【平和安全法制】国民を守る隙間のない安全保障体制を憲法9条の精神のもとで構築。

 公明党の「平和安全法制」について、与党協議会座長代理である公明党北側副代表が質問に答えて、法制整備の意義と公明党の主張について述べました。
 5月15日、「平和安全法制」の関連法案が国会に提出されました。法制整備の意義と公明党の主張について公明党の北側一雄副代表に聞きました。
 なぜ今、安保法制の整備を進める必要があるのですか?
 安全保障環境が厳しさを増す中、国民を守る隙間のない体制を構築するとともに、国際社会の平和にも貢献するため。
 ―日本に対し、どのような脅威がありますか。
 北側一雄副代表
 核兵器や弾道ミサイルなど大量破壊兵器の脅威があり、しかもそれが拡散しています。また、軍事技術も著しく高度化しています。わが国の近隣でも弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、核開発疑惑を否定できない国があります。国際テロやサイバーテロの脅威も深刻です。
 こうした中で、国と国民を守ることは政治の最も大事な仕事であり、どのような状況であっても対応できる隙間のない安全保障体制を構築するとともに、抑止力を強化する必要があります。一方で、国際社会の平和と安全に対する貢献も重要です。与党はこれらの視点から安全保障法制整備の議論を重ねてきました。
 政府が整備する主な法制の全体像
 ―与党の議論は拙速との声もありますが。
 北側
 安保法制の与党協議は昨年5月に始まり、丸1年をかけ25回を数えます。資料もその都度、公表してきました。公明党の党内論議もそれ以上行っており、決して拙速だとは思いません。
 国会に法案が提出されましたので、今後、衆参両院で活発な論議がなされ、国民の皆さまの理解を得られるように努めてまいります。
 ―政府は他国防衛のための集団的自衛権を認めたのですか?
 「専守防衛」を堅持します。憲法第9条が禁じる他国防衛を目的とした集団的自衛権は、新3要件によって行使できません。
 北側
 憲法第9条の下では、これまで通り、もっぱら他国防衛のための集団的自衛権の行使は一切認められません。
 政府の憲法第9条解釈は、長年にわたる国会との議論の中で形成されてきました。その中で一番の根幹になっているのが1972年(昭和47年)の政府見解です。すなわち「自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置としてはじめて容認されるものであり、そのための必要最小限度の『武力行使』は許される」という考え方です。
 この考え方に立ち、日本を取り巻く安保環境が厳しさを増す中で、国民を守るためには「自衛の措置がどこまで認められるのか」「その限界はどこにあるのか」を突き詰めて議論した結果が、昨年7月の閣議決定だったわけです。この閣議決定では、憲法第9条の下で許される「自衛の措置」発動の新3要件【表参照】が定められ、法案に全て明記されました。
 憲法第9条の下で許容される自衛の措置 新3要件
 ―新3要件の意義は。
 北側
 「自衛の措置」の限界を明確にしたことです。新3要件では、日本への武力攻撃が発生した場合だけでなく、日本と密接な関係にある他国に対する攻撃が発生した場合でも、これにより日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される「明白な危険」がある場合に限って「自衛の措置」をとることができる、と見直しました。「明白な危険」とは、国民に、日本が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況をいいます。
 しかも、自衛権の発動に当たっては、国の存立を全うし国民を守るために、他に適当な手段のない場合にのみ許されます。あくまで「専守防衛」「自国防衛」に限って許されるという厳しい条件が付いているのです。
 従って海外での武力行使を禁じた憲法第9条の解釈の根幹は変えていませんし、国連憲章第51条にあるような、もっぱら他国防衛を目的とした集団的自衛権の行使は認めていません。
 ―なぜ、外国軍隊の後方支援をする必要があるのですか?
 一つは日本の防衛のため。もう一つは国際の平和と安全に貢献するため。ともに武力行使はしません。
 ―後方支援とは、どのような活動をいいますか。
 北側
 外国軍隊に対し、その武力攻撃と一体化しない範囲で輸送や補給などの支援をすることです。(1)日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に日本の平和と安全を守るため(2)国際社会の平和と安全を脅かす事態に国際社会の平和と安全に貢献するため―に実施します。
 (1)については周辺事態法がありますが、名称を「重要影響事態法」に変更して対応します。
 (2)は、これまで特別措置法(特措法)で対応してきました。9.11米国同時多発テロを契機としたテロ特措法などの例があります。今回新たに一般法(恒久法)として「国際平和支援法」を制定します。
 二つの活動の目的は大きく異なるため、公明党は別々の法律として立て分けるべきと主張しました。
 ―日本の防衛のための後方支援であっても、まだ有事ではないので、「武力の行使」や「他国の武力行使と一体化」する活動は許されないのでは。
 北側
 その通りです。憲法第9条の下では、武力行使は認められません。特に「一体化」を防ぐために、外国が「現に戦闘行為を行っている現場」でない場所で行う支援活動に限って認めました。また「一体化」を避けるため、戦闘行為が行われることが予測される場合などの活動休止や中断の仕組みも設けました。
 ―国際社会の平和と安全のために実施する後方支援の法制を、なぜ一般法に変えるのですか。
 北側
 一般法にすることで、自衛隊が日頃から訓練や準備をし、さらに、国際社会の平和と安全の脅威になるような事態が起こった時、国連や各国との調整、現地調査なども迅速にできるため、自衛隊にふさわしい役割、任務を適切に選ぶことが可能になります。
 ―一般法では自衛隊の海外派遣が政府の自由になり無制限な派遣になりませんか?
 北側
 公明党は、自衛隊の「海外派遣の3原則」【別掲】を提起し、歯止めをかけました。
 特に一般法は「国際法上の正当性」に関し、国連決議または関連する国連決議があることを絶対条件にしました。過去の特措法は国連決議を根拠に制定されており、こうした点を重視した公明党の考えが反映されました。
 「国民の理解と国会関与など民主的統制」についても公明党の強い主張を踏まえ、自衛隊の海外派遣には国会の「例外なき事前承認」を義務付け、さらに派遣が2年を超える場合にも国会の再承認を必要としました。
 さらに「隊員の安全確保」のため、国会承認の前提となる基本計画の段階で安全性が確保されているかなどもチェックできるようにしました。
 海外派遣の3原則
(1)国際法上の正当性の確保
(2)国民の理解と国会関与など民主的統制
(3)自衛隊員の安全確保
 ―PKO法の改正で自衛隊が治安維持までやるのですか?
 本来、現地国の警察が担う治安維持をPKOとして活動する自衛隊が担うことはあり得ません。
 ―自衛隊に治安維持をさせ、武器使用の範囲も広げるのですか?
 北側
 治安維持活動一般は、現地の警察がやるべき任務であり、それを自衛隊が肩代わりすることはありません。
 今回の国連平和維持活動(PKO)法改正で自衛隊が実施する安全確保業務は、防護を必要とする住民を守り、特定の区域を巡回するなどの内容です。これは多くのPKO参加国がこれまでもやってきたことです。
 安全確保業務を行う以上、自衛隊員に自己を守るだけでなく任務遂行型の武器使用も認めますが、正当防衛と緊急避難以外は人に危害を加えてはいけないとの原則は変えません。
 ―国連が統括しないPKO類似の活動もPKO参加5原則【別掲】で実施するのですか?
 北側
 国連安全保障理事会の決議で設置されたPKOではなく、国際社会が実施するPKOに類似した平和安全活動についても、国連決議や一定の国際機関の要請、国連の主要機関の支持といった国際法上の正当性が確保される場合には、日本も参加できるようにしました。ただし、PKO参加5原則と全く同様の厳格な条件の下でしか参加はできません。
 PKO参加5原則
(1)紛争当事者間の停戦合意の成立
(2)紛争当事者のPKO派遣への同意
(3)PKOの中立性の確保
(4)(1)~(3)のいずれかが満たされない場合には、部隊を撤収
(5)武器の使用は、要員の生命防護のための必要最小限度のものを基本
 批判に答えるQ&A
 問い 「戦争立法」との批判があるが?
 答え 武力行使は日本防衛に限定し、専守防衛を堅持
 日本を海外で戦争できる国にする「戦争立法だ」という批判は、全く根拠のない言い掛かりです。
 昨年7月1日の閣議決定では、海外での武力の行使を禁じた憲法第9条の解釈は変えていませんし、平和憲法の要である専守防衛の理念も堅持されています。
 閣議決定は、日本を守るための「自衛の措置」の限界を明らかにするため、新3要件を定めました。
 自衛隊が武力行使を許されるのは、どこまでも日本が武力攻撃を受けたと同様な深刻、重大な被害が及ぶ場合に限られます。
 他国を守ることそれ自体を目的とした集団的自衛権の行使は、今後も認められません。
 1992年成立の国連平和維持活動(PKO)法の時も「戦争に巻き込まれる」など、実態に基づかない一方的な批判が起こりましたが、こうした“批判のための批判”は長続きせず、現在、PKOは国民の大半の支持を受けています。
 問い 世界のどこでも米軍を支援できるのか?
 答え 「国際法上の正当性」と「国会承認」が歯止め
 「世界のどこへでも自衛隊を派遣し、米軍を支援する」などの批判は、支援の目的、趣旨や、厳格に定められた要件、手続きなどを全く無視した極めて短絡的な主張と言わざるを得ません。米軍等に対する支援は、重要影響事態法によるものと、一般法として制定する国際平和支援法によるものの2種類があります。
 重要影響事態法は、日本の防衛のため活動をしている米軍等への支援であり、あくまで日本の平和と安全のためです。一方、国際平和支援法は、国際の平和と安全のために活動をしている外国軍隊への支援です。米国のための支援ではなく、国連決議によって国際法上の正当性が確保されたものに限られます。日本が主体的に行う国際貢献としての支援です。
 しかも、両方とも自衛隊が実施するのは後方支援に限られ、武力行使は許されません。また自衛隊の派遣には国会の承認が不可欠です。米軍のためにどこまでも一緒に行くなどという批判は全く当たりません。