第47回衆院選結果分析/公明、現行制度最多の35議席
自公連立政権が進めるアベノミクスの継続と2年間の政権運営の是非が問われた第47回衆院選で、国民は再び自公連立政権に絶対安定多数を与えた。公明党は9小選挙区で完勝し、比例区では前回より4増の26議席を獲得。現行の小選挙区比例代表並立制で最多となる35議席を獲得した。
『信任された自公政権』
『安定多数で経済再生めざす』
衆院解散から投票まで23日間という異例の短期決戦にもかかわらず、公明党は解散時の31議席(小選挙区9、比例区22)を上回る35議席(小選挙区9、比例区26)を獲得。現行の小選挙区比例代表並立制で最多の議席となる大勝利を飾った。
自民党は解散時より議席を減らしたものの、単独で過半数(238議席=今回から小選挙区が5議席削減され475議席)を上回る291議席を獲得。自公連立政権として326議席となり、安定した政権運営を可能とする絶対安定多数(266議席)を確保した。
連立与党の中で公明党が議席増を果たしたことは「政権運営での公明党の役割に対する評価」(山口代表)であり、国民からの負託に応えるため、公明党には民意の多様性を政権運営に生かす役割が一段と期待される。
一方の野党は明暗を分けた。
民主党は、2012年の前回選挙で大敗し政権から転落したが、今回、解散時の62議席を73議席とした。しかし、2大政党を標榜し常に衆院選を政権選択選挙と主張してきたにもかかわらず、「今回の衆院選では過半数を下回る人数の候補者しか擁立できず、『政権交代』を掲げなかった」(15日付 読売)ことで党勢回復にはほど遠い結果に終わった。党代表として選挙戦の先頭に立った海江田氏の落選はその象徴だった。
「第三極」もかつての勢いはなかった。共産党は、他の野党が支持拡大に行き詰まる中、解散時の8議席を21議席にした。
比例区の投票率は52・65%で、戦後最低を記録した前回の59・31%よりも、さらに7ポイント近く下がった。
低投票率の背景として、主要な野党が重要な政策テーマについて現実的な対案を提示することができないまま、「大義なき解散」などと抽象的な政権批判に終始し、政権選択選挙の意味を薄れさせたことが大きい。今回の衆院選はアベノミクス継続の是非が問われた。アベノミクスを「失敗だ」などと断じてきた民主党が対案を明確にできなかったため、国民にとって争点が見えにくくなった。
『9小選挙区で議席死守』
『北海道10区 民主候補(新党大地が推薦 )に競り勝つ』
公明党は、前回12年の衆院選で議席を獲得した9小選挙区すべてに公認候補(いずれも前職)を立て、全選挙区で議席を死守した。
前回、公明党が初めて議席を獲得した北海道10区では、民主が同選挙区を長く制した元職の秘書だった新人を擁立、新党大地が推薦し、全面支援に回った。前回選挙では、両党の合計得票数が公明票を上回っており、極めて厳しい情勢だったが、最後まで当落線上で争った結果、公明党の稲津久氏が8万6722票を獲得し、競り勝った。
神奈川6区の上田勇氏は、激戦を制して7万8746票を獲得、7選を果たした。前回1万2636票差で競り勝った同じ候補に、今回は2万6378票差をつけて退けた。
戦後最低の投票率の影響で、いずれも得票数は前回よりも減少したものの、東京12区の太田昭宏氏、大阪3区の佐藤茂樹氏、大阪5区の国重徹氏、大阪6区の伊佐進一氏、兵庫8区の中野洋昌氏は、次点の共産候補に2万〜5万票台の票差で勝利したほか、大阪16区の北側一雄氏、兵庫2区の赤羽一嘉氏も、それぞれ次点の民主候補に3万票近く差をつけ当選、「公明『常勝関西』守る」(15日付 朝日新聞大阪本社版)と地元で報道された。
『比例選で最多の26議席』
『全ブロックで得票率が増加』
比例区で公明党は、4議席増を果たし、26人が当選した。現行の小選挙区比例代表並立制の下で過去最多の議席数となる。総得票数は731万4236票で、前回衆院選と比べて19万7762票増やし、得票率は前回を1・88ポイント上回る13・71%を記録した。
比例区の投票率(今回は戦後最低)が前回に比べ6・66ポイント低下したにもかかわらず得票増となり、12年12月の自公連立政権発足以来、2年間で公明党が果たしてきた役割が評価され、得票率アップにつながったと見られる。
ブロック別の得票率では、前回より得票率を2・04ポイント増やした東北ブロック(11・22%)、2・2ポイント増の南関東(12・81%)、1・54ポイント増の東海(12・47%)、2・08ポイント増の九州・沖縄(17・72%)が、それぞれ見事に1議席増を達成した。また、前回より2・58ポイント増の中国(16・66%)、2・06ポイント増の北関東(14・74%)、2・01ポイント増の東京(12・15%)など、全11ブロックで得票率のアップを成し遂げた。
一方、得票数で見ると、九州・沖縄ブロックは野党第一党である民主党(約94万票)を上回り、自民党に次ぐ103万3424票の結果を残した。
得票率の上位10位は、福岡県(19・64%)、岡山県(18・06%)、長崎県(18・04%)、熊本県(18・00%)、宮崎県(17・97%)、和歌山県(17・81%)、鳥取県(17・37%)、鹿児島県(17・31%)、高知県(17・12%)、徳島県(17・03%)となる。
絶対得票率(当日有権者数に占める得票数の割合)を見ると、福岡県(9・3%)と鳥取県(9・1%)の2県で9%台を記録した。
『民主と「第三極」に厳しい審判』
『具体的な対案示せず敗退』
自公連立政権の経済政策批判を軸に選挙戦を展開した野党。だが、肝心の具体的な対案を何一つ示せず、国民から厳しい審判が下された。
野党第一党の民主党は、解散時の62議席から11プラスの73議席を獲得したが、目標の「100議席以上」には遠く及ばない結果に沈んだ。有権者の信頼を失った要因の一つは、同党のマニフェスト(政権公約)に表れている。政権を獲得した2009年と同じく「中学生以下を対象にした子ども手当」「最低保障年金の創設」などを掲げたが、今回は肝心の数値目標や財源の明記を避けた。「それなりにしっかり検証したうえでのこと」(海江田氏)と釈明していたが、逆に現実的な政策を立案できない体質が変わっていないことを露呈し、有権者の失望を招いた。
エネルギー問題など国民の関心が高い重要政策で、党内の意見対立を最後まで解消することができなかった点も有権者離れを加速させた。以前より指摘されていた「寄り合い所帯」の欠陥も鮮明になった。野党転落後の約2年間、党再建の方向性を定めることもできず、優秀な新人候補の発掘も怠ってきた。民主党政権3年半の失政は国民の記憶に強く残っており、頼みの無党派からも多くの支持は得られなかった。
前回衆院選で勢いをみせた「第三極」も横ばいか後退した。解散時に42議席だった維新の党は、1議席を減らした。同党は野党再編を唱え、民主党と一部で小選挙区の候補者を調整したが、維新の党に一本化した選挙区で橋下共同代表が痛烈な民主党批判を展開。政策や共通公約があいまいなまま候補者調整をした未熟さが出た。党の存続を懸けた次世代の党は、解散時の19議席が2議席となり大敗した。生活の党は選挙直前に前議員2人が離党し、解散時の5議席から2議席に減らした。