子どもの貧困対策の基本方針となる大綱づくりが大詰めを迎えています。
大綱は、今年1月に施行された「子どもの貧困対策推進法」で、政府に策定が義務付けられている。内閣府の有識者検討会が先月まとめた意見を踏まえ、近く政府・与党内での調整を経て閣議決定される予定。
厚生労働省によれば、18歳未満の子どもの約6人に1人は、国民の標準的所得の半分に満たない世帯で暮らしている。
背景には、非正規雇用者の増加に加え、シングルマザーなど「ひとり親家庭」の困窮が進んでいる問題が指摘されている。
こうした家庭では、経済的事情で子どもが進学を断念したり、高度な職業技術を磨く機会に恵まれないケースも少なくない。その結果、安定した仕事に就けず、社会人になっても困窮した生活から抜け出せないことも珍しくない。親から子への“貧困の連鎖”を断ち切るためには、総合的な取り組みが求められる。
教育支援では、就学前に教育を受けられるかどうかが成人後の貧困に大きく影響しているため、低所得世帯の幼児教育の無償化の拡充が提案された。今年4月から始まった高校生向けの給付型奨学金の拡充や、大学生向けの貸与型奨学金の返還ルールの柔軟化を求める意見も出されている。
また、生活保護世帯などの子どもは学習塾に通えないこともあって、学校の授業内容を十分に理解できずに悩むことも多いため、学習支援を重視する提言も出された。
既に、大学生のボランティアらが生活保護世帯の子どもに勉強を教える取り組みを行い、高校進学率を大幅に向上させている自治体もある。参考になる事例である。
有識者検討会は、ひとり親の自立支援プログラムの策定やハローワークとの連携などを提言している。こうした取り組みも着実に実行して、収入が増加するようにしてほしい。
家庭の貧困によって不利な条件に置かれている子どもたちが希望を持って社会の担い手に育つためには、どのような支援が必要なのか。政府・与党は実効性ある結論を出すべきである。