【八島一般質問】「生きる力」育む農業実践体験、「総合的な学習の時間」地域特色を活かそう。

 次に、子どもたちの「生きる力」を育むために、学習指導要領の「総合的に学習時間」の活用として、農業実践体験を紹介し提案するものです。
 茨城県は、理科数学教育や英語教育を推奨しています。私自身は、これらが子どもたちの能力の選抜に繋がっていくことに若干の心配をします。一方で、子どもたち誰もが、生きるための基礎となる「命」について体験することが、教育の在り方として徹底されても良いのではないかと考えます。
 加えて、農業県茨城を広く発信するためには、初等教育に工夫があって良いと考えます。以上から発想し質問したものです。
 八島功男質問
 次に、農業をはじめとする地域の特色を生かした体験学習について教育長に伺います。
 教育基本法では、第1章「教育の目的及び理念」の中で、教育の目標を、「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと」、また「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する云々」としています。
 そして、平成20年3月の学習指導要領の改定において、あらためて「総合的な学習の時間」の教育課程における位置付けを明確にし、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てるという目標に基づき、各学校における指導の充実を目指しております。
 
 この「総合的な学習の時間」は、多くの学校や教育委員会が地域の独自性などを考慮して取り組まれており、なかでも福島県喜多方市の小学校が2007年から全国初で開始した「農業科」の授業が注目されています。
 
 「農業高校はあるけれど、小学校ではとても無理」がスタートだった小学校農業科について喜多方市教育委員会は、農業科の意義を「稲にしろ、野菜にしろ、命を育てる仕事には責任があります。たとえ面倒くさくて嫌でも、忍耐力をもって持続しなければ、作物は収穫できません。農業科に教育力があります」と述べています。
 小学校3.4年生は田んぼの実作業に取り組み、5.6年生は、実作業と共に「農業と食の関わり」や「田んぼや畑に住む生き物と作物の関わり」も学ぶもので、総合的な学習の時間の年間70時間のうち、35時間を占めると言います。
 
 茨城は農業県。各地に特産があり、農地は豊富、加えて、高い技術力と生産力を誇る農家は目白押しです。一方で、後継者不足に悩む現実があります。その原因には、子供の頃から農業に親しまない、土と触れ合わない風潮にあると言えないでしょうか。土浦市内でも、子どもたちに田植えの経験をさせる事業が行われます。この一日の体験も重要であり、教育と地域貢献の試みですが、農業は農産物生育の過程にこそ教育的示唆の真髄があります。
 
 そこで、本県でも小学校の学習に茨城県らしい農業をはじめとする地域の特色を生かした体験学習を取り入れてみてはいかがでしょうか。年間を通じたカリキュラムを作り、各地のベテラン農家と提携して、田んぼや畑などの農地に触れることから教育の目指す「生きる力」の触発を提案したい。子どもたちが自ら誇れる茨城の農作物などをしっかりと体験させ学ばせたいと考えます。理科教育と英語教育の次には農業をはじめとする地域の特色を生かした体験学習の充実が必要であると考えます。
 
 そこで、農業県茨城における地域の特色を生かした体験学習の充実について小野寺教育長にお伺いします。
 小野寺教育長答弁
  次に、農業をはじめとする地域の特色を生かした体験学習についてお答えします。
 
 子どもたちの「生きる力」を育むためには、問題の解決や探究活動の過程に、自然体験や社会体験、生産活動など、多岐にわたる体験学習を位置づけ、その充実を図ることが重要でございます。
 
 特に、農業をはじめとする生産等の体験的な学習は、自然や生き物に直接触れたり、収穫に向けた努力や苦労を体感することができ、まさに「生きる力」に結びつく学習であり、総合的な学習の時間や学校行事等の中で、ほぼ全ての小学校が取り組んでいるところでございます。
 
 特色のある取組といたしましては、つくば市のある小学校における「米作り」体験では、農家の方々の協力のもと、種まきからはじまり、田植えや稲刈り、さらに脱穀,籾摺りに至るまで、米ができるまでの一連の過程を、作業を通して学習しております。
 
 体験した児童からは、「手間のかかる作業を積み重ねてお米ができることがわかった」とか、「苗は一つ一つが命であり、責任を持って植えなければならないと思った」などの感想も聞かれ、農家の人たちの努力や苦労を感じ取るだけでなく、「自然と自分たちの生活とのかかわり」や「命のつながり」なついて考える学習となっております。
 
 また、その他の地域の小学校においても、レンコンやサツマイモの栽培、干しいも作り、さらに、漁業体験等、地域の特色を生かした体験学習を行っております。
 
 県といたしましては、本年度の学校教育指導方針に、新たに「郷土における体験的な活動の重視」を位置づけたところであり、今後とも、各学校が、体験活動の教育的価値を認識し、子どもたちの生きる力を育むために、身に付ける力を明確にした豊かな体験活動の推進を図るよう、積極的に指導・助言してまいります。
 
 また、地域ならではの教材を取り上げ、地域の方々との県警・協力のもとで取り組んでいる優れた実践を、ホームページ等で全県下に発信するとともに、指導主事の研修会において紹介することで、農業をはじめとする地域の特色を生かした「生きる力」を育む体験学習を、より多くの学校に広め、充実させてまいります。
 062