【0増5減】「一票の格差」是正、議員定数削減、選挙制度抜本改革を確実に実行し、政治不信解消を一歩進めよう。

 衆院選挙制度については、小選挙区の「1票の格差」是正のための「0増5減」区割り改定法案が衆院を通過し、今国会での成立が急がれています。さらに、自公民3党が今国会中に結論を出すことで合意している「定数削減」も喫緊の課題で、最終的には、より民意の反映を重視した「抜本改革」を実現しなければなりません。
 以下は、公明党が考える制度の抜本改革への道筋について、党政治改革本部の北側一雄本部長(衆院議員)が語る公明党の考える抜本改革の道筋についてです。
 ――格差是正が急がれる理由は。
 北側一雄・党政治改革本部長 
 選挙制度の課題は、①「1票の格差」是正、②国会議員の定数削減、③制度の抜本改革の三つあります。今、何より急がれているのが格差是正の問題です。
 2011年3月に最高裁が09年衆院選の「1票の格差」について、価値が2倍を超えているとして、「違憲状態」と指摘しました。にもかかわらず、格差是正がなされないまま、昨年の衆院選も行われ、高裁から「違憲」判決が相次ぎ、最高裁の判決も年内には出ると思います。
 そうした中で、昨年11月16日に成立した小選挙区を「0増5減」する緊急是正法に基づく区割り改定法案が今、国会で議論されているわけです。立法府として「違憲状態」を早く解消し責務を果たすため、区割り法案を今国会で成立させる必要があります。
 ――野党は「0増5減だけでは不十分」と反対していますが。
 
 そもそも緊急是正法と区割り法案は一体です。民主党をはじめ多くの野党が緊急是正法に賛成したわけですから、区割り法案の成立に協力してもらわないといけません。
 民主党は、各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」の影響が残っており「不十分」と言っていますが、1人別枠方式はすでに緊急是正法で削除しています。民主党が主張するような案でも実際に区割りが画定されるまでには1年以上かかるため、その間に最高裁判決が出てしまいます。
 そうした事態を避けるために、まずは格差を2倍以内に収めることを急ぐため、「0増5減」を成立させることが肝要です。
 ――定数削減については。
 昨年11月16日に、当時与党の民主党と野党の自民、公明両党の間で、衆院議員の定数削減については、この通常国会終了までに結論を得る旨の合意をしています。この通常国会で制度の見直しも含めて定数削減を行うことになっています。その前々日に行われた党首討論をきっかけとして衆院解散に至った経緯を考えても3党合意は大変重いと受け止めています。
 本来は時間をかけて制度の抜本改革と一緒に議論できればいいのですが、今国会で合意を得るためには、現行の小選挙区比例代表並立制を基本にしながら、どう定数削減をするかという議論をせざるを得ません。
 
 ――自公はすでに定数削減に関する与党案をまとめています。
 自公間の協議では、自民党から公明党に対し、比例代表制を見直して、現行比例定数180から30削減する案が提示されました。
 具体的には、小選挙区制による民意の集約機能が過度に働く中、より民意を反映した制度にするという観点で、新たな比例代表制の定数150を90と60に分けて、第一配分の90は従来通りの方法で議席を分配し、第二配分の60はそのブロックにおける得票の第1党を除いて第2党以下で分配します。
 公明党内で自民案について検討した結果、この国会中に合意を得るには現実的な案ではないかとして了承し、最終的に与党案としました。ただ、自公間ではより民意を反映した制度への抜本改革について「今後も与党内および各政党間で協議し結論を得ることをめざす」という合意も交わしています。
 ――与党案には「中小政党への優遇だ」「公明に配慮」との批判もありますが。
 小選挙区制は「民意の集約」、比例代表制は「民意の反映」の機能を持っています。この二つの理念をバランスを持って合わせたのが並立制です。
 ここ数回の選挙結果を見ると、小選挙区での民意の集約機能の方が大きく働いています。昨年の衆院選では自民党の比例得票率は3割にも満たないのに総議席は6割を超えています。これでは民意の反映機能が十分に働いているとは言えません。民意の反映という役割をより重視した選挙制度にすることが大事ではないでしょうか。
 実際、前回の衆院選結果を与党案に当てはめると、大半の中小政党に変化はありませんし、比例30削減分は主に第1党が負い、第2党以下の政党は必ずしも議席が増えるわけではありません。決して「中小政党優遇」ではないし、ましてや公明党だけが優遇されるわけではありません。
 ――制度の抜本改革に向けた公明党の考え方は。
 選挙制度の理念としては、民意の集約も反映も重要な視点です。もう一つ、考えておくべきことは参院との役割分担です。
 参院の選挙制度についても、昨年11月16日に選挙区定数を「4増4減」する法律が成立しましたが、夏の参院選後に制度の抜本改革を行うとの合意が与野党間で交わされています。とりあえず「4増4減」で手直ししましたが、そうした手法で格差を是正するやり方は限界にきています。いずれにしても、衆参両院の役割の違いも踏まえた上で、選挙制度もその役割に応じて考えるべきで、参院の選挙制度も並行して議論していく必要があります。
 公明党は従来、小選挙区比例代表連用制、同併用制、新しい中選挙区制も主張してきましたが、選挙制度は全党とは言わないまでもできるだけ多くの政党が「それでやむなし」と合意を形成することが望ましく、柔軟に考えないといけません。
 改革のポイントは民意をより重視した制度にすることです。特に衆院は、第1院という性格からすると、より民意を反映した制度にすることを前提に考えていくべきです。
 ――今後の抜本改革に向けた見通しは。
 現在、与野党の実務者協議が行われていますが、各党がそれぞれ具体的な案を持ちながら議論をすることになるので、幅広く合意が形成できるよう努力をしていきたい。
 参院の方も夏の参院選が終わったらすぐに抜本改革に向けた議論が始まると思いますので、それと並行しながら衆院の方も議論していくべきです。参院が16年の参院選から新たな制度で進むという流れになるなら、それに歩調を合わせて、できるだけ早く進めていく必要があります。
 『区割り改定法案とは』
 衆院小選挙区の格差を是正するため、昨年11月16日に自民、公明、民主、日本維新の会、みんななどの賛成多数で成立した緊急是正法に基づき、第三者機関である衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)が改定した区割りについて、政府が国会に提出した法案。
 具体的には「1票の格差」について、人口が最も少なくなる新鳥取2区(29万1103人)に対し、すべての選挙区が2倍未満に収まるように区割りを画定。山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県で定数を3から2に削減したため、「0増5減」の区割り改定法案と言われる。成立すれば、最大2.524倍だった格差は、1.998倍まで縮小される。
 同法案は4月23日の衆院本会議で、自民、公明などの賛成多数で可決し、参院に送付。採決では、緊急是正法に賛成した民主、みんなの両党が反対。日本維新の会は欠席した。
 以上のように、党利党略のために「0増5減」すらできないことは、結果として現在の衆議院議員が違憲な選挙による違憲な議員になりかねない問題です。民主党は、早く「0増5減」を決めると、自民党は違憲状態の議員の身分の解消のためダブル選挙を行う事を恐れていると報道されています。
 こんな党利党略や自己保身があるとすれば、一層の政治不審が高まるもの思われます。まずは、先の高騰の約束を遵守して欲しいと思うばかりです。