続いての一般質問は、茨城県の公会計制度に対するものです。昨年は、井手県議が代表質問で行い、私も総務企画委員会で質疑したものを発展性をもって問うという内容です。
それは、複式簿記・発生主義会計に基づき、固定資産台帳の整備を急げというもので、その事由は老朽化する公共施設の長寿命化や更新には、中長期な財政計画が必要だとということを訴えるものです。
総務部長の答弁は、実質的か果実には程遠いものの、問題意識の共有はあったと思料されます。また、国の意向等を踏まえるという県らしいもので想定の範囲を越えませんでした。
当初は、再質問の準備をしていました。内容は、現在の予算組成の基本である「シーリング」では真に中長期な財政計画は立案できるのかと言うものでしたが、時間の関係で不能となったものです。
これらは、単年度主義とも言える現行会計制度への疑問を呈しているものです。今後とも企業会計に準じて「見える化」の進む、説明責任を果たす公会計を目指していきたいと思います。
☆八島功男議員
次に,固定資産台帳整備とインフラ会計による将来財政運営についてお伺いいたします。
昨年の東日本大震災の教訓を踏まえて,防災・減災の視点からの社会資本整備が求められております。特に,公共施設や道路・橋梁等のインフラは老朽化が進行し,加えて過去の急速な整備の結果,これからの集中的な更新,大規模補修を余儀なくされるなど,将来の財政負担に懸念を生じさせております。手をこまねいていれば老朽化による事故が起こり得るのです。そこで,社会資本整備を会計的な視点からとらえてみたいと思います。
公明党県議団は,複式簿記・発生主義による新しい公会計システムの導入を提案しております。これは,資産・負債のストック情報や減価償却情報の開示などによる説明責任を果たし,行政マネジメントの改革を目指すものです。
茨城県は,平成20年度決算から「総務省方式改定モデル」による貸借対照表,行政コスト計算書,純資産変動計算書,資金収支計算書を発表し,本年で4年目を迎えようとしており,経年比較や他県比較により一定の成果を上げていると考えます。話題となる減価償却については,耐用年数ごとに残存価格をゼロとする定額法によると明示し,行政コスト計算書では目的別の減価償却明細も発表しております。
しかし,現在の一般会計等の決算書は,内訳で「款」「項」「目」「節」と細かく分類され把握されているものの,それは「支出」であり,「費用」ではありません。つまり,「コスト」が見えない,費用と効果の関連性が見えない決算書であることになります。
そこで,厳しい財政事情の中で,真に必要なインフラ整備を安定的な財政運営を基本に展開するために,インフラ会計の研究・導入を要望したいと考えます。
インフラ会計とは,社会資本ストックの価値を物理評価,簿価評価,市場価値評価により適切に評価し,財務会計と管理会計を構築しようとするものです。目指すところは,納税者への説明責任の質の向上と,待ったなしの老朽化に対する戦略的なインフラ管理にあります。
別角度から見れば,財政当局と各担当部局が施設やインフラなどの固定資産情報を共有することにより,財源まで視野に入れた将来計画が策定できるということであり,将来の維持管理費用の評価や効率的な投資計画策定の「見える化」につながるのです。
具体的には,現在の公有財産台帳から,複式簿記・発生主義会計に耐え得る固定資産台帳の発展的な整備を求めたいと思います。この固定資産台帳は,企業会計に準ずるものとして作成し,県の所有するすべての資産を網羅し,本体価格と付随費用を合算し減価償却を明示するものです。そして,減価償却累計額により老朽化率を判定し,いずれ再建するものならば基金造成されてもよい金額の算定をしようとするものです。インフラ会計の前提は固定資産台帳作成にあることから,先験的に取り組くんでいただきたいのです。
茨城県は,第6次行財政改革大綱で4つの改革プログラムを上げ,その第2に財政構造改革を具体的な方策に示しています。県債残高の抑制やプライマリーバランスの推移予測は,将来の財政需要を明確に推しはかるところから長期展望が見出せます。ましてや,県民の生命と財産を守るためには,危険性あるインフラを放置してよいはずがありません。維持管理のために新規事業ゼロの事態を回避するために,ストックデータの作成,管理,活用をインフラ会計として体系化することで,インフラ資産の更新,長寿命化等による将来の財政負担を実質的に軽減する財政運営が可能になるものと考えます。
そこで,固定資産台帳整備とインフラ会計導入による中長期的財政運営について,福田総務部長にお伺いいたします。
以上でこの項目の質問を終わります。
○福田総務部長
固定資産台帳整備とインフラ会計導入による将来財政運営についてお答えいたします。
複式簿記・発生主義会計による公会計制度の導入により,財務書類作成に必要な減価償却累計額や取得財源などの情報を含む固定資産台帳の整備が求められております。
固定資産台帳整備による効果といたしましては,インフラ資産である道路などの台帳では記載されていない取得価格や減価償却費などの情報の把握や,資産情報の一元的な管理による全庁的な観点からの適正な資産管理が可能となることが期待されております。
一方で,固定資産台帳の整備に当たりましては,県が所有する全ての固定資産について資産評価を実施する必要がありますが,現在,試行あるいは検討されております会計基準では,それぞれ資産の評価方法が異なっており,現時点では自治体間で容易に比較するための統一的な基準が整備されておりません。また,複式簿記・発生主義会計による財務諸表につきましても,地方自治法等による決算調書としての根拠がなく,現行の決算制度における位置づけが不明確なままになっているといった課題がございます。
このため,現在,総務省が設置いたしました研究会におきまして,国際公会計基準を踏まえた地方公会計基準の見直しの検討が行われておりまして,平成25年度を目途に結論を出すこととしているところであります。
また,複式簿記・発生主義会計に対応した固定資産台帳を整備するには,財務会計システムの改修等が必要となってまいりますので,コストや労力の面でも負担が生じてまいります。
しかしながら,議員御指摘のとおり,複式簿記・発生主義会計の導入は,将来目指すべき方向であり,県といたしましては,国の研究会の動向を注視しつつ,固定資産台帳の整備に向け,インフラ資産の評価方法などの調査,検討を行う場を立ち上げるなど,具体の勉強を進めてまいりたいと考えております。
また,議員から御提案のありましたインフラ会計の導入につきましては,インフラ資産の更新・長寿命化等による財政負担の軽減を図るための有効な手段となることが期待されておりますが,現時点でその手法が確立されておらず,導入事例もないことから,まずはインフラ会計導入に当たりましても必要となります固定資産台帳の整備に向けた取り組みを着実に進めるべきと考えております。