中小企業の従業員やその家族らが加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の財政支援について、今年、社会保障制度改革プログラム法などに基づく検討が行われる。
これは、厳しい財政運営を強いられている協会けんぽへの支援強化を公明党が訴え、推進してきたもの。
協会けんぽの財政状況協会けんぽは2008年10月に設立され、非公務員型法人の協会が、かつての政府管掌健康保険を国から引き継いで運営している。
加入者数は約3500万人。約164万の加入事業所のうち、4分の3以上が従業員9人以下で、報酬水準は比較的低い。また、後期高齢者支援金など、高齢者医療を支えるための拠出金が年間約3兆円と、支出全体の40%にも上っている。
厳しい経済状況による保険料収入の減少などもあり、協会けんぽは08年度に8.2%だった保険料率を年々引き上げてきた。09年度には都道府県ごとの保険料率設定に移行し、12年度以降は全国平均10%になっている。
保険料は、加入者の報酬に保険料率を掛けるなどして算出し、企業と加入者が折半して支払う。このため、保険料負担が重くなれば、企業が正規雇用を維持できなくなる恐れもある。そこで、国は10年度以降、医療給付費(公的医療保険から医療機関や薬局などに支払う医療費)に対する国庫補助率を13%から16.4%にするなどの支援を実施している。
ところが、12年2月に民主党政権が閣議決定した社会保障と税の一体改革大綱には、協会けんぽへの支援に関する記載がなかった。同年3月の参院予算委員会で、公明党の秋野公造氏はこの点を指摘。「協会けんぽが崩れると、国民皆保険も崩れる。大綱の中で検討を」と迫り、野田佳彦首相(当時)から「よく分かった」との答弁を引き出した。
その後、13年5月成立の健康保険法等改正法では、政府に対し、協会けんぽの国庫補助率について、14年度末までに検討するよう付則で規定。同年12月成立のプログラム法でも、検討の上、15年通常国会に関連法案を提出するよう定められた。この結果、社会保障と税の一体改革を裏付けとして、協会けんぽに対し国庫補助率の引き上げを含めた財政支援強化が検討されることになった。
13年の健保法等改正法では、協会けんぽが厚生労働相の委任を受けることによって、企業への立ち入り調査なども行えるようになった。それまでは傷病手当金などの不正請求があっても、協会けんぽには勤務実態などを調べる権限がなかった。このため、秋野氏が12年8月の参院社会保障と税の一体改革特別委員会で権限付与を提案していた。