安全保障に関する1日の閣議決定は、憲法の枠内で許される「自衛の措置」の限界を示しました。
公明党は自衛権の行使に歯止めをかけるなど議論をリードしました。安全保障について公明党の考え方をQ&Aで紹介します。
『Q1 なぜ安全保障法制の見直しをする必要があるのか?』
『A1 安全保障環境の変化に対応が必要になった。』
国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の責任です。ところが、弾道ミサイルの発射や、領域をめぐる国家間のトラブルなど、アジア大平洋地域には、いつ日本の安全に重大な影響を及ぼすか分からない問題が存在します。こうした日本を取り巻く安全保障をめぐる環境の変化に対応する必要があります。そのためには、武力紛争を未然に回避するための外交努力は当然です。しかし、その一方で、国民の命に関わるような「万が一」の事態に対応できるように、すき間のない、しっかりとした安全保障体制を整備する必要があります。
「万全の備え」をすることで紛争を予防する力(抑止力)が高まり、日本への攻撃の意図をくじくことができます。日米間の相互協力を強化することにもなります。公明党も与党として安全保障法制整備の方向性や考え方を明確にする必要があると判断しました。
『Q2 与党の協議で何を議論し、何が閣議で決定されたのか?』
『A2 憲法の枠内でできる自衛の措置(武力行使)の限界を確定。』
「日本への武力攻撃に至らない事態」「PKOなど国際平和協力活動」「憲法9条の下で許容される自衛の措置」について協議しました。
特に「自衛の措置」(武力行使)の議論の中で、閣議決定の柱となっている自衛権発動の「新3要件」を詰めました。「新3要件」は、(1)わが国に対する武力攻撃が発生した場合、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、(2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、(3)必要最小限度の実力を行使する――という内容です。
これによって、憲法上許される自衛権の発動は自国防衛に限られることが明確にされ、外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使はできないことも確認されました。
『Q3 集団的自衛権の行使を認めたのか?』
『A3 外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権は認めていない。』
個別的自衛権の行使は、自国が武力攻撃を受けたことが条件ですが、今回、その前であっても限定的に実力の行使が認められました。この場合、国際法上、集団的自衛権が根拠となる場合があります。
しかし、このような場合であっても、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るための「自衛の措置」でなければならず、外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めていません。
『Q4 「解釈改憲」ではないのか?』
『A4 憲法の平和主義は守られており、改憲には当たらない。』
「解釈改憲」とは、解釈によって、憲法の考え方の柱を変えてしまうことであり、解釈改憲ではありません。
今回の決定では、国民の命と平和な暮らしを守るため、自国防衛の場合に例外的に武力行使を認めた憲法第9条の柱はそのまま堅持されています。決定は第9条の枠内で、自国を守るための「自衛の措置」の限界について解釈の見直しをしたにすぎず、解釈改憲ではありません。
一方、「さらなる解釈変更により行使できる自衛の措置の範囲を広げることができるのではないか」との懸念の声がありますが、今回の閣議決定では、解釈変更の限界を示しており、自民党の高村副総裁も「これ以上しようと言うならば、憲法改正しかない」と明言しています。
『Q5 「専守防衛」をやめるのか。外国で戦争をする国になるのか?』
『A5 「専守防衛」は堅持。海外派兵は認めない。』
「専守防衛」とは、日本の防衛に限ってのみ武力行使が許されるということであり、これは堅持します。
今回の決定はあくまでも国民の生命と平和な暮らしを守るために必要な「自衛の措置」の限界を示したものです。外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めていません。
「専守防衛」を堅持している以上、自衛隊の装備を外国を攻撃するための攻撃的な兵器に変える必要もありません。今回の決定の冒頭にも明記されているように「他国に脅威を与えるような軍事大国にはならない」とのわが国の防衛政策の基本は変わりません。自衛隊を海外に出動させ戦闘を行うことはできず、外国防衛のための集団的自衛権の行使はできません。安倍首相も1日の記者会見で「海外派兵は一般に許さないという、従来からの原則も全く変わりません」と明言しています。
『Q6 公明党はブレーキ役を果たしたと言えるのか?』
『A6 政府解釈を維持させ自衛権行使に厳格な歯止めかけた。』
今回の閣議決定のポイントは三つあり、どれも公明党が議論をリードしました。
一つ目は、自衛権発動の「新3要件」です。「わが国に対する武力攻撃が発生した場合、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に、「これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき」に限って武力行使を認めました。これは厳格な歯止めになっています。
二つ目は、憲法第9条の枠内で許される武力行使は自国防衛に限ることを明確にしました。
三つ目は、一つ目と二つ目で示された内容が解釈の限界であり、これを超える解釈変更には憲法改正しかないことを示しました。
『Q7 公明党は「平和の党」の看板を下ろしたのか?』
『A7 「平和の党」として与党協議をリードした。』
公明党は「平和の党」だからこそ、国民の命と平和な暮らしを守るために責任を持って、与党協議をリードしました。
それは、閣議決定の文書の冒頭に、「専守防衛に徹し」「軍事大国にならず」「非核三原則を守る」と明記されていることからも明らかです。
与党協議の中で、憲法第9条の枠内で認められる「自衛の措置」の限界を定め、武力行使について厳格な歯止めをかけました。これによって憲法の平和主義を堅持しました。安倍首相も、1日の閣議決定後の記者会見で「現在の憲法解釈の基本的な考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わらない」と述べました。
公明党は「平和の党」として、日本と国際社会の平和を守るために、全力で取り組んでいきます。
『Q8 集団的自衛権行使に「断固反対」ではなかったのか?』
『A8 外国防衛のための集団的自衛権は認めない。』
今回の決定で認められた「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」は、公明党の主張に沿った内容であり、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守る自衛のための措置であり、外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められていません。
外国に対する武力攻撃が発生しても、日本に対する武力攻撃に匹敵するような場合でなければ「自衛の措置」は認められません。
『Q9 個別的自衛権や警察権で大半は対応可能ではなかったのか?』
『A9 国民を守るために万全を期すため、憲法の枠内で可能な「自衛の措置」を明らかにした。』
今回の与党協議で、政府の示した事例には、個別的自衛権や、警察、海上保安庁など警察機関で対応できる場合が多いことが議論になりました。
その上で、日本の安全保障環境の現状を踏まえ、すき間のない万全の対応を可能とする法制を整えるためには、国際法上、集団的自衛権とされる内容であっても、憲法上、自国防衛のための「自衛の措置」として認められることもあると判断しました。
しかし、政府の一貫した憲法解釈である1972年の見解の基本的な考え方は変えていません。すなわち、武力の行使ができるのは、あくまで日本への武力攻撃が起こり個別的自衛権が発動される事態に匹敵するような極めて限定的な場合です。