橋本知事に対して、首長と教育長の関係を質疑した後は、教育の現場における課題として思春期に対するきめ細かな対応を質問しました。
答弁は、小野寺教育長です。教育長は、小中連携による対応と教員の資質向上の方法等をお答え頂きました。
八島功男質問
次に,教育長に、思春期の子どもたちに対する学校の指導体制の充実について伺います。
今回,思春期の初期である12才から13才の子どもたちについて一般質問しようとするのは,3つの見聞があるからです。
1つは,中高一貫校に進学したものの,残念ながら中学1年生の半ばから不登校になり3年次で卒業,つまり高等学校相当学年に進学しなかった生徒のご両親を知った事です。この両親は学校への不満を漏らしました。
2つ目は、中高一貫教育校に入学経験のある方から伺った体験が記憶に留まりました。この方は,「中学校生活スタートの入学式翌日の試験の成績が芳しくなかったことから中学1年は溢れる希望と自己否定の不安の中にいた。あのころはコンプレックスの塊のようだった。その後5年もかかったけれど,その塊がすっと消える時に遭遇した。それは,『君のことを知っているよ』という尊敬する先生の一言だった」というものです。
3つ目は,いまも手許にある一冊の書籍です。「『みんなのノート』中学生の巻」。中学生のカウンセリングをされた臨床心理士と養護教諭の女性お二人が,思春期の中学生のノートに書かれた子どもたちのつぶやきを集めた落書き帳とも言える本です。
最初のページは,「なんで?と言われても,自分でもわからない。どうして?とか聞かれても答えられなくなる。だれが?とか関係ない。そう思ったからしたんでしょって言われても,そう思ったかどうかわからない」とあります。
ここには,子どもたちの成長の胎動があります。ここを乗り越えた子どもたちの素敵な姿を楽しみに思い描きます。思春期の心は本当に難しいと感じます。教員の立ち振る舞い、一言が大事です。
小中連携教育や小中一貫教育,あるいは中高一貫教育などの初等中等教育の教育システムの多様性は,児童生徒を取り巻く環境変化や,子どもたちの自立心や思いやり,協調性や規範意識などの「生きる力」を育むために効果的なシステムです。すべての子どもたちに適切な教育機会を保障するためには,思春期に対応できる小,中,高の高度な連携が期待されます。
特に,子どもたちの心と身体が急速に成長する思春期初期は,いわゆる中一ギャップと言われる時期と重なり,その対応には,学校教育システムの整備とともに,教員の指導技術の向上,家庭や地域のかかわりを強化して,総力戦で取り組まなければならない大切な時期です。
具体的には,小学校から中学校への進学の際には学級担任制から教科担任制へのスムーズな移行について,子どもたちの心の変化と成長に的確に対応する工夫が必要であり,きめ細かな指導体制の構築を図って行くべきであると考えます。
また,学校の現場では,一人の児童生徒に対して多くの教員がかかわり,多方面からの指導体制をとっていると考えますが,教員の年齢構成の不均衡が指摘され,教員の中堅層が薄く多忙なことも重なって,若手教員が悩みの相談もできず,孤立している場合もあるようです。そのような教員をサポートしつつ,資質の向上を図っていく必要があるのではないでしょうか。
そこで,あらためて思春期の子どもたちに対する学校の指導体制の充実について小野寺教育長にお伺いします。
小野寺教育長答弁
思春期の子どもたちに対する学校の指導体制の充実についてお答えいたします。
思春期初期に当たる小学校から中学校への移行期における環境の大きな変化に適切に対応するためには、議員ご指摘のとおり、教育システムとしての校種間連携、教員の指導力の向上、家庭や地域の関わりが重要であると考えております。
まず、校種間連携を強化するため、県では、小学校における強化の一部で教科担任制を推進するとともに、いわゆる中一ギャップ解消に向け、中学校の第一学年に対して、学校規模により教員や非常勤講師を加配し、少人数教育によるきめ細かな指導を行っております。
また、多くの学校において、子どもたちの小学校でま状況を中学校に適切に引き継ぐための小中間の情報交換や、指導の連続性を図るための小中合同研修会等をとおして、進学する子どもたちが、中学校に一日も早くなじめるよう努めているところでございます。
さらに、昨年度からモデル地域を指定し、同一中学校区の小・中学校が連携しながら、豊かな人間関係づくりや分かる授業の実践に取り組む調査研究事業を実施しており、今後は、ここから得られる成果を他行に広げていくことにより、小・中学校が共に手を携えて子ども達を育んでいくた体制づくりを進めてまいります。
次に、教員の指導力を高めることが大切であることから、県が配置しているスクールカウンセラーの専門性を活用し、子どもたちの悩みや不安に適切に対応していくための校内研修を実施しているところでございます。
その上で、問題を一人の教員が抱え込むことなく、チームを組んで、対応の方法や役割をともに考え、共通理解を図りながら対応していくよう各学校に働きかけております。こうすることにより、経験の少ない若手の教員も不安なく子どもたちに関われるようサポートすもとともに資質の向上を図ってまいります。
さらに、家庭での関わりを支援するため、この時期の子どもたちの特徴や、保護者としての向き合い方等を示したリーフレットを中学校一年生の全ての保護者に配布しております。また、地域での職場体験活動等、地域の教育力を活用する機会を拡充し、地域全体で子どもたちを育てる体制づくりを推進してまいります。
県としましては、今後とも指導体制の一層の充実に努め、不安定な思春期の子どもたちの心の変化と成長をしっかりと見守ってまいります。