【地域包括ケア】住み慣れた場所で暮らせる社会を医療・介護・予防で構築しよう。

 既に何度も記載してきた「地域包括ケアシステム」について総括的な記事が公明党ホームページに掲載されましたので紹介します。
2025年以降、日本は「団塊の世代」が75歳以上となり、未曽有の超高齢社会となる。政府は、介護が必要になっても高齢者が住み慣れた場所で暮らせる「地域包括ケアシステム」の構築に向け、具体的な議論を進めている。自治体の取り組み事例とともに、公明党の動きを紹介する。(公明新聞2014年1月18日付)
厚生労働省によると、65歳以上の高齢者数は2025年には3657万人、42年には3878万人に達すると予測されている。
高齢者だけの世帯も増加。25年には、65歳以上の「単独世帯」と「夫婦のみの世帯」を合わせると、全体の25.7%を占めるとされている。こうした世帯は、社会から孤立しがちなため、認知症など病気の早期発見・ケアの遅れも懸念されている。
そこで、政府・与党は「団塊の世代」が75歳以上となる25年をめどに、医療・介護・予防・住まい・配食などの生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を急いでいる。このシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される中学校区など日常生活圏域を単位として想定。具体的な仕組みは、保険者である市町村や都道府県が地域の特性に応じてつくり上げていく流れだ。
医療、介護、生活支援など高齢者へ一体的に提供
国としても、関連制度の見直しやモデル事業などを通じ、在宅医療と介護の連携強化や、認知症施策の充実、小規模型通所介護、サービス付き高齢者向け住宅の整備などを推進していく方針だ。
東京都世田谷区は1日現在、人口86万7552人で、65歳以上は16万9568人と全体の19.55%を占める。地域包括支援センターは区内27カ所に設置されている。このうち、四つの支援センターを中心とした地域で、国の介護予防・日常生活支援に関するモデル事業が行われている。
具体的には、地域の課題を“見える化”するため、住民と支援センターのスタッフが協力し、宅配してくれるスーパーやベンチのある歩道などを書き込んだ地図を作製。それを基に、課題の解決に向けたアイデアを出し合い、具体的な支援策を決めていった。
例えば、ある都営住宅では近くにスーパーがなく、交通量の多い国道を横断しなければ買い物に行けないことが浮き彫りになった。そこで、都営住宅で暮らす要支援者らの外出支援として、福祉施設の送迎車両の遊休時間帯を活用し、月1回、スーパーや郵便局への送迎サービスを行うことにした。参加費は1回300円だが、「単なる買い物だけじゃなく、皆で外出する楽しみに使うケースも出てきた」(区担当課)という。
区内に住む70歳代の女性は、12年7月に脊柱管狭窄症で手術を受け、「要支援2」の認定を受けた。その後、理学療法士などのアドバイスを受け、体操プログラムなどの教室に参加。その結果、退院から9カ月後には、正座ができるまで身体機能が改善し、要介護認定を更新せずに済んだ。この女性は現在、地域の高齢者の集いで世話役ボランティアとして活躍している。
▲福祉施設の送迎車両の遊休時間帯を利用し、スーパーまで買い物に出掛ける住民(東京・世田谷区提供)
一方、介護保険の軽度認定者に対し、ごみ出しなど簡単な家事援助でも介護保険サービスの訪問介護で対応している現状もある。こうしたニーズ(要望)に対応できるような住民ボランティア活動の促進などが課題だ。
厚労省は、地域包括ケアシステムの構築に向け、参考となるような自治体の取り組みを紹介するなど、情報発信を積極的に進めている【表参照】。
例えば、新潟県長岡市では、長岡駅を中心とする地域に、13のサポートセンターを設置。センターごとに、地域密着型の介護老人福祉施設や小規模多機能型居宅介護、地域交流スペースなど、複数のサービスを組み合わせて一体的に提供している。
また、千葉県柏市は、在宅医療を推進するため、行政が事務局となり、医師会をはじめ医療・介護・看護の関係団体が“顔の見える関係”で話し合う体制を構築している。
一方、高齢者同士で支え合う仕組みを進めている地域もある。長崎県佐々町では、65歳以上の元気な高齢者を対象に介護予防のボランティア養成研修を実施。現在、45人の町民がボランティアとして登録し、地域の集会所などで自主的に介護予防教室を開いたり、要支援者の自宅を訪問して掃除やごみ出しなど訪問型の生活支援サービスを行っている。
党推進本部/提言づくりへ議論加速
公明党は昨年12月、党本部内に「地域包括ケアシステム推進本部」(本部長=桝屋敬悟衆院議員)を設置。今月14日に初会合を開いた。
会合には、国会議員だけでなく、地域の認知症ケアに長年取り組んだ社会福祉士や、介護支援専門員として要介護認定に携わってきた元看護師など約50人の地方議員が参加。厚労省の担当者からヒアリングを行った後、認知症専門医の不足や、24時間型の介護・看護の推進、医療機関との連携の在り方などについて、活発な意見交換が行われた。
▲党推進本部の初会合では地方議員を中心に活発な意見交換が行われた=14日 衆院第2議員会館
同本部は今後、現地調査を実施し、その結果を政策提言としてまとめ、政府に働きかけていく方針だ。