今日の朝日新聞4面編集委員原真人氏の「波聞風問」を興味深く読みました。
タイトルは、「消費税10%へ 『正味増税』の時代が来た」となっており、消費税の歴史的意義を三つあげています。
第1に、長らく日本の政治をしばっていた「消費増税タブー」をついに乗り越えた。
第2に、戦後初めて本格的な「正味(ネット)増税」の時代に突入する。
第3に、これまで常識だった「景気が悪ければ増税できない」という増税先送りの論理が突き崩される接目になるかも知れない。
と言うものです。
これらは、「高支持率の小泉政権でもできなかった」「現在の消費税導入は、所得税との減税とセットだった」「財政赤字の放置こそが景気を冷やす」がその論拠のようです。
更に、政治の責任や、人口減少化に税収(所得税)の自然増はない、いずれは増税するとすればできるときに決断するとしている。そして、個人金融資産は60歳以上で6割を占めるのだから、新しい消費社会を作ろうと書いています。
私は、「こういう見方もあるなあ」と感心しました。
消費増税の政策的な反対論の中に、「アレシナの黄金律」があります。
これは、ハーバード大学のアレシナ教授らは、経済協力開発機構(OECD)に加盟する財政再建を試みた20カ国を対象に調査を行った際の報告からくる内容です。
それは、62件の財政再建アプローチのうち、成功したのは16件、失敗は46件。分析の結果わかったことは
(1)財政再建を成功させるには、社会保障費などの歳出削減を先行させ、増税はその後に実施する
(2)歳出削減と増税の割合は7対3-という事実だった。
ここから導き出されたのが、財政再建を成功させるには、歳出削減と増税の寄与度を7対3にするべきであるというもので、「アレシナの黄金律」と呼ばれているそうです。
この黄金律に従うかのように、欧州や米国で計画もしくは実施されている財政再建計画では、歳出削減幅が増税よりも大きくなっている。財政破綻の瀬戸際で何とか持ちこたえているギリシャでも、歳出削減と増税の割合は75%対25%。米国でも、歳出削減幅が大きい。
だが、日本ではこの黄金律に挑戦するかのように、野田佳彦首相が増税先行の政策スタンスを明確にしている。しかも2012年度予算では整備新幹線の着工に踏み切るなど、歳出削減ではなく歳出膨張の路線を進んでいる。
これもまた大切な視点だと思いますし、消費税の意義の考え方に大きな差異があるように感じてなりません。
ただ歳出削減は、社会保障の縮小削減を指すとすれば、それは問題でしょう。やはり、安定的な維持継続が肝要だと思いますし、消費増税の納得点なのだと考えます。
消費増税を決めることは、それはそれは大変な決断です。特にここからの一年間は本当の政治の勝負の時となるでしょう。総選挙があれば政権が代わるかも知れないと多くの方が想像しているでしょう。新しい勢力の台頭を期待している方もおられる。政治の流動化が間違いなく起こっています。
思えば民主党は非自民の選挙互助会でした。ご初回の崩壊は、離党という形で明白です。民主党を愛せない民主党議員に、政党政治や民主主義を語ることはできるのだろうかと考えます。
ブレない、スジを通すことが大切です。信用とは一朝一夕にはできないからです。