政府は11月26日の農林水産業・地域の活力創造本部で、農家の経営所得安定対策(旧・戸別所得補償制度)の新しい制度設計と、コメの生産調整(減反)を5年後をめどに廃止する方針を正式に決めました。
農政の大転換とも言われる見直し内容のポイントなどについて、公明党農林水産部会の石田祝稔部会長(衆院議員)のインタビューを掲載します。
―40年以上続いてきた生産調整(減反)を見直すことになった背景は。
主食用米の需要と供給のバランスを整えるため、政府が生産数量目標を定め、都道府県に配分する生産調整は、1970年から始まりました。40年以上が経過する中で、食生活の変化により麺類などを食べる機会が増えたり、少子高齢化や人口減少という社会の変化を背景に、コメの消費量が年々減り続けています。
実際、2012年度の1人当たりのコメ消費量は1960年代の半分にまで落ち込んでいます。生産調整を強化しても構造的な供給過剰が解消されないことが、見直しの背景にあります。
―10月末、政府内から“減反廃止”が急浮上し、唐突な印象でしたが。
当初、政府内からは「3年後に廃止」との提案が出てきました。これに対し、公明党は「生産現場の十分な理解を得る必要がある」と強く主張。激変緩和に十分配慮して現行の経営所得安定対策を見直し、その定着状況を見ながら5年後をめどに、農家が生産調整に縛られずに自主的に生産できる仕組みに変えていく流れをつくりました。
―経営所得安定対策の見直しのポイントは。
生産調整の参加を条件に水田10アール当たり1万5000円を支給する「コメの直接支払交付金」は、2010年度からスタートし、農家に定着しているのが事実です。
5年後をめどに生産調整とともに同交付金を廃止する政府の方針に対し、急な削減・廃止でコメ農家が困らないような激変緩和措置が不可欠でした。政府、自民党との協議を粘り強く重ねながら、単価の削減幅を半減にとどめさせ、14年産米から10アール当たり7500円とし、18年産米から廃止することとしました。
また、農業が持つ多面的機能の維持に着目した「日本型直接支払制度」を創設します。飼料用米と米粉用米への助成に関しては、収穫量に応じて交付金を支払う数量払いを導入し、10アール当たり最大で10万5000円に増額。主食用米からの転作を促すために必要な拡充を図りました。
―公明党が提案してきた「収入保険」創設の見通しも立ちました。
公明党は今回、国と農家が拠出し、農産物の価格下落などで収入が減った場合に補填する「収入保険制度」創設に道筋を付けることもできました。
米価急落時に支給する現行の「米価変動補填交付金」は、全額公費で賄う“バラマキ色”の強い仕組みですが、14年産米から廃止。公明党の主張により、当面は現行の「収入減少影響緩和対策」(ナラシ)を活用した交付金制度で対応した上で、中期的にコメを含む全農産物を対象とした、農家の拠出も伴う収入保険に移行する見通しです。
―今後の方針は。
自公政権は、農林水産業を成長産業に育てる「攻めの農林水産業」を打ち出しています。公明党は、「食料の安定的な確保は国の最大の責任」と考え、私は「農業は生命維持産業」と訴えています。今後も、生産者と消費者双方の意見に耳を傾けながら、農業の再生、農村の活性化、農家の所得向上を進める農業政策を充実させていく決意です。