【3定一般質問】市民後見の拡大で、地域が節度ある常識をもって認知症高齢者の人権擁護に取り組もう。

 一般質問の3番目は、成年後見制度についてです。超高齢社会は、長寿化とともに認知症の進展を想定しなければなりません。
 そして、大事なことは認知症にあっても、人権擁護が徹して行き届くことです。その実行手段が成年後見制度と言えます。この制度は、財産や行為意志に関係することから相当の常識の節度をもって対応されなければなりません。私も、その一員としてお役に立ちたいと考えています。
 そんな思いを持ちながら質問致しました。
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 ☆八島いさお議員
 次に,成年後見制度の利用促進と市民後見人育成についてお伺いいたします。
 成年後見制度は,超高齢社会の到来,核家族化の進行,地域のつながりの希薄化,引きこもりや虐待の増加など,現在の社会状況から私たちの権利を擁護するセーフティネットです。
 先日,厚労省は,2012年の認知症高齢者が推計305万人に上り,65歳以上年齢人口の約10%を占めると発表いたしました。
 茨城県の65歳以上人口は約69万5,000人ですから,約6万9,000人の認知症高齢者がおられると目されます。ここに権利擁護すべき障害を持つ方が加わります。聞き取りではありますが,1人の後見人が何人の被後見人に対応できるかを訪ねると,約五,六人ではないかとのこと,つまり,茨城県には1万人を超える後見人が必要となります。全国的に成年後見申し立て件数は,ここ5年間で約27%も増加しており,今後もその傾向は続くと思われます。中でも,身寄りのない人や親族の協力が得られない人にかわって市長が申立人となるケースの増加は顕著であり,市長申し立てとなるも後見人候補者不足で混乱する,これが懸念されるところであります。
 現在,社会福祉協議会で実施している「日常生活自立支援事業」は,認知症高齢者・知的障害者・精神障害者に対して,福祉サービスの利用援助や日常の金銭管理を援助することで,在宅での自立した生活を支援するものです。しかしながら,利用者の加齢や障害の重度化による判断能力の低下に伴って,この自立支援事業では対応できない財産管理や身上監護などの法律行為が必要とされるケースが増加している。そのため成年後見制度との連携と適切な移行が求められていると考えるところであります。
 さて,成年後見に対する県の役割は何か。本年4月1日施行の改正老人福祉法は,新たに第32条の2を創設し,後見等に係る体制整備について制定いたしました。第1項は,市町村は後見・補佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成と活用を図るための必要な措置を講ずるよう努めるとし,第2項は,都道府県に,市町村への助言と援助を行うことを努めなければならないとしました。
 さらに,厚労省は,「市民後見人の育成及び活用に向けた取り組みについて」の通知を発して,実施主体を市町村としながらも,取り組み体制の整備,市民後見人の養成研修,家庭裁判所との連携等を県に求めています。
 成年後見制度は,急速に進む高齢化にあってだれもが遭遇する事案,例えば「預金者は認知症なのでお金はおろせません」「実家の親が高額で不要なものを買っている」「相続人に認知症の親がいる」「障害のある子の今後が心配」などの解決方法であり,申し立て動機から見れば,預貯金等の管理解約,介護保険契約,身上監護,相続,不動産処分等が上げられます。これらの身近なだれもが遭遇する事案に即応する成年後見制度が周知されていないこと,相談先が明確でないことが課題です。費用に対する不安もあろうかと思います。
 つきましては,県として全市町村に対して成年後見制度利用支援事業のさらなる利用を促進し,市町村に対する財政支援の拡大を要望したい。加えて,茨城県の先見的な取り組みである地域ケアシステムの中に成年後見制度を位置づけてはどうでしょうか。地域ケアコーディネーターを中心とした保健・医療・福祉関係者と民生委員や地区長との連携により,在宅ケアの推進と高度化が一体的に図られ,福祉サービスのワンストップ化が発展すると考えます。
 そして,何よりも後見人の養成こそ喫緊の課題です。弁護士や司法書士が組織する成年後見センターリーガルサポートや行政書士会のコスモス成年後見サポートセンターとは別に,簡便で負担の少ない事案に対する市民後見人の育成に対して,県の積極的な対応を求めるものです。市民後見人に重大な責任を負わせるのは心配だという意見もあろうかと思います。であるからこそ,円滑な制度利用の促進のため,茨城県の施策により市民後見人を育成し,その後の活動に強いサポートをするべきであると考えます。加えて,複雑な事案や長期にわたる後見に対する手法として,NPO等の組成にも支援すべきではないかと考えているところであります。
 そこで,成年後見制度の利用促進と市民後見人の育成について,土井保健福祉部長の御所見をお伺いいたします。
 以上でこの項目の質問を終わります。
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〇土井保健福祉部長 
成年後見制度の利用促進と市民後見人の育成についてでございます。
 議員御指摘のとおり,認知症やひとり暮らし高齢者の増加に伴い,親族等による後見が困難になってきている中で,成年後見制度の必要性がますます大きくなってきております。
 こうした中で,利用者の立場からは,身近な相談機関において適切な相談体制が確保されていることが重要となっております。
 その一方,高齢者の身近な総合相談機関である地域包括支援センターからは,「複雑なケースが多く,相談できる機関がほしい」「成年後見制度の概要は知っているが,具体的な手続を進めることが難しい」といった声が寄せられております。
 県では,このような状況に対応するために,成年後見制度の活用を地域包括支援センターに周知したり,事例研究を中心とした具体的な演習を新たな研修項目に取り入れるなど,成年後見制度の利用促進を進めてまいります。
 また,地域ケアコーディネーターの養成研修のプログラムに成年後見制度を取り上げるなど,本制度の理解を深めていただくよう取り組んでいるところでございます。
 さらに,市民後見人の育成につきましては,国が昨年度から実施している「市民後見推進事業」の活用を市町村に働きかけております。当該事業を活用し,牛久市などは市の社会福祉協議会と一体となって,11月から市民後見人を養成する研修を開始するとともに,研修された市民後見人が適正,円滑に後見業務を行えるよう,専門職による指導・監督機関として,成年後見サポートセンターを既に市の社会福祉協議会に設置したところであります。これを契機に,他の市町村においても速やかに取り組みがなされるよう支援してまいります。
 県といたしましては,認知症高齢者を初め,支援を必要とする人が,安心して住みなれた地域で尊厳を保ちながら穏やかに生活できるよう,市町村及び関係団体との連携強化に努め,成年後見制度についての県民への広報・啓発を図るとともに,市町村の市民後見人の育成について積極的に支援してまいります。