新たな子育て支援制度が2015年度から始まるのを前に、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」の一部で認定返上を検討する動きが出ています。新制度への移行によって減収が見込まれるためとのこと。
政府が7月に実施した調査では、約1割の認定こども園が幼稚園や保育所に戻ると回答した。本来、子育て支援の充実のために増やすべき施設が、逆に減りかねない事態に陥ろうとしている。
認定こども園は、保護者の就労の有無にかかわらず、全ての子どもたちが幼児教育と保育を一緒に受けられるのが特長だ。
例えば、育児休業期間を終えて両親が共働きになっても、保育所を探す必要がなく、子どもが通い慣れた園を継続して利用できる。待機児童の受け皿としても期待が高く、女性の社会進出を助けるためにも重要だ。
新制度では、文部科学省と厚生労働省が別々に支給している運営補助金の仕組みなどを一本化する。二重行政をなくして、認定こども園の設置や運営をしやすくする。
だが、これらの制度移行に伴い、減収になる施設があるという。制度設計に見通しの甘さがあったのではないかとの批判も出ており、公明党は国会質疑で対策の実施を求めている。
国が示した公費投入額の基準となる公定価格は、大規模な園ほど効率的な運営ができるとの理由で、園児1人当たりの設定額は低い。今まで幼稚園と保育所に、それぞれ出ている施設長の給与補助も1人分に統一される。幼稚園向けの私学助成も都道府県ごとに差があるため、15年度から全国一律の新方式になると、独自助成が手厚い地域では減額になる恐れがある。
減収を防ぐには、定員規模に応じた加算方法の見直しや、施設長2人分の給与補助を継続する経過措置を行う必要がある。都道府県に対し、新制度移行後も独自の助成を続けるよう要請することも重要だ。
政府は来年度予算案の編成作業も踏まえ、年内に具体策をまとめるようだが、来年春の園児募集は始まりつつある。対策を急ぎ、事業者の不安感を払拭するべきだ。