【定数削減】「身を切る改革」とは何か。平木大作参議院議員が考える。

『身を切る改革は何処に(前編)』
こんにちは。平木だいさくです。
今日のテーマは「身を切る改革」。
衆議院の定数削減については、メディアでも随分と取り上げられているようです。
解散前の衆議院の定数は480。今回の選挙に際して、1票の格差を是正するための「0増5減」措置が取られたため、改選後は475議席となります。
つまり、たった5議席しか減っていません。
この話題で真っ先に思い出すのは、2年前の2012年11月14日に行われた党首討論の光景ではないでしょうか。
民主党の野田総理大臣(当時)が、自民党の安倍総裁に、衆議院解散をかけて、定数削減を迫ったあのシーンです。
野田総理「ここで国民の皆様に約束してほしいのです。定数削減は、来年の通常国会で必ずやり遂げる。(中略)このご決断を頂くならば、私は今週末の16日に解散をしてもいいと思っております。」
こうして決まった解散総選挙だったにも関わらず、結局翌年の通常国会において、定数削減が行われることはありませんでした。
「安倍総理は嘘をついた!」「なぜ定数削減を決断しないのだ!」
野党の皆さんからは、こんな声が聞こえてきます。
マスコミの論調もだいたいこの線に沿ったものが多いようです。
でも、私は少し違う受け止め方をしています。ご説明しましょう。
民主主義に基づく日本の国会では、原則として「多数決」で物事が決します。法律をつくる場合、賛成が反対を1票でも上回れば、その法律は成立します。
ここまでは、簡単ですね。
でも、民主主義には、忘れてはならないもう一つの不文律があります。
それが「少数者の意見も尊重しなくてはならない」という原則。つまり、安易に「多数決」で決めてはいけないというルールです。
このルールが適用されるのは、主に国会運営に関する事柄です。例えば、委員会の開催日時やその議題については、基本的に全ての会派(政党)が合意して決定することになります。
そしてこの国会運営において、最も重要な事項が選挙制度と議員定数なのです。
なぜなら、多数派から見て、うるさい少数政党を黙らせる最も手っ取り早い方法は、選挙制度を自分たちに有利なやり方に変えるか、または議員定数を大幅に削減することで、少数政党の議席を減らし、消滅させることだからです。
健全な民主主義の発展を考える時、国民の多様な価値観を、国会での議論に反映させることは極めて重要です。
その意味で、多数派の横暴を許さないためにも、選挙制度改革や定数削減の議論は、慎重に進めていくことが求められているのです。
この点を踏まえて、先ほどの野田総理の投げかけに続く、安倍総裁の発言を追ってみましょう。
安倍総裁「今、私と野田さんだけで決めていいのですか。そんなはずはないのですよ。沢山の政党がいる。(中略)少数政党にとって極めて不利になる、比例議員を一方的に減らすことは、問題があるからちゃんと議論しようと言っているのです。」
「まるで民主党と自民党がこの民主主義の土俵を全て決めていいと言っている。社民党だって、共産党だって、この党首討論に出られない政党が沢山ある。」
私は、野田総理の心意気は良しとしますが、テレビで中継される党首討論の場で、与野党の第一党だけで、定数削減を決めようとした姿勢は、極めて不適切だったと考えています。
そもそも、民主党は衆議院の「定数80削減」を公約に掲げて、2009年に政権についた政党です。
自分たちが政権の座にあった3年3ヶ月の間に1議席も削減できなかったことを棚に上げて、政権交代後の2年間で削減できないことを非難するのは、筋違いな話です。
もうおわかりだと思いますが、要するに、国会の定数削減は、時の総理大臣の一存で決めるものではないということです。
『身を切る改革は何処に(後編)』
こんにちは。平木だいさくです。
本論に入る前に、読者の皆様にひとつ問いかけをしたいと思います。
日本の国会議員の数は多いと思いますか?それとも、少ないと思いますか?
定数削減の話をするくらいだから、多いに決まっている!
そう思われても不思議はないのですが、実はこの問題はなかなかやっかいです。そもそも何を基準に多い、少ないを判断すればよいのか、はっきりしないためです。
ひとつの手がかりは、人口100万人あたりの議員数などの指標を、主要先進国と比較してみることなのですが、こうした数値からは必ずしも日本の国会議員数が多いとは言えません。
多くの日本人が持つ、議員が多すぎるという感覚は、恐らくこうした指標を通してというより、議員が期待通りに働いていないことへの不満に基づくものではないでしょうか。
国会中継の際、議場のあちらこちらで議員が居眠りしている姿を見ていれば、そう思うのも無理はありません。
政治に対する視線が厳しい今、約束した「身を切る改革」にしっかり取り組むとともに、まずは国民の皆様のために汗をかき、仕事で期待に応えていく姿勢こそが求められているのではないでしょうか。
私も、今日やるべき事を悔いなくやりきったのか、自分に日々問いかけながら、仕事に邁進したいと思います。
前置きが長くなりました。
前号のメルマガでは、定数削減は総理大臣の一存や、拙速な多数決で決めるものではなく、広く会派(政党)間の合意形成をしていくことが肝要であることを述べました。
今日はその続きとして、「身を切る改革」の現在進行形をお伝えしたいと思います。
自民・公明両党が政権復帰した2013年の通常国会以降、衆議院では議員定数削減について継続的に話し合いが行われてきました。
その数、実に29回。
しかし結局、合意には至りませんでした。
最大の障壁は、そもそも定数削減に強固に反対する立場です。
反対の主は、共産党と社民党。
前号にも書いたように、少数政党が党の消滅にも繋がりかねない定数削減を懸念することは理解できます。
しかしながら、国会における「身を切る改革」の議論が、国民の皆様に消費増税をお願いすることとセットで始まったことを考えれば、自分たちの都合ばかりで議論を滞らせるのは無責任のそしりを免れません。
これまでになされた数々の提案に対して、ひたすら「反対」を唱えるだけで、「身を切る改革」に背を向けたままの共産、社民両党には、猛省を促したいと思います。
少数政党にとって不利にならない削減の仕方も検討されている以上、公党として前向きに議論し、合意形成に努力する責務があります。
さて、その他の政党については、削減案を提示し、いくつかの案に収束をみたものの、結局議論を先に進めることはできませんでした。
当初から指摘されてきたことですが、やはり自らの「“首”を切る改革」を、自分たちで議論することの難しさがあったのは間違いありません。
でも、このままでは国民の皆様との約束を果たせなくなってしまいます。
そこで、打開策として急浮上したのが、衆議院議長のもとに第三者機関を設置し、そこに議論を委ねる案です。
ここでも共産、社民は反対を表明しましたが、もう待ってばかりはいられません。
他の会派は受け入れることで合意し、本年9月から外部の有識者による定数削減の議論が始まりました。
衆議院議長のもとに選挙制度の諮問機関を置くのは、初めてのことです。
急な解散となり、今回の総選挙には間に合いませんでしたが、定数削減の議論は、間違いなく動き始めました。
あとは提言が出るのを待って、国会で決断するのみ。更なる政治不信を招かないためにも、「身を切る改革」の議論は間もなく正念場を迎えることとなります。