厚生労働省は、初期段階の認知症高齢者の早期診断・早期対応を行うための専門家チームを、2015年度から順次、全市町村に設置する方針を固めた。
認知症は早期治療で改善する可能性が高いとされている。ところが従来の対策は、施設や精神科病院への入院が一般的だった。
そこで今回の支援チームは、高齢者の症状が悪化する前に集中的に支援することで、住み慣れた地域で暮らし、症状の安定化とともに、長期入院を防ぐのが狙いだ。
同省は14年度予算案に全国100カ所で専門家チームを設けるモデル事業や、認知症地域支援推進員の拡充などに33億円を盛り込んでおり、本格実施に向け課題や効果を検証する考えだ。
チームは、保健師、看護師、社会福祉士、介護福祉士などのほか、認知症治療の専門医で構成。地方自治体の医療・介護の拠点である地域包括支援センターなどに配置し、認知症高齢者の自立した生活に向けたサポートを行う。
高齢者に物忘れや行動の変化など、認知症と疑われる症状が見られる場合、チームが本人や家族からの相談に応じる。その後、自宅を訪問し、医療機関の受診や介護が必要かどうかを判断した上で、確実にサービスを受けられるよう、医療機関や介護事業者を紹介するなど、専門機関と調整を図る。
専門機関がサービスを開始した後も、チームの担当者が定期的に自宅を訪れ、症状の経過を確認。症状の見通しを説明したり、生活面での助言も行う。チームによる支援は最長で6カ月間。その後は近所のかかりつけ医やケアマネジャーに引き継ぐとしている。
認知症高齢者は年々増加しており、厚労省によると25年には470万人に達する見通しだ【グラフ参照】。同省では「少しでも生活の変化を感じた段階で、相談に来てもらえるよう広くPRする必要がある」と強調している。
公明党は09年に全国で「介護総点検」を実施。10万件に上る声を基に「新・介護公明ビジョン」を発表し、認知症高齢者向けグループホームの3倍増や、24時間365日の訪問介護サービスの拡充などを提案し、認知症対策を着実に前進させてきた。
【認知症とは】いろいろな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったために、さまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6カ月以上継続)を指す。認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症などがこの「変性疾患」に当たる。