【民法改正】契約の有り方は時代により変化している。消費者保護の徹底を実現したい。

 消費者が安心できる「契約法」であることを目指して、120年ぶりに民法の改正が行われそうです。
 法制審議会(法制審=法相の諮問機関)の民法部会は、2月末に「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」(改正試案)が公表したのを受け、近く意見公募も始まるようです。
 民法は、1896年(明治29年)に制定。ドイツ民法第1草案を参照して作られました。
 民法には、結婚など家族関係、所有権など財産関係、契約など取り引き関係の基本ルールが定められ、「市民社会全般を支える法的インフラ(社会基盤)」と位置付けられています。家族関係の規定は戦後すぐに改正されましたが、明治以降の社会・経済情勢の激変にもかかわらず財産関係の大改正は手つかずで、種々の特別法の制定や判例の積み重ねで変化に対応してきた経過があります。
 また、民法は、2004年に明治時代の「文語カタカナ」から「口語ひらがな」に表記が現代化されたものの、内容の大改正はありませんでした。
 今回の改正論議の範囲は、契約を中心にした債権関係に限定されているものです。しかし、主な論点だけでも民法の基本原則に関わる難問ぞろいで議論には時間が必要です。今回のパブリック・コメント(意見公募)を踏まえ、15年の通常国会への改正案提出をめざします。
    
 改正論議では消費者が安心できる契約ルール(契約法)をどうつくるかが重要テーマです。
 民法の契約法は、対等な市民と市民が自由に契約を結ぶことを原則としています。しかし、現実の取り引きを見ると、企業と消費者の間には、商品に関する情報量(技術やコストなどの知識)に格差があり、また、大企業と下請けの町工場では商談を進める交渉力に格差があると指摘されています。
 こうした対等でない契約に関しては、商法や消費者法などの特別法が弱い立場の側を保護しているわけですか、今回の改正試案では、民法にも情報や交渉力に格差がある場合の契約について規定を新設する考えが示されました。
 具体的には、格差がある当事者間の契約でトラブルが発生した場合、その解決に際しては「格差の存在を考慮しなければならない」との規定を置くというものです。
 
 さらに、現実の取り引きで多用されながら民法に定めのない約款の規定を新設する案も提起されています。
 約款とは、企業が顧客に対し一方的に同意を求める「定型化された契約条項」。細かい字で印刷され内容も詳細で読み通すことさえ難しいが、企業にとっては個別の交渉を省き、画一的内容の契約を大量に結ぶために必要なことも事実です。
 しかし、解約などのトラブルが起きたとき、企業が「約款に書いてある」として高額の違約金を求め、顧客が約款の不当性を訴え、紛争になる事例も多い。
 改正試案では、約款を契約の内容とするには相手方との合意が必要としました。しかし、相手方の合意があっても約款の規定が合理的でないもの、例えば、一方的に企業に有利な条項については無効とされるとしました。
 
 また、「連帯保証人になったために財産を失った」――こうした過酷な実態を受け、改正案は個人保証の原則禁止を提起しています。
 日弁連の「2011年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、「保証債務」「第三者の負債の肩代わり」を原因として破産手続きを申し立てた人は、破産債務者の4分の1を超え(約26%)、1997年以降の5回の調査でも同水準で推移していることは看過できません。
 日弁連は保証契約について、「困っている債務者から『決して迷惑をかけない』として依頼を受けると断りにくい」「将来の負担を現実的なものと考えずに保証契約に応じてしまう」などの事情があり、自殺など保証被害も深刻であるとして個人保証の原則禁止を主張しています(12年1月の意見書)。
 改正試案は保証契約について、不動産などの担保のない債務者が自己の信用を補う手段として「実務上重要な意義を有している」としながらも、個人の保証人が想定外の多額の保証債務の履行を求められ「生活の破綻に追い込まれる事例が後を絶たない」との理由で個人保証の原則禁止の必要性を強調し、中小企業の経営者自身が債務を保証する経営者保証はその例外とすることを検討課題としました。
 この民法改正について、法相の法制審への諮問(第88号=09年10月)には、(1)社会・経済の変化に対応する(2)国民一般に分かりやすい規定にする――ことが改正の必要性として示されいています。
 法制審委員からは、契約関係の法律が国際的統一化の方向にあり、統一法のモデルを発信したいとの考えも示されています。また、法制審では「判例を理解していないと民法が使えない」「条文と実際の運用が違う状態を放置してよいのか」との声も上がったようです。
 一方、日弁連は08年12月に「民法は相当程度安定した法規範として機能している」、11年9月に「従来積み上げてきた判例や解釈等の実務によって現代社会に十分対応できている」とする意見書を公表。
 経済同友会は2月、資本主義国家では「対等な当事者が自己責任で取り引きをすることが大原則」とし、基本法である民法に消費者の権利を強調する規定を入れることに反対する意見を表明した。
 私たちの生活と切り離すことができない民法の法体系や条文は、民法そのものの改正と一方で判例の積み重ねを評価して改正の不要を言う場合があります。いずれにしても民法が何のためにあるかを問う事が重要であり、本来法は個人においても更に身近な存在であることが求められるものです。