公明新聞の記事から興味深い内容を掲載したいと思います。
以下は、公明党の坂口力顧問(元厚生労働相)の講演(日本公衆学会総会)
です。テーマは、「日本の医療と公衆衛生の役割」であり、保健指導を前面に捉え、「労働寿命」の延長が求められるとしたものです。
私が講演の中で最も強調したのは、厳しい財政状況下で、日本の医療を持続可能なものとするために、公衆衛生の果たす役割が一層大きくなるということであった。
(医師が多くても寿命は延びず)
平均寿命と医療費、医師数の比較国民の平均寿命をさらに延ばすことは医療の責任である。そのためには現在の平均寿命を地域別に見て、医療や医療費がどのように役立っているかを見る必要がある。人口10万人当たりの医師数と、男女別平均寿命のそれぞれ上位5位までの都道府県を見ると、医療費の多い県、医師数の多い県と、平均寿命の長い県に重なりは存在しない。
病気にかかった人の治療に医師や医療費は役立っているが、平均寿命を延ばすことには役立っているとは言い切れない。平均寿命を健康寿命の長い県に置き換えても、結果は同じである。また、市区町村別の平均寿命を見ると、男性は都市圏で長寿が目立ち、女性は地方圏で長寿が目立つ。働く場が男性では都市部に多く、女性では地方に働く環境が多いためではないかと考えている。
男女共に長寿日本一の長野県を訪ねたが、現在もなお病院嫌いの人が多いという。野菜摂取量、高齢者の労働率が共に全国で1番である。
(働く年齢延びれば医療費も減少)
健康寿命が長い人は、自分で排泄、食事が何とか可能な人であり、多くの健康寿命者も疾病と共存し、薬漬けの毎日を送っている。それでは健康寿命が延びても医療費の削減には結び付かない。もう一歩進めて「労働寿命」の延長こそ、高齢社会を乗り切る道であることを提案した。
労働寿命という概念はまだ確立していないが、働く年齢を延ばすことが健康維持にも結び付き、保険料や税を支払う側に回ることで、財政の健全化にも役立つ。
それでは、働く場所があるのか。作り出す以外にない。「人から雇われる」だけでなく、「自らを雇う」自営業や共同出資、共同経営、協同労働の支え合う働き方などを作り出すことだ。
日本の工業で労働生産性が一番高い医薬品を例に取ると、その製品が日本から輸出される量は少なく、年々輸入量が増大し、その額は、2011年には既に2兆5000億円を突破している。生産性を上げるための制度改革を行うとともに、医療界においては健康管理、予防治療の面に積極的な対応が必要であり、公衆衛生関係者の奮起が求められる。
特に、IT(情報技術)によるデータ処理が進み、レセプト(診療報酬明細書)、検診データから、治療の内容や疾病ごとの医療費が明確になることから、予防に力を入れない病院や、予防や治療を放棄している個人が明白になり、保健指導が前面に出る時代が到来している。
保健相談機関が公私ともに生まれ、医療費の適正化を行うために、患者や住民に保健指導を行い、その結果をかかりつけ医に報告する時代になった。疾病の重症化を避けることが医療財源を健全化するのである。