で感染を確認―を要件に、
 慢性胃炎の段階から除菌に保険が適用されるようにした。
 公明党が提案した内視鏡検査の実施について、浅香特任教授は「ピロリ菌除菌の際には必須の検査だ」と説明する。ピロリ菌感染者の場合、慢性胃炎だけでなく、胃がんが見つかる可能性もあるからだ。早期胃がんであれば内視鏡手術などで90%以上が助かる。症状が進んでからの開腹手術は傷口が大きく、入院も3~4週間にわたるが、内視鏡手術であれば傷は小さく、入院も3日程度で済む。
 「スキルス」発見で若い女性の命救う
 浅香特任教授によると、無症状なのにピロリ菌検査を受けに来た30代女性から、内視鏡で早期のスキルス胃がんが見つかった事例もあるという。スキルス胃がんは若い女性がなりやすく、症状が進行してから発覚し、半年から1年後に亡くなるケースが多い。浅香特任教授は「この事例だけでも、保険適用には大きな意義があったといえる」と力説する。
 保険適用後1年の除菌実績は、浅香特任教授によると出荷ベースで約130万件に上る。日本では内視鏡検査100件当たり1件の胃がんが見つかるため、浅香特任教授は保険適用の効果として「内視鏡検査で年間1万人超が新たに胃がんと診断され、そのほとんどが早期だと推定される」と分析。対策が進めば「5年後の20年には死亡者を3万人まで減らし、医療費も2~3割は抑制できる」と予測する。
 その上で「慢性胃炎も早期胃がんも自覚症状がないので、ぜひ一度、検査を受けてほしい。ピロリ菌感染がなければ安心できるし、除菌すれば胃がんのリスクが3~5割減る。胃潰瘍など胃の病気も8割以上は予防できる」と訴えている。さらに「保険適用における公明党の尽力は大きい。各地域でも胃がん対策の先頭に立っており、非常に感謝している」と述べ、さらなる取り組みに期待を寄せる。
 11年2月に質問主意書で政府に初めて「胃がんの原因はピロリ菌」と認めさせるなど、対策を進めてきた公明党の秋野公造参院議員は「全国の市町村の胃がん検診(現在は主にエックス線検査)で、死亡率減少効果などの有効性を示すデータが整い次第、内視鏡検査やピロリ菌検査が順次実施されるよう取り組みたい」と強調。今月6日の参院決算委員会でも、がん検診に関する国の指針の早急な改正を提案している。