【集団的自衛権】公明党北側副代表の質疑、憲法9条の規範性は全く損なわれない。

 本日14日午前の衆議院予算委員会における公明党北側副代表の質疑です。
 集団的自衛権に係る詳細な部分の質疑が、安倍総理や法制局長官と交わされました。これらの質疑が議事録として残されることが、議会交渉の大切な所です。誰が、何と言ったか。責任は、発言内容です。その意味で、今日明日の予算委員会が大切な一里塚になります。

 切れ目のない法整備
 北側一雄副代表
 今、安全保障の問題が議論になっている。国民の中には「なぜ今、安全保障なの?」と思っている人が多い。首相の認識をうかがいたい。
 安倍晋三首相
 今回の閣議決定における基本的認識は、わが国を取り巻く安全保障環境が大きく変わっている、厳しさを増しているということだ。例えば大量破壊兵器や弾道ミサイル等の軍事技術が高度化し、拡散している。北朝鮮はミサイルの技術を高め、昨日もミサイルを発射した。また核開発も行っている。さらにグローバルなパワーバランス(力関係)の変化がある。国際テロの脅威など、海洋、宇宙、サイバー空間へのアクセスを妨げるリスクも深刻化している。
 こうしたものは瞬時に国境を越えていく。もはや、どの国も1国のみで自国を守ることができない。その中において、私たちにはわが国の国民の生命と幸せな暮らしを守り抜く責任があり、切れ目のない対応を可能とする法整備が急務であると判断した。抑止力の向上と、地域及び国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献をしていくことを通じて、わが国の平和と安全を一層確かなものにしていきたい。その観点から与党で議論をいただき閣議決定を行った。
 政府見解との整合性
 法制局長官 
 これまで同様、他国に対する武力攻撃の排除は目的とせず
 北側一雄副代表
 憲法第9条の解釈は、まさしく国会と政府側との長年のやりとりの中で、作られてきた。この中で極めて論理的に答弁している最初の政府見解というのが1972年(昭和47年)10月に参院決算委員会に提出された内閣法制局作成の「集団的自衛権と憲法との関係」という資料だ。
 横畠裕介内閣法制局長官
 この72年の政府見解は、憲法第9条下において、例外的に許容される武力の行使についての考え方を詳細に述べたものであり、その後の政府の説明もここで示された考え方に基づく。
 憲法第9条の下で許容される自衛の措置
 北側一雄副代表
 数ある憲法第9条に関する政府見解の中で、72年見解がベースになるものだと私は理解している。今回の閣議決定の中に、自衛権行使の新しい3要件が記された。72年見解と新3要件との間に、論理的な整合性は確保されているのか。
 横畠裕介内閣法制局長官
 今般の閣議決定は、武力の行使が許される場合は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」もこれに当たるとしたものであり、その限りにおいて、結論の一部が変わるが、72年の政府見解の基本論理と整合すると考える。
 北側一雄副代表
 第9条下で許される「自衛の措置」の一番、肝要な部分が、この新3要件だ。今後、検討される法案の条文にきっちり書き込まれるものだと私は認識している。長官いかがか。
 横畠裕介内閣法制局長官
 具体的な法整備の検討はこれからだが、新3要件はご指摘の通り、憲法上許容される武力の行使の要件そのものなので、実際の自衛隊の行動の法的根拠となる自衛隊法などの中に、その趣旨を過不足なく規定すべきものと考える。
 北側一雄副代表
 新3要件の第一に、「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」と定めている。どういう事態を指すのか。どんな要素からそれが判断されるのか。
 横畠裕介内閣法制局長官
 新3要件は、72年の政府見解における基本論理、およびその考え方を前提としている。第1要件の「明白な危険がある」とは他国に対する武力攻撃が発生した場合、そのままでは、国家としての究極の手段である武力を用いた対処をしなければ、国民に、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な、深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であると解される。この要件に該当するかどうかについては、実際に他国に対する武力攻撃が発生した場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、わが国に戦禍がおよぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することになる。
 なお、「明白な危険」とは、その危険が明白であること。すなわち単なる主観的な判断や推測等ではなく客観的かつ合理的に疑いなく認められるというものであると解される。
 北側一雄副代表
 今の答弁は、政府の恣意的な判断が入る余地はないということで理解したい。次に第2要件だ。新たに、「我が国の存立を全うし、国民を守るために」という言葉が入った。なぜ、この要件が入ったのか。
 横畠裕介内閣法制局長官
 第2要件においては、この度、第1要件で他国に対する武力攻撃の発生を契機とするものが加わったことから、これまでの単に「これを排除するために他の適当な手段がないこと」としていたのを改め、「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき」とし、他国に対する武力攻撃の発生を契機とする武力の行使についても、あくまでもわが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られ、当該他国に対する武力攻撃の排除それ自体を目的とするものではないということを明らかにしていると考えている。
 北側一雄副代表
 新3要件は、72年見解で言っている「いわゆる集団的自衛権」の行使を認めたものか。
 横畠内閣法制局長官
 72年見解における「いわゆる集団的自衛権」は、まさに集団的自衛権全般を指していると考える。その意味で丸ごとの集団的自衛権を認めたものではないという点では今回も変わっていない。
 今般の閣議決定は、国際法上、集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについて行使を認めるものではなく、新3要件のもと、あくまでもわが国の存立を全うし国民を守るため、すなわち、わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるもの。いわゆる集団的自衛権の行使を認めるものではない。
 北側一雄副代表
 今回の閣議決定は、憲法第9条のこれまでの規範を維持しているのか。
 横畠裕介内閣法制局長官
 今般の閣議決定は、平和主義を具体化した規定である憲法第9条の下でも例外的に自衛のための武力の行使が許されるという72年の政府見解の基本論理を維持し、その考え方を前提としたもの。その意味でこれまでの憲法第9条をめぐる議論と整合する合理的な解釈の範囲内のものであり、憲法の基本原則である平和主義をいささかも変更するものではないと考える。
 その意味で72年の政府見解の基本を維持し、今回の閣議決定に至ったわけであるが、そこで示された新3要件を超える、それに該当しないような武力の行使については、現行の憲法第9条の解釈によってこれを行使することを認めることは困難と考えており、そこに及ぶ場合には憲法改正が必要であろうと考えている。
 専守防衛は維持
 安倍晋三首相 
 必要最小限度の武力行使に限る受動的な姿勢は不変
 北側一雄副代表
 日本の周辺で自衛隊と一緒になって日本の防衛のために現に活動している米艦船に対して武力攻撃があった場合に、日本の自衛隊が守れるのに、守れないというのは日米防衛協力体制の基礎を大きく損なってしまうのではないか。
 安倍晋三首相
 日本を守るために、平時において協力している米艦船に対する攻撃をわれわれは止めることができなければ、これは日米の同盟関係、いわば絆、信頼に大きな影響力、場合によっては致命的な影響力を及ぼすかもしれない。何十年に1回かもしれないが、起こるものにしっかり備えていくことによって、日米の絆はより強くなり、そうした事態を結果として防ぐことにつながっていくと思う。
 北側一雄副代表
 わが国の防衛は、自衛隊と、日米安保条約に基づいてわが国に駐留する米軍、この2つの実力組織によって、わが国の安全を確保していくのが基本だ。その米軍がわが国の防衛のために行動していて、そこで何らかの攻撃を受けた場合に、やはり自衛隊が排除する必要性がある。新3要件の下で、平時から有事に至るまでの切れ目のない法整備ができる。国民を守るための万全の備えが大切だ。
 また、わが国防衛のための日米協力の実効性、信頼性を一層確保するとともに、平素からこれで日米間の緊密な連携ができるようになると思う。そのことによって、わが国を守る抑止力が向上すると理解する。
 安倍晋三首相
 このように、切れ目のない、日米の協力体制が出来上がるということは、米国側の日本に対する、いわば現場においてもそうだが、信頼関係がより強固になる。事前にさまざまな活動を行っていく上においても、日本側に前もって情報を提供しながら、この地域、あるいは日本を守るためにさまざまな活動をしていこうという機運は高まっていくことは間違いないと思う。米側からも今回の閣議決定によって、「より日米関係は強化されていくことになる」というコメントをもらっている。
 北側一雄副代表
 今回の閣議決定の後、さまざまな批判をいただいている。たくさんあるが例えば、「専守防衛が維持されないのではないか」「海外での武力行使をしないと言っていたが、これを変えたか」「海外派兵が許されてしまうのではないか」だ。首相はどう考えるか。
 安倍晋三首相
 今回の閣議決定において、憲法第9条の下で許容されるものは、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置としての武力の行使のみだ。従って、「我が国」または「我が国と密接な関係にある他国」への武力攻撃の発生が大前提である。また、他国を防衛すること自体を目的とするものではない。このように、引き続き憲法の精神に則った、受動的な防衛戦略の姿勢であることに変わりはない。政府としてわが国の防衛の基本的な方針として、「専守防衛」を維持していくことに変わりはない。また、「海外派兵は一般に許されない」という従来からの原則も全く変わらない。自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してないと断言しておきたい。
 安全保障環境の改善
 北側副代表
 日中間の信頼醸成が重要。APECで首脳会談実現を
 北側一雄副代表
 少し話は変わるが、紛争が起こらないよう未然に防止していくような取り組みは大事だ。尖閣周辺で、海上保安庁と中国の公船とが対峙している。それがエスカレートしないことが大事だ。例えば、日中間で、やはり一定の信頼関係を醸成していくようなシステムを作っていくことがとても大事だ。
 また、平和的解決のための外交的努力もとても大事で、冒頭から話がある通り、安全保障環境が厳しくなっているから、先ほどのような隙間のない万全な態勢を築いていこうということだが、一方で安全保障環境を改善していくという外交努力は不可欠だ。先ほど(自民党の)高村副総裁が質問に立ったが、5月の連休は日中友好議連で高村会長を筆頭に私も参加して中国を訪問させていただいた。超党派で行き、中国側の首脳の方々と会談させていただいた。また、私はこういう政治対話というのがとても大事だと思う。やはり日中関係というのは極めて大事だと思う。ぜひとも総理自身も努力いただいて、日中間の首脳会談、トップ会談を秋のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のときに実現できるよう取り組んでいただきたい。
 安倍晋三首相
 首脳会談が日中間でできていないことは大変残念なことだし、偶発的な事故が起こらないように、海上連絡メカニズムについて、第1次安倍政権の際に、中国側に申し入れ、話し合いが進み、一時合意したが、残念ながら中国側が実行していないという状況ではあるが、これからも海上連絡メカニズムだけでなく、空においてもそうだろう、そうしたものをしっかり作っていく。何よりも秋に行われる北京のAPECにおいて首脳会談を行いたいと考えている。