4月に国の「子ども・子育て支援新制度」がスタートして3カ月。全国で認定こども園や小規模保育の施設を作るなど、保育の受け皿を増やす取り組みが進んでいます。新制度を活用した待機児童の解消や保育サービスの充実に向けた動きを紹介します。
小規模保育など“受け皿”拡大
神戸市 待機児童が10分の1に減少
「目が行き届き、保護者に好評」
午後3時のおやつの時間。神戸市垂水区の小規模保育所「花の森」(谷村木ノ実園長)では、お昼寝から起きた子どもたちがパンケーキを頬張り、「おいしい!」と言いながら元気に駆け回っています。
新制度で新設・拡充するサービスマンションの一室を利用した花の森は、今年4月に新設された0~2歳児を対象とした小規模保育所で、現在、11人が在籍し、保育士3人で対応しています。女性保育士は「小規模保育は定員が少ない分、子どもに目が行き届き、安全も確保しやすく、保護者からも好評です」と話しています。
国は保育所の待機児童解消へ、2013年度から17年度までで約40万人分の保育の受け皿整備をめざしています。新制度は、昨年4月の消費税率引き上げで確保した財源のうち約5100億円を投入し、今年度中に約8万人分の保育の受け皿を増やします。
その取り組みの柱となるのが、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ「認定こども園」の拡充と、花の森のようなこれまで認可外だった定員6~19人以下の小規模保育所などを認可する「地域型保育」の新設です。
神戸市の今年4月1日時点の待機児童数は13人で、昨年同時期の123人から大きく減らすことができました。これは新制度の導入を見越し、昨年度、0~5歳児の2500人分の保育の受け皿づくりに取り組んだ結果です。とりわけ同市は0~2歳児の待機児童が全体の6割を占めていたことから、小規模保育所を37カ所から1年で61カ所へと集中的に増やしました。
市子育て支援部整備担当課の神谷俊幸課長は「待機児童が多い都市部では保育所を設置する土地がありません。小規模保育所が新制度で認可されるようになり、待機児童解消の追い風になっています」と効果を語っています。市は今後の需要予測に基づき今年度、さらに小規模保育所を20カ所増やすなど約1200人分の受け皿を整備し、18年4月までに待機児童の解消をめざす計画です。
待機児童の解消に力を入れてきた神戸市議会公明党の北川道夫幹事長と沖久正留、高瀬勝也、堂下豊史の各議員は23日、花の森を訪れ、同所を運営する社会福祉法人「みかり会」の谷村誠理事長と懇談しました。
谷村理事長は、国の新制度や市の取り組みに理解を示し、「今後は小規模保育所を卒園した3歳児を受け入れる連携保育施設の充実がカギです」と、保育所定員に弾力を持たせる必要性などを述べていました。
病児保育に年4万円の助成。障がい児保育も低料金で
子ども・子育て支援新制度の開始に合わせ、各地の自治体や事業者も新しい取り組みを進めています。
居宅訪問型の病児・病後児保育に対して、東京都の北区や文京区は今年度から助成事業をスタート。両区とも、児童1人当たり年間4万円を上限に保育利用料を助成します。助成を受けるには、サービス利用後に行政に申請することが必要です。
病気にかかった子どもは園内感染を防ぐなどの理由で保育園に預けられません。助成制度の新設は、これまで会社を休んで子どもを看病しなければならなかったお母さんたちに、とても喜ばれています。
また、新制度で新しく始まった「地域型保育」では、従来は認可外だった家庭的保育(保育ママ、定員5人以下)や居宅訪問型サービスも認可できるようになっています。
NPO法人フローレンス(東京都千代田区)では、今年度から障がい児の訪問保育をスタートさせました。資格を持つ看護師などがベビーシッターとして保育を行う同事業は、新制度がなければ1カ月で数十万円が必要と見積もられていました。しかし、新制度で認可されたことで一般の保育園と同様の料金で利用できるようになり、事業化されました。
子ども・子育て支援新制度の実施で、きめ細かなサービスが展開できるようになったことについて、フローレンス側は「制度のはざまにいて、従来はサービスを届けられなかった子どもたちを支える制度ができたことは、とても素晴らしいこと」と話しています。