5月は「図書館振興の月」である。近年、団塊の世代の退職もあって、シルバー世代を中心に利用者の増加が指摘されている。
博物館や美術館、公民館など各種社会教育施設の利用状況を調べる文部科学省の社会教育調査(現在、3年ごとに実施)によると、全国の公共図書館(学校や大学を除く)は、3274(2011年度)と、前回(08年度)から109施設増え、調査開始以来最高となった。社会教育施設の中で最も利用されているという調査結果もある。
元来、公共図書館は無料で住民に書籍などを貸し出す役割を担ってきた。かつて「無料貸本屋」との批判もあったが、資料の収集、貸し出しの重要性は今後も変わらない。
各地で、開館時間の延長や開館日の増加、インターネットでの蔵書の検索、予約システムの導入など、利用者重視の図書館改革は進んでいる。
同時に、子育て、教育、健康・医療、就業、起業など地域の課題に応じた情報提供サービスに力を入れる図書館が増えている。
子育て支援のために、読み聞かせの企画を充実したり、乳幼児を連れた保護者が気兼ねなく利用できる「赤ちゃんタイム」を設けるなど、親子に配慮するサービスを実施する図書館もある。
また、ビジネス支援として、起業や商品開発を支援するための資料を作成したり、商工会議所や県の組織と連携するなど、地域経済に貢献する試みも注目されている。
商店や個人宅をミニ図書館にして、「まちじゅう図書館」を掲げて、まちづくりの重要な柱にしたり、がんに関する図書や資料を豊富にそろえ、がん対策を推進しているところもある。
利用者からの「調査相談(レファレンス)」では、国立国会図書館が構築しているレファレンス協同データベースに参加して、住民の「調べる作業」を支援する図書館もある。インターネット上の回答と違って、図書館では文献の裏付けのある正確な情報が提供されることから、住民の情報リテラシー(情報を読み解く能力)の向上に役立つことが期待されている。
一方、地域の「情報拠点」として重要性が増す図書館だが、設置率(11年度)は町では60.1%、村では25.0%にとどまる。公民館などに設置された図書室が図書館の役割を担っているが、都道府県立図書館との連携やインターネットの活用、電子書籍の導入など、未設置地域への支援も強化しなければならない。