【憲法】3原則の堅持、「硬性憲法」の意義は確か、「加憲」こそ改正のあり方。

 6月3日の公明新聞には、衆議院憲法審査会の憲法逐条審査を終了した北側一雄公明党憲法調査会長のインタビュー記事が掲載されました。
 立憲主義の精神を守るのが公明党の憲法への姿勢そのものです。来る参議院選挙においても公明党の憲法観を詳らかにし、連立政権とは言っても差異を確認する必要があります。以下をぜひともご覧ください。
公明の憲法論議 北側一雄・党憲法調査会長に聞く
衆院憲法審査会の憲法逐条審査がこのほど終了、参院憲法調査会もテーマ別審査を進めている。その中で示された公明党の見解と、現在行われている党内論議に関し、党憲法調査会長の北側一雄副代表に「加憲」「新しい人権」「地方自治」「9条」について聞いた。
<公明党の憲法論議の経緯>
 2000年1月の衆参両院の憲法調査会設置を受け、公明党憲法調査会も党内論議を開始。04年には両院の憲法調査会の報告書提出(05年)に先駆けて「論点整理」をまとめ、06年の第6回党全国大会「運動方針」の中で「加憲」の考え方を具体的に提示した。現在は、この十数年に及ぶ党内の議論を踏まえた憲法論議を進めている。
 憲法の役割は人権保障のための権力制限。その理念を堅持し、新時代の課題には「加憲」で対応。
Q.公明党の憲法論議に対する基本姿勢は?
A.2000年に国会両院に憲法調査会が設置されて以降、公明党はきょうまで憲法論議を着実に進めてきた。「変化する時代に憲法はどう対応すべきか」と真剣に考える中で、憲法改正を一切認めない護憲論や、右寄りの改憲論とも一線を画してきた。そもそも現在では、そうした護憲論と改憲論の対立はナンセンスである。どこを守り、どこを改正するかという真摯な議論こそが必要である。
 公明党内の憲法論議では、憲法の本質である立憲主義の重視が基本とされてきた。
 すなわち、国家権力から国民の自由と人権を擁護するのが憲法であり、国民を縛るのではなく、国民が国家権力を制限するのが憲法であるとの認識だ。
 西欧近代から始まる憲法の歴史は、国民が王権との闘争の中で自由と権利を勝ち取ってきた過程である。この歴史の中で、憲法は他の法律よりは上位にあり、憲法が保障した人権を法律や政令で奪うことはできないし、憲法に違反した法律は無効とされる最高法規性も確立させてきた。
 こうした背景から、多くの憲法は普通の法律より改正が難しい硬性憲法の性格を持っている。日本の憲法も同様だ。
 公明党は現行憲法の「硬性」を維持すべきであると考え、改正要件の緩和だけを先行させる案には慎重である。
 また、憲法改正には国民的議論の積み重ねが必要であり、それが不十分なままの改正はすべきでないとの立場である。
これが公明党の憲法論議の基本姿勢となっている。
Q.公明党は党内論議の中で加憲を改正の方法として主張している。その理由は?
A.加憲とは、現行憲法をそのまま維持した上で、必要な改正は新たな条文を付け加える形で行う方法である。
 この考え方の基礎には現行憲法に対する積極的な評価が大前提としてある。
 日本は、戦後の焼け野原から平和で発展した国として復興した。その過程で現行憲法は大きな役割を果たした。明治憲法にはなかった基本的人権の保障、国民主権、恒久平和主義の3原則によって、現行憲法は民主主義を進め、国際社会の信頼も得てきた。
 一部には占領下につくられた憲法であり、自主憲法の制定が必要との意見もある。しかし公明党は、日本を支えている優れた憲法であり、すべてを変えるべきとは考えていない。そこで、現行憲法を維持したまま改憲をする方法として加憲を提起した。
 66年前の憲法施行時に想定できなかった課題を憲法に付け加えることは重要であると思う。憲法も法規範である以上、新しい時代に対応した改正があってしかるべきだ。
ただし、現行憲法の3原則は、普遍的価値があり、将来とも堅持すべきであると公明党は考えている。
Q.加憲の議論は今後どう進むのか?
A.衆院の憲法審査会ではこのほど、逐条審査が終わり、各党の見解表明も行われた。
 現行憲法をどう認識しているかという、いわば総論が終わったわけであり、いよいよ各論の話になっていくと思う。具体論と向き合うことになる。
 公明党もこれまでの党内論議を踏まえ、どの条文をどう変えるべきか、また、改正の優先順位をどうするかという具体的な議論をしていきたい。
 重要性増す地球環境保護などを最高法規の中に位置付け、積極的な取り組みをめざす
Q.これまで党内で議論された加憲の具体論は?
A.加憲論議の対象は多く、すべて党内のコンセンサス(合意)ができているわけではない。
 まず、憲法第3章の人権規定に関し、時代の変化の中で生まれた「新しい人権」を付け加えるべきとの意見がある。例えば、憲法制定時にはなかった地球環境保護の問題がある。
 地球環境保護は現代人だけでなく、これからの世代のための問題でもあり、一国だけでなく人類の問題でもある。国家は地球環境保護の責務を負うべきだが、それとは別次元で現代人もその責務を担うべきとの考えもあり、人権規定に環境権を加えようとの議論がある。環境権の重要性を認める方向性そのものは党内の大勢になっている。
 プライバシーの問題も議論されている。高度情報化社会の到来で人々は大変な恩恵を受ける一方、本人の知らないところでプライバシー侵害に遭う事態が起きている。プライバシーの権利は人格を守る重要な権利であり、憲法に明記すべきとの考え方だ。
Q.人権以外での加憲論議はあるか?
A.憲法第8章の地方自治が争点になっている。公明党も推進している道州制が政策課題になっている現在、憲法には「地方自治の本旨に基づいて」としか規定がなく、あまりに抽象的である。住民自治、団体自治の原則を明記するべきとの意見もある。
 戦後復興期は中央集権的な方法で日本社会全体を底上げする必要があったが、現在は地方の特性と独自性を尊重し、地方のことは地方で決め実行することが国の活力源になり得る。地方自治の具体化を求める党内の意見は強い。
Q.恒久平和主義を定めた憲法9条についての考え方は?
A.公明党の9条に関する立場は、これまで積み重ねられてきた政府解釈と、裁判で示された司法判断を前提とすることが基本である。すなわち、急迫不正な武力攻撃から日本を守るための自衛権は個別的自衛権であり、その行使は憲法上許される。しかし、日本が攻撃されていないにもかかわらず日本と密接な関係にある他国を防衛する権利としての集団的自衛権は、その行使はできないとの解釈を認めている。
 また、憲法を改正して行使を認める必要もないと考える。
 こうした解釈を維持するためにも、9条は戦争放棄の第1項と戦力不保持の第2項をともに残し、必要であれば、自衛隊の存在を明記するための条文を加えたり、あるいは、国連平和維持活動(PKO)など自衛隊による国際平和協力活動の必要性を新しい条文として書き込むことも検討すべきとの議論もある。
 自衛隊に対する国民の理解は進んでいる。また、自衛隊のPKO協力についても、内閣府の世論調査ではこの20年間で賛成が約8割に上り、国際的にも自衛隊は高い評価を受けている。
 こうした自衛隊の存在を憲法にどう位置付けるかは大事な論点になり得る。