家計を守ろう!
消費税の「軽減税率」導入を真っ先に訴え、実現をめざし一番真剣に取り組んでいる政党は、公明党です。そもそも軽減税率とは? なぜ必要なのか。分かりやすく解説するとともに、識者の見解などを紹介します。
3党合意
実際の税率引き上げは経済状況を見極め判断
最近、政府が来年10月からの消費税率10%への引き上げを見送るといった報道が目立ってきました。
来年10月からの税率引き上げは、2012年に民主、自民、公明3党が社会保障と税の一体改革で合意したことによるものです。
ただ、実際に増税に踏み切るには、経済状況を慎重に見極めなければならないことが関連法に明記されています。即ち、時の政府が景気の状況次第で増税の可否を判断できるようにした、いわゆる「景気弾力条項」は、3党協議の中で公明党が増税の前提条件として訴え、3党合意に盛り込ませました。経済の状況次第で増税を停止できる仕組みにしたのです。最終的な消費税率引き上げの判断は、首相がすることになります。
軽減税率とは
消費税の標準税率のほかに、食料品などに低い税率
軽減税率とは、複数税率とも言われ、食料品など生活に欠かせない品目の消費税率を標準の税率より低く抑えるものです。
増税による“痛税感”を和らげるとともに、消費税率引き上げに対して幅広く国民の理解を得るためには、軽減税率の導入が不可欠です。
消費税には、景気の影響をあまり受けずに安定した税収が確保できる利点がある一方、所得に関係なく同じ税率が適用されるため、低所得者の負担感が重くなる「逆進性」の問題があります。
公明党は、低所得者らの暮らしを守る観点からも、軽減税率の導入を訴えています。
公明が提唱
個人消費の冷え込み防ぐ “8%後に低迷”の教訓生かせ
2012年、消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革関連法案が国政の最大の焦点となっていました。
民主党政権は、“社会保障置き去りの増税先行”を進めようとしていました。その動きに歯止めをかけるために、公明党は民主、自民との3党修正協議に参加しました。
公明党は安易な増税を許さない立場から、「社会保障制度の具体案を示す」「消費税の使い道を社会保障に限定する」などの条件を示し、3党合意に反映させることができました。さらに、国民の負担感を軽くする対策として「簡素な給付措置」(低所得者に現金を給付)などに加え、軽減税率を選択肢の一つに盛り込ませたのも公明党です。
軽減税率を消費税率「10%時に導入する」と決めた与党政策責任者会議=2013年12月 衆院第2議員会館軽減税率を消費税率「10%時に導入する」と決めた与党政策責任者会議=2013年12月 衆院第2議員会館
衆院選を経て自公連立政権が発足した後、軽減税率を具体化するため公明党は自民党と議論を重ねました。その結果、昨年12月に決まった14年度税制改正大綱に、軽減税率を消費税率「10%時に導入する」ことが明記され、実現へ向け前進しました。
今年4月、消費税率が8%に引き上げられた際、簡素な給付措置が実施されました。一方で、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の低迷が続いています。例えば総務省の9月家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は4月以降、前年同月比で6カ月連続のマイナスになっています。
個人消費が冷え込んだまま消費税率10%へ引き上げた場合、景気に致命的な打撃を与える恐れがあります。3党合意に基づき、慎重な判断が求められています。
これ以上、個人消費を冷え込ませてはなりません。国民の暮らしを守るため、家計への配慮が一段と求められています。
与党協議をリード
粘り強く実現めざす 対象品目、経理手法で公明案示し制度作り急ぐ
公明党は、消費税率10%引き上げと同時の軽減税率導入を強力に訴え、行動している唯一の政党です。
税収の減少を防ぎたい財務省、事務負担の増加を嫌がる経済界、両者の意見を踏まえて軽減税率の導入に慎重な自民党。その中で制度づくりの案を示し、与党の協議を粘り強く前に進めてきたのが公明党です。
「軽減税率を導入すると、品目別の税額を記した納品書(インボイス)が必要になり、事業者の事務負担が重くなる」と心配する声に対して公明党は、今の帳簿と請求書を活用し、インボイス不要の簡易な経理手法を提唱しました。
「軽減税率の対象にする品目の線引きが難しい」との指摘については、国民の生活に欠かせない食料品(酒と外食を除く)と新聞・出版物を対象とする案を提示しています。
公明党の提案をたたき台に、与党として、対象品目で飲食料品の8パターン、経理手法で4パターンの具体案を取りまとめました。その具体案を示し、計62の業界・団体から幅広く意見を聴取しました。
これからも公明党は、与党協議の中で軽減税率の実現に全力で取り組みます。
税の公平性確保が重要
“家計重視”の公明党に期待
神野直彦 東京大学名誉教授に聞く
神野直彦東京大学名誉教授
軽減税率を導入する意義などについて、東京大学名誉教授の神野直彦氏に聞きました。
―なぜ、軽減税率の導入が必要なのですか。
人が生活をしていく上で欠かせないものに対する税率を低く抑え、そうでないものの税率を高くすることが、課税の公平性を維持する上で重要だからです。
食料品などの生活必需品の税金が上がっても、生きていくために、人は消費をしなくてはいけません。だからこそ、そうした品目に対する重い課税は避けるべきだというのが軽減税率の基本的な考え方です。
―公明党への期待は。
経済社会を豊かにしていくには、企業だけでなく、家計も支えていく必要があります。公明党は、家計を支援していくことで経済全体の活性化を進めていく視点を持った政党であることを評価していますし、自民党と違う視点を持った公明党が政権内にいる意味は大きいと感じています。
公明党に期待しているのは、社会保障制度をさらに充実させ、家計を支えるセーフティーネット(安全網)を強化していくことです。失敗しても支えてくれる制度があれば、新しい事業にチャレンジする意欲は高まります。こうした動きを加速させて、経済を成長させていく視点を大事にしてほしいと願っています。
国民の8割「賛成」 最近の世論調査
国民の大多数が軽減税率の導入を求めています。最近のマスコミの世論調査の結果を見ると、軽減税率の導入に「賛成」と答えた人は、軒並み8割近くに上っています【グラフ参照】。
特に、女性から圧倒的に支持されています。産経新聞(10月21日付)は、フジテレビ系列(FNN)との合同世論調査で、軽減税率の導入に8割以上が賛成し“特に20代、40代、50代の女性では約9割を占めている”と分析しています。
読売新聞の社説(10月12日付)では、軽減税率を導入することで「対象品を購入するたびに軽減措置の恩恵を実感できることから、消費者心理の冷え込みを防ぐ効果も期待できよう」との声が上がっています。
専門家からも「自民党内には『10%にした後、いつか導入すればいい』という先送り論もあるようですが、国民の多くは10%と同時に導入されると理解しています」(結城康博・淑徳大学教授=10月26日付 読売新聞)などの声が上がっています。
マスコミの世論調査から
党税調が韓国を調査
混乱なく運用し国民に定着 生活必需品非課税に共感
「韓国では事業者も消費者も現場に混乱なく運用されている」―。公明党税制調査会(斉藤鉄夫会長=幹事長代行)は10月、日本の消費税に当たる付加価値税に非課税制度(軽減税率)を取り入れている韓国を訪ね、国民の暮らしに制度が広く定着している様子を確認しました。
韓国の付加価値税は標準税率が10%です。一方、野菜や肉、魚などの加工されていない食料品をはじめ、医療、教育、新聞、書籍、雑誌など生活に不可欠な商品やサービスを非課税扱いにしています。キムチや漬物、しょうゆ、みそなど韓国の食生活になくてはならない加工食料品も簡易な包装であれば非課税です。
ソウル市内のスーパーマーケットや市場では、課税(10%)と非課税(0%)の線引きをめぐる苦情や問い合わせが非常に少なく、納税事務もコンピューターシステムの普及で円滑に処理されています。韓国の非課税制度が「国民から共感を得ている」(申壽遠・国税庁個人納税局長)ことが背景にあります。
韓国の事例を踏まえ、斉藤会長は、日本の軽減税率について「混乱なく導入できる」と手応えを語っています。
スーパーのキムチ売り場を視察する党税調の(左2人目から)斉藤会長、上田勇会長代理、西田実仁事務局長=韓国・ソウル市スーパーのキムチ売り場を視察する党税調の(左2人目から)斉藤会長、上田勇会長代理、西田実仁事務局長=韓国・ソウル市
世界の軽減税率
欧州中心に広く採用 日本でも可能な制度
軽減税率は多くの国で採用されていることをご存じですか?
1960年代から日本の消費税に当たる付加価値税を導入している欧州では、軽減税率が生活の現場にしっかりと根付いています。
付加価値税が税収の中で大きな割合を占めている国は少なくありません。欧州連合(EU)加盟国では、付加価値税の標準税率を15%以上にすることが義務付けられています。
その上で、食料品など生活に欠かせない商品・サービスをはじめ、病気の治療・予防に必要な医薬品や新聞・雑誌などについては、それぞれの国の判断で軽減税率の対象としています【表参照】。とりわけ食料品への軽減税率の適用は、加盟28カ国のうち21カ国に上ります。
このほか標準税率25%のスウェーデンでは、スポーツ観戦や映画、旅客輸送が6%という低い税率ですが、こうした課税の在り方には、それぞれの国の文化や価値観が反映されているといえます。共通しているのは、税率を低くして高い標準税率の負担感を和らげていることです。軽減税率は日本でも実行可能な制度です。