【集団的自衛権】1972年政府見解を正確に理解する。見解の変更は論理に整合性がなければならない。

 1972年政府見解が鍵を握ってまいりました。過去の議論との整合性は、日本が平和国家として歴史を刻んだことへの証とも言えましょう。
 ここの理解が胎児です。
憲法は「他国防衛許さず」 公明新聞:2014年6月18日(水)付
衆院法制局法制次長 72年見解の説明(要旨)
憲法第9条の解釈に関する政府見解がまとまった形で示されているものには、1972年、81年、2004年の国会答弁や答弁書がある。
横畠裕介内閣法制局長官は、(今年)5月22日の参院外交防衛委員会で、政府見解は全て72年見解と同じ論理構成で展開しているのかという質問に対し、「昭和47年(72年)の資料がベース」と答えている。政府のこれまでの憲法解釈の論理は、72年見解だと理解して間違いない。
72年見解は短い文章で、三つの段落で成り立ち、極めて論理的に述べている。なお、集団的自衛権という言葉はこの中で3回出てくるが、全て頭に「いわゆる」という修飾語が付く。
第1段落は、集団的自衛権を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位」と定義。その上で、日本が国際法上はその権利を有しているとしている。
第2段落は、集団的自衛権が国際法上は認められているが国権の発動としての行使は許されない、すなわち、憲法上は行使できないというそれまでの政府見解の結論を要約している。その論理的な理由を「次のような考え方」だと述べ、第3段落につなげている。そのため、72年見解の肝は全て第3段落にあるということだ。
第3段落は三つの文章で成り立っている。第1文では憲法第9条の第1項で戦争放棄、第2項で戦力不保持を規定していると確認。一方、憲法前文で平和的生存権、第13条で幸福追求権を定めており、結論として「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置」は禁じられていないと明記している。
しかし、非常に重要なのは、その次の第2文。自衛の措置は無制限に認めているのではないと解した上で、自衛権行使は(1)あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し(2)国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置―として、はじめて容認されると述べている。
その上で第3文は、武力行使を行うことが許されるのは、「わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」とし、他国防衛に当たる集団的自衛権の行使は許されないという論理的な帰結を示している。
72年政府見解(全文)
集団的自衛権と憲法との関係―内閣法制局
国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を有しているものとされており、国際連合憲章第51条、日本国との平和条約第5条(C)、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約前文並びに日本国とソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言3第2段の規定は、この国際法の原則を宣明したものと思われる。そして、わが国が国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然といわなければならない。
ところで、政府は、従来から一貫して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場にたっているが、これは次のような考え方に基づくものである。
憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が……平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。