【ゴミ屋敷】ゴミ屋敷解消に条例を制定。立入調査、強制代執行、処理費充当、所有者ケアを実行。

 公明新聞の記事に興味深く示唆的な記事が掲載されていました。
 
 東京都足立区の「ごみ屋敷」解消への試みです。
 まず、条例の制定です。この条例は、近隣の生活環境保全に関するものであり、地域の課題と共に所有者の孤立を防ぐ区役所の組織横断的な対応が光るものです。
 以下、事例の詳細です。
 東京都足立区は今年1月から、いわゆる「ごみ屋敷」問題の解消に向けて、全国でも珍しい生活環境の保全に関する条例をスタートさせた。家の内外が「ごみ」であふれ返るごみ屋敷は、各地で近隣トラブルの原因にもなっているが、同区の取り組みを追ってみると、現代社会が抱える一断面が浮かび上がってきた。
 『縦割り行政を排し、区の関係部署が連携して対応』
 『地域から孤立化させない手だて必要に』
 歩道をふさぐほど家の前にあふれるごみや伸び放題の樹木――。放火の不安、周囲に悪臭が立ち込めるなど、近隣住民にとって迷惑千万なごみ屋敷の扱いに頭を悩ます自治体は多い。
 足立区がこの問題に本格的に乗り出したのは昨年4月。始めるに当たり、こだわったのは「役所のヨコの連携」だった。近藤やよい区長の下、関係部署が組織横断的にチームを組んで対応に当たることにした。
 昨年4月以降、区が受け付けたごみ屋敷に関係する苦情件数は今年7月末現在で累計174件。このうち、98件は解決とみなされ、危険な状態がなくなったとしている。
 『車の中で暮らす』
 資材を扱う仕事をしていたAさん。延べ床面積約100平方メートルある2階建ての家に住んでいたが、廃材を捨て切れずため込んでいるうちに家は満杯に。家には住めなくなり、車の中で生活していた。Aさんは、区の要請に応じて少しずつ片付け始めたものの、一人では処理できないほどの膨大な量だった。
 家はAさん本人の所有だったため、土地を売却。結果として、家の解体費用は数百万円になったが、不動産業者から出た手付金で賄った。現在、その場所はさら地になっている。
 今年1月、施行した条例は、区による所有者宅への立ち入り調査権を設けたほか、ごみの片付けについて所有者側が度重なる区側の求めに応じない場合の強制代執行を明記。また、所有者がごみを片付ける意向を示しても、本人が処理費用を賄えない場合は税金で支援する枠組みもつくった
 いわば、“強権発動”をしてでも、ごみ屋敷を解消する仕組みを設けたわけだが、その一方で、区側は「無理やりごみだけを片付けても、必ずしも解決にはつながらない」と指摘する。ごみ屋敷の所有者が抱えるさまざまな課題にも踏み込むことで、初めて抜本的な対策を講じることになるとみている。心の病が原因のケースもあり、所有者の心と体のケアの観点からも問題解決の糸口を探ることにした。
 『集めたのは「家財」』
 ごみ屋敷の所有者には、おおむね共通点がある。ごみ屋敷は1年や2年ではできない。10年、20年という長い期間をかけて今の状態をつくっている点だ。大切なものを集めていたら家の中がいっぱいになり、敷地の中にも収まらなくなった。「集めたものは家財道具の一環。ごみとは思っていない」人もいる。
 本人にすれば、長年続けてきたこれまでの生活スタイルを変えることは難しい。いきなり、片付けるよう促しても応じることはほとんどない。
 所有者は血縁者はもとより、近隣住民との関係を断絶するなど、地域から孤立しているケースが多い。こうした点を踏まえ、同区では初めからごみの片付け話を切り出さず、「『何かお困りのことはないですか』『お体、大丈夫ですか』とコミュニケーションを図る」(区道路監察担当・祖伝和美課長)ところから接触を始めている。信頼関係ができるまで、足しげく通うこともあるという。
 同区では所有者の状況を把握した上で、庁内に設置したケース診断会議などの場で福祉や保健、環境など関係する部署が集まり協議を行う。必要に応じて、福祉事務所職員や保健師などが所有者宅を訪問し、本人が抱える問題を聞き、相談に乗る体制を整えている。
 区生活環境調整担当課の島田裕司課長は「ごみ屋敷の問題は地域から孤立したことで発生する現象といってもいい。新たなごみ屋敷を発生させないためには、こうした人々をいかに孤立化させないかが大切」と訴える。
 『条例のポイント』
 足立区が定めた条例を基に、手続きの流れを追ってみる。まず住民からの苦情や相談を受けた区職員が直接、現場を確認。ごみや樹木が道路にはみ出るなど近隣の住環境を著しく悪化させているとみなせば、所有者の同意に関係なく、区による民有地内への立ち入り調査を可能にした。
 その後も所有者が区の指導、勧告に応じない場合は弁護士や医師、学識経験者、地域代表らで構成される審議会に諮り、期限を定めて「不良な状態を解消」するよう命令。従わなければ、最終的に強制代執行に踏み切る。
 ごみの片付けに掛かる費用は原則、所有者本人の負担とするが、所有者が処理費用を負担できないと審議会で判断した場合は、1回に限り100万円を上限に、区が処理費用を支援することも盛り込んだ。