以下、茨城県議会での私の一般質問の、第三章にあたる「震災後の中小企業支援について」の質問と答弁を掲載します。
本質問は、どちらかと言えば、融資審査の現状と課題を訴える内容になっているため、県としては回答しずらい者であったと感じます。県の商工労働部は審査機関ではなく、茨城県信用保証協会を指導したり、各金融機関に要請するという立場ですから当然のことです。
それでも一般質問の場でお話ししたかったもので、この質問を聞いて下さった経営者の共感が得られればこれ以上はありません。まだまだ実態をしらないと指摘頂くとすれば、更に現場に走りたいと存じます。
その意味で、本質議は、あまりかみ合ったとは言えませんが、商工労働部長の回答は、現在の県施策の最新のものとして評価するものと考えます。あとは実態次第なのが、経営の現実です。
それでは、下記に掲載します。
3.震災後の中小企業支援について
次に、震災後の中小企業支援についてお伺いします。
今回の震災で、長年かけて築いた設備や店舗等を破壊され失った方、また、自身の被害は軽度ではあるが、取引先が多大な被害を蒙り、商品流通や資金決済が滞った中小企業や個人事業者が数多くおられたと伺っております。そのような中、県では、震災直後から「東日本大震災復興緊急融資」を創設し、早くから地元企業の救済にあたって頂きました。
この復興緊急融資は、8月22日の時点で当初の保証承諾枠750億円を突破しており、今議会提出の保証枠1,600億円への増額は、事業者の期待に応えるものと考えます。8月末の保証承諾件数は7,000件に迫り、金額も一件あたり平均約1,200万円と比較的資金繰りに余裕を持たせた資金手当ての金額とも思われます。
その上で、先日、保証申し込みの取下げ、いわゆる謝絶の状況をお聞きしたところ、6月末での申し込み5,070件中449件、8.9%が謝絶となっておりました。このうち、県がサンプリングした謝絶100件を見ると、謝絶の事由が返済困難とするものが35件、そしてその後の交渉により18件は再申請後承諾、最終的に17件が謝絶となったとの事でした。これは、申込み件数に換算しますと2%の謝絶率になるとのお話でした。
では、2%とは如何なる水準かと言えば、他の一般的な融資への保証等を含む謝絶率2%と近似値であるということです。この数字に復興緊急の特別性が見られません。
以上を踏まえまして、あえてお伺い致します。
一件あたりの平均保証金額1,200万円は、融資限度額8,000万円に比べて低位です。他の保証制度と別枠ですから、もう少し大きな金額であっても良いと考えられます。また、本当に資金繰りに困っている事業者にとってみれば、50万円とか、100万円といった少額の保証応諾が増えることが、広く使い勝手の良い緊急融資ではないかとも考えられます。平均値でありますので、はっきりとは分かりませんが、要は、資金繰りに窮し、藁をもすがる思いの零細中小企業事業者の要請に十分応えているかどうかです。
金額は、希望された額とは限らず返済能力に応じたものでしょう。それは妥当です。その上で問いたい。審査は、将来の収支を厳しく見るのでしょうか。それとも期待を込めて再建事業計画に信頼をおくのでしょうか。総借入額が年商を超える場合、この点だけで謝絶に繋がっていないでしょうか。過去の細かな債務の不履行等を厳しすぎる目で見てはいないでしょうか。企業格付け評価に捉われすぎてはいないでしょうか。
経営は人なりですが、経営者資質をどう見ているのでしょうか。震災による資金繰り悪化は、いわゆる想定の範囲を大きく超えています。
緊急とは、今を生き抜くために必要不可分な資金手当てを行うものと考えます。言うまでもなく中小企業育成は、県内経済の発展はもちろん雇用確保においても喫緊の課題です。
県として、これまで以上に資金繰りに苦しむ事業者に寄り添い、一件、一件の保証申し込み内容に精通して、積極的で機動的な融資資金供給をお願いしたく思います。
そこで、東日本大震災復興緊急融資の運用について商工労働部長のご所見をお伺い致します。
なお、農林水産部所管の農家に対するつなぎ融資につきましても同様であります。先日、茨城県農業信用基金協会保証から、国の実質的な保証による融資対象者の門戸拡大が図られました。これ以降も零細な農家の資金繰りの実態やつなぎ融資の謝絶等の動向を十分把握願いたいと存じます。
横山商工労働部長
震災後の中小企業支援について、お答えいたします。
震災による建物や設備の損壊に加え、サプライチェーンの寸断などによる受注の減少や、福島代位原子力発電所の事故による観光産業等への風評被害などにより、多くの県内中小企業が、厳しい経営を強いられております。
このため、県におきましては、新たな保証制度を活用し、さらに信用保証料の補助を行うなど、より使いやすい「東日本大震災復興緊急融資」を創設し、企業の資金繰りを支援しているところでございます。
本融資の実施にあたりましては、信用保証協会や金融機関では、これまでの融資の審査に加え、取引状況や経営者の熱意など、企業の経営実態や特性についても考慮に入れ、より前向きな審査に努めているほか、中小企業金融円滑化法に基づき期間延長や返済猶予など、返済条件を見直したうえで、より弾力的に対応しているものと考えております。
しかしながら、既往債務が大きな負担となって新規の資金調達が困難となる、いわゆる二重債務に苦しむ企業があることも事実でございます。
このため、このような債権の買取りを目的とした「(仮称)茨城県産業復興機構」を設立することとし、今年度分として、50億円までの買取りが可能になるよう、その出資に係る予算をお願いしたところでございます。
具体的には、先ず、最初に第三者機関である「中小企業再生支援機構」が債権について買取るかどうかや価格について審査いたします。次に産業復興機構がその結果に基づき、債権を買い取るとともに、請求を一定期間凍結いたします。企業は既往債務の返済が凍結されることで、新たな資金調達が可能になるという仕組みになっております。
県といたしましては、金融機関などに対し、これらの対策を効果的に組み合わせることで、積極的な融資を行うよう要請するとともに、融資のための資金や債券買取の資金が不足しないよう十分に注意し、中小企業の円滑な資金調達を支援してまいります。