昨日(4月5日)の東京金融市場は、日銀・黒田東彦総裁が打ち出した新たな量的緩和政策を巡って大きく乱高下しました。東証1部出来高過去最高64億4千万株は記録に残り、日経平均は一時1万3225円62銭まで上昇しました。終値は上げ幅を縮めたものの1万2833円64円となりました。
債券市場では、長期金利の指標となる新発10年者国債の流通利回りが過去最低になり、一時は0.315%。外国為替市場は円安が進み、一時1ドル97円台をも記録しました。
これらの市場の動きは、多くの投資家や国民を巻き込んで、その是非が問われています。特に、債券市場の先物売買動向は、当面の利益確保と中長期のポジション見極めの交錯したものと思われます。また、かつてのバブルを連想した発言が投資家の中から出るようになることは注意を要すると思われます。
まさに、第1矢・大胆な金融緩和が実行されたと言えましょう。第2矢の機動的な財政出動は、今や財政政策として政府が中長期な財政再建の道筋を示すことに変貌していると思われます。政府の発行する国債を野放図に買う事は理屈が成り立たないからです。そして、日銀にしても買い入れた国債等を何時どのように処分するかが最大の問題です。第3矢は、景気回復には成長戦略が欠かせないという事です。お金がお金を生む事がバブルであるとすれば、「カネ」は用意したからには実のある「モノ」に変換できなければ、真の付加価値の創造はできません。その実体経済の果実が「ヒト」に還元していく事が必要です。勿論「ヒト」とは、日本の場合技術や研究を指すもので、到達点ではないと思いますが、少子高齢化社会での新しい価値創造の難しさに挑戦しなければならないのです。
日銀黒田新総裁の新緩和策は、新しい金融緩和枠組み「量的・質的金融緩和」の導入です。白川前日銀総裁の実施した「包括緩和」をレジュームチェンジ(体制変換)したものです。黒田総裁は、「常識を超える、これまでとは次元の違う緩和」と述べ、市場も予想を超えたないように見事に反応しました。
量的とは、マネタリーベース(お金の供給量)を130兆円増額し14年末に270兆円とし、2年で2倍にする。長期国債の買入は、14年末に2倍の190兆円とする。
質的とは、買入れる長期国債の満期までの期限を3年から40年にのばし、残存期間の平均を3年弱から7年程度にのばす。ETFを年1兆円、J-REITを年300億円まで買入額を増額する。
これらにより、2%の物価安定目標を実現するとしているものです。
そして、期待される効果を①住宅ローン金利が低下する。企業の設備投資が期待できる。②金融機関が貸出を増加させる。銀行は現在、企業融資のリスクを避けて運用を国債保有にシフトしていたが、国債金利の低下が明らかになれば経済活性化を企図した資金供給となる。③物価上昇を期待もしくは懸念させることで、値上がり前の購買意欲を刺激する。というものだ。
しかしながら、円安の影響は、食卓に響きやすいこともまちがいありません。食糧需給率が低いとは、食糧を輸入に頼っているという事であり、米を除く主要な食品の価格上昇が心配です。また、ガソリン価格の上昇も懸念されます。こうなってくると手許のお金が増えるのと、者は変わらないのに出ていくお金の多さが追いかけっこして私たちを悩ますことになるのかもしれません。ただお金のある所は高齢者であることはまちがいがありませんので、バブルと言われても大いなる気配によって、高級品等の購入意欲が高まり景気回復のスタートを切れることも考えられます。この機会は、ストックされたお金をフローさせて循環により実体経済の上昇を期待したいと考えます。