「人口減少による地方自治体の消滅は、行政サービスがその地域からなくなるということ。政治として対応すべき重要な政治課題だ」
公明党の井上義久幹事長は、先週開催された党人口減少問題対策本部の初会合でこう訴えた。
地方自治体の消滅は、有識者らでつくる日本創成会議・人口減少問題検討分科会が先月発表した推計で明らかにされた。2040年に896の地方自治体で子どもを産む中心的な世代である20~39歳の若年女性の数が半減し、最終的にその地方自治体は消滅する可能性があるという。
896という数は地方自治体の半数を超えているため社会に衝撃を与えている。地方自治体が消滅すると、社会の安全確保さえ困難になり、経済の活力低下、社会保障システムの機能不全につながるからだ。
日本創成会議座長の増田寛也元総務相は、対策本部の初会合で「人口減少社会は避けられない。しかし、人口“急減”社会だけは英知を集めて避け、成熟社会に移行させる必要がある」と強調した。
急減を避けるためには出生率の向上や、地方の活性化が主要テーマになる。消滅を回避する特効薬は見当たらないが、あらゆる政策を総動員して解決すべきだ。
ただ、地方自治体によって、出生率向上を優先すべきか、人口の流出防止が喫緊の課題なのか事情は異なる。出生率アップには子育て支援策を充実させる必要がある。若者が都市部に移住する地域では、雇用の場を増やさなければならない。各地方自治体の実像や取り組む課題を、まず明らかにしてほしい。
また、人口減少の速度も市町村によって一律ではないため、地方の視点と全国的な視野を合わせた政策立案が必要になる。例えば、大都市圏はこれから高齢者人口が増えるが、すでに高齢者が減少している地方もある。そのため近い将来、地方で余剰となる医療・介護施設を日本全体でどう活用するか、地方と国の双方で知恵を出し合わないと解決は難しい。
また、地方の大学に地域活性化の役割を期待する声も強い。共同研究による地場産業の振興や、大学での研究成果を利用した起業など、大学と企業の連携には大きな可能性がある。高等教育政策の中で、地方の大学の独自性を認める施策を検討するなど、国の関与も求められる。
国会議員と地方議員の連携で現場からの政策提言に取り組む公明党の役割は大きい。