国民生活に最も影響する消費増税は、その増税までにいかに国民生活への負の影響を軽減させるかが重要です。その考え方を以下の公明新聞の記事から学びます、
2015年10月の消費税率10%引き上げ時に、低所得者対策として軽減税率導入をめざすことで与党は合意しています。実現に向けては来月の税制改正論議で具体的な制度設計を盛り込む必要があり、議論の詰めを急いでいます。何が検討されているのか。公明党・軽減税率制度調査委員会の上田勇委員長に聞きました。
与党内の議論の現状は?
焦点は対象品目と事務負担。制度設計を提示し、詰め急ぐ
自民、公明両党がまとめた2013年度税制改正大綱には、「消費税率の10%引き上げ時に、軽減税率制度を導入することをめざす」と明記されています。これを踏まえ、与党軽減税率制度調査委員会は、関係団体へのヒアリングを重ね、12日に中間報告をまとめました。現在、この中間報告を基に軽減税率の制度はどうあるべきか、議論を詰めています。
公明党は、軽減税率の対象について、酒と外食を除く食料品全般と新聞、出版物を提案しています。国民が納得のいく分かりやすい線引きとするためには、食料品の中で対象を区分しないことが重要だと考えているからです。
日本の消費税に当たる付加価値税で軽減税率を導入しているヨーロッパ諸国でも同様の対応をしています。もちろん、軽減税率の導入には課題もあります。対象品目の線引きや事業者の事務負担をどうするのか。軽減税率の導入で社会保障財源の不足が生じた場合の対応も考えておく必要があります。
政府・与党内には慎重論もあり、まさに軽減税率導入への正念場を迎えています。
公明党は、焦点となっている対象品目の線引きや事務負担の課題について対処する制度設計を提示し、詰めを急ぎます。
実現にこだわる理由は?
海外の軽減税率低所得者を含めて、子育て世帯にも幅広く恩恵が及ぶ
消費税には、低所得者ほど負担感が増す“逆進性”の問題があります。それを和らげる対策が必要であることは、与党の共通認識になっています。
“逆進性”の緩和策の一つが、軽減税率です。食料品などの生活に欠かせない商品やサービスを対象に、標準税率より低い税率を適用する仕組みです。
低所得者対策として決定した「簡素な給付措置」(市町村民税非課税世帯1人当たり1万円)もありますが、これは一度限りの措置であり、対象も限定的です。
一方、軽減税率は低所得者だけでなく、消費の多い子育て世帯を含めた中間所得層に幅広く恩恵が及びます。だからこそ、公明党は軽減税率の導入が重要だと考えています。
ヨーロッパ諸国の例を見ると、付加価値税の標準税率が19%のドイツでは、食料品の軽減税率は7%、標準税率19.6%のフランスでは、食料品の税率は5.5%です【表参照】。両国をはじめ、EU主要国では、食料品や水道、新聞、国内旅客輸送などが軽減税率の対象に設定されています。軽減税率は欧州で実績のある制度であり、日本においても十分に実行可能です。
消費税が恒久的な税制である以上、“逆進性”への対策も恒久的にするのが筋です。
マスコミ各社の世論調査では、国民の約7割が軽減税率の導入を求めています。国民生活を守るため、公明党は導入へ全力で取り組みます。
中小事業者の負担増す?
事務など負担が過剰にならないよう、十分に配慮する
中小企業、小規模事業者の経理事務の負担が重くなるのではという懸念もありますが、制度設計で十分配慮する考えです。
現行の制度では、中小事業者に過剰な負担とならないように、免税事業者や簡易課税制度が設けられています。
ヨーロッパ型のインボイス(消費税額などが示された納品書)が導入されると、小規模な免税業者が取引から排除されるとの懸念の声もあります。しかし、今までのような請求書保存方式を用い、税率ごとに区分経理すれば対応できるとの専門家の意見もあります。
また、簡易課税制度も重要です。消費税の納税額は、売上高にかかる消費税から、実際に仕入れにかかる消費税を差し引いた残額を納税する仕組みです。仕入れ高を計算するのは手間がかかることから、中小企業の事務負担を減らすため、売上高の一定割合(みなし仕入れ率)を仕入れ高とみなして納税額を簡単に計算できるようにしたのが簡易課税制度です。こうした制度を引き続き活用すれば、事務負担が過大にならないと思います。
軽減税率は、年末の税制改正大綱の中で結論を出すこととなっています。国民が支持する制度導入へ、公明党は総力を挙げていきます。