公明党福井県本部(石橋壮一郎代表=県議)はこのほど、越前市内で池端幸彦・同県医師会副会長を講師に招き、「地域包括ケア時代におけるこれからの医療・介護」をテーマに研修会を開催した。
池端氏は、厚生労働省から事業委託を受けた三菱UFJリサーチ&コンサルティング「地域包括ケア研究会2013」の委員の一人。以下は、公明新聞掲載の同氏の講演要旨。
人材育成、職員体制の確保・継続を
日本には「2025年問題」がある。これは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年をどう乗り切るかということ。決して遠い先ではない。
25年の日本の人口は05年比で1割、生産人口(15歳以上65歳未満)は2割減る。一方、75歳以上の高齢者は1.86倍、85歳以上では2倍に増える。後期高齢者が2000万人を超す時代がすぐそこまで来ている。加えて、一気に増える高齢者の約6割が9都道府県に集中することになる。国が第一に考えているのは、爆発的に増える、この9都道府県の高齢者対策だ。
また、地域包括ケアと在宅はセットで考えられているが、本当に高齢者を在宅で全部見れるのかというのは大きな課題だ。人口が減り、高齢者が増える中、高齢者の一人暮らし、高齢者同士の夫婦という世帯数が500万から1000万に倍増する。平均寿命から考えて80歳、85歳の一人暮らし、二人暮らしの方が本当に在宅で最期を迎えられるのだろうか。
「地域包括ケアシステム」とは、いわば“地域のマネジメント”である。地域の需要に応じて「どこに・誰と住むか」を自分で選んでいく。それが決まったら、それぞれに合った福祉や生活支援を投入する。そして、医療・介護・看護などの“網”をかけ、これをマネジメントするのが、地域包括ケアセンターであり、ケアマネジャーだ。
そして、このケアシステムを完結するために必要なのが「本人・家族の心構え」だ。心構えというのは、自分はどういう生き方をして、最後はどこでみとられたいかという意思を示すということ。これを国民一人一人が真剣に考え選ばなくてはならない時代が来ている。
一方、支援する側はそのために必要なものを全部そろえることになる。そして「規範的統合」、すなわち介護士は医療的なマインドを持ち、医師は在宅介護のセンスを磨いて互いに歩み寄り、共に考え、同じ目標に向かわせなくてはならない。
しかも、地域包括ケアは自治体がしっかりと実態把握と課題分析を行わないと成り立たない。それには全数調査によるデータが必要で、首長がどう覚悟するかが大事だ。私どもの研究会では「地域包括ケア推進室」などを市町村に設置することを提案している。市町村も「一つの企業体」と考えると、こうした動きは必要だと考える。
厚労省は病床機能の再編、「地域包括ケア病棟」の創設、在宅復帰率の目標設定などを本気で進めようとしている。予想以上に増えた高度急性期病床(患者7人に対して看護師1人を配置する重症入院患者向けの病床)を減らし、地域に密着した病床を増やす「ワイングラス型からヤクルト型」をめざしているのはその一例で、これによって地域包括ケアシステムを推進しようとしているのだ。
最後に私の要望を述べたい。ある県の地域包括・在宅介護支援センターでは、在宅支援・認知症対策・介護予防プランなどに携わる人材が少なく、苦しんでいる。
民間へ丸投げしている他の自治体もうまくいっていない。皆さんには各議会で、地域包括支援に関わる人材育成と予算がどうなっているかを問うてほしい。これからが大事な時期なので、短期間でこのシステムを支える行政の職員が代わらないよう、腰を据えてやれるようにしてほしい。