ひとり親家庭への経済的支援の要となっている児童扶養手当。
政府が11月26日に取りまとめた「1億総活躍社会」に向けた緊急対策では、公明党の主張が反映され、同手当の拡充が盛り込まれた。
公明党は貧困に直面するひとり親家庭の切実な声を代弁し、特に2人目以降の子どもに対する支給額を見直すよう求めている。ひとり親家庭の現状を追った。
『「子どもには我慢ばかりで…」』
東京都内に住むシングルマザーの桑田信子さん(46)=仮名=は、高校1年の長女(15)と中学2年の長男(14)との3人暮らし。家庭内暴力を振るう夫と、10年ほど前に別れた。
長男はダウン症を抱え、手が離せない。それでも生活費を捻出するため、以前は子どもたちを保育園に預け、パートに出ていた。
しかし、程なくうつ病を発症。その後は、職を転々としたが、長続きせず、ここ7年くらいはきちんと職に就けていない。今も薬に頼る生活が続く。
現在、桑田さん宅の1カ月の収入は19万円弱、年収にして200万円余り。主な収入源は、養育費(月6万円)、長男の障がい関連手当(月約7万円)、児童扶養手当(月4万6000円)の三つ。ここから毎月、住居費5万円などの経費を差し引くと、生活はひっ迫している。
「娘を塾に通わせてあげられたら……」と桑田さん。長女がこの春から、進学校で知られる都立高校に通うことになった。大学進学をめざすクラスメートたちは塾通いが当たり前。だが、桑田さん宅にそんな余裕はない。周りから落ちこぼれないようにと、必死で机に向かう長女の姿が胸に迫ってくるという。
「子どもたちには我慢を強いてばかり。貧困生活は惨めだ」。桑田さんは顔を伏せた。
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桑田さんをはじめとするひとり親家庭が今、切実に望んでいるのが、“命綱”となっている児童扶養手当の第2子以降の支給増額だ。現行では、第1子に月額で最大4万2000円が支給される一方、第2子には5000円、第3子以降には3000円がそれぞれ加算されるにとどまっている。
厚生労働省の調査によると、平均的な所得の半分を下回る世帯の割合、いわゆる貧困率は、ひとり親家庭の場合、54・6%(12年)に上る。その要因の一つとして、研究者や支援団体らが強調するのが、この複数子に対する児童扶養手当の加算額の低さ。現状では、ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するという、児童扶養手当制度そのものの目的を果たせていないのではないかという指摘だ。
この点について、11月10日の衆院予算委員会で、公明党の石田祝稔政務調査会長が「第1子と第2子の差が大きい」と訴え、厚労相から「年末までに加算額の拡充も含めて検討したい」との考えを引き出した。
同19日に行われた党厚生労働部会(部会長=古屋範子副代表)と内閣部会(佐藤茂樹部会長=衆院議員)の合同会議で、子どもの貧困対策に取り組む一般財団法人「あすのば」の小河光治代表理事は、「子どもに寄り添う公明党は心強い」と述べ、第2子以降の加算増額などを要望した。古屋副代表は「全力で取り組む」と応じた。
公明党はこれまでも、子どもの貧困対策に取り組んできた。例えば、10年8月から母子家庭と同様、父子家庭にも児童扶養手当を支給できるようにした。また、子どもが公的年金を受給する祖父母と暮らす場合、児童扶養手当の対象外だったが、14年12月からは年金額が同手当の額を下回る場合に、その差額分の児童扶養手当を受給できるようにした。
【児童扶養手当】 離婚や死別によって、ひとり親となった家庭などで暮らす子どものために国から支給される手当。受給対象期間は子どもが18歳になった年度末(3月31日)まで。一定の障がいのある場合は20歳未満まで。受給者は年々増加し、2013年度末で約107万人。