茨城の食文化を代表する“干しいも”、第一回全国干しいもグランプリを開催

老若男女から親しまれているさつまいもの加工品である「干しいも」。茨城県は、全国の「干しいも」の生産量の9割を占め、断トツのトップの座を誇っています。そのうちの大部分を生産しているのが、ひたちなか市、東海村、那珂市です。
「干しいも」の発祥の地は静岡県で、遭難した薩摩の船を大澤権右衛門(おおさわ・ごんえもん)が助けたことを縁に、静岡県にさつまいもがもたらされたのがきっかけだといわれています。静岡県でさつまいも栽培が広がる中で、栗林庄蔵という者が、さつまいもを煮て包丁で薄く切ったものを干す煮切り干し法という手法を考えつき、これが「干しいも」のはじまりとなったといわれています。いつでも食べれられる、保存がきくといった利便の良さから、一気に関東まで広まっていったといわれています。
その後、静岡県沖で遭難した照沼勘太郎が、静岡県で目にした「干しいも」を茨城県でつくりはじめました。そして、ひたちなか市(旧那珂湊市)でせんべい屋を営んでいた湯浅藤七や小池吉兵衛が「干しいも」の製造・販売をはじめたことによって、一気に生産量が増えました。阿字ヶ浦の干しいも神社(堀出神社)には、「干しいも」を広めた人物として、吉兵衛の胸像や功労者の顕彰碑があります。

戦争をきっかけにさつまいもが主食にとってかわったことで、一時期「干しいも」の生産は実質ストップしましたが、戦後、県の推奨もあり「干しいも」生産が復活しました。
現在では、「紅はるか」や「シルクスイート」といった品種が人気を博し、ねっとりとした甘さとしっとりした食感が特徴の高品質な干しイモが生産されています。また、天日干しによる伝統的な製法を守りながらも、品質管理を徹底することで、一年を通して安定した供給が可能になっています。

茨城県は、2024年干しいもの魅力をさらに広めるため1月10日を「干しいもの日」として制定し、さまざまなイベントを開催しています。この日は、干しいもの生産者やファンが集まり、茨城県の特産品としての価値を再認識する機会となっています。

また、2025年には「全国干しいもグランプリ」が開催され、全国各地の干しいも生産者が集い、その品質や味を競い合いました。
輝く第1回大会のグランプリに輝いたのは、東海村の「干し芋農園川上」。準グランプリには「幸田商店」、第3位には「干しいも工房しんあい農園」が輝きました。大井川知事は「干しいものおいしさが、全国に認知されてきている。日本だけでなく世界にどんどん広めていけたら。今回、受賞が茨城県の事業者ということで、私もほしいも王国茨城県の知事としての面目は保てたと思う。今後も、事業者の皆さまで切磋琢磨することで、ほしいもという商品やそのおいしさを日本だけでなく、世界に広めてほしい」と話しました。

近年では、干しいもの海外輸出も進んでおり、特にアジア圏を中心に人気が高まっています。健康志向の高まりを受けて、自然な甘さと栄養価の高さが評価され、日本の伝統食品としての地位を確立しつつあります。
また、干しいもを使ったスイーツやパン、アイスクリームなど、新しい食べ方の提案も増えてきました。伝統的な「そのまま食べる」楽しみ方だけでなく、現代のライフスタイルに合ったアレンジが広がることで、干しいもの可能性はさらに広がっていくでしょう。
茨城県の干しいもは、長い歴史と伝統を持ちながらも、新たな挑戦を続けています。生産者たちの努力によって品質が向上し、イベントや海外展開を通じてその価値がさらに高まっています。これからも茨城県の干しイモが、日本国内はもちろん、世界へと広がり、多くの人に愛される存在であり続けることを願っています。