先日、東日本大震災で被災し、自宅が「大規模半壊」となった方から、住宅ローン返済についてご相談がありました。
その方は、年齢や家族環境から自宅の自宅戻ることは諦め、自宅を取り壊したそうです。自宅には、数百万円のローンが残りましたが、現在は返済の目途が立ちません。何よりも今生きることへ注力しなければならないからです。
その方に対する銀行の対応は、私には理解できません。銀行は、まず返済口座に入金になった災害支援金で返済して欲しいと求めたそうです。その上に、保証人の追加を求めたとの事。その方には、嫁に出した娘さんがいるだけで、なかなか保証人になって欲しいとは言えないと訴えます。
まったく、その通りだと考えます。
まず、支援金は、生活再建のためのもので、ローンの一括返済を求めることは道義上からも許されません。
次いで、「二重ローン」の案件として、債務の免除を想定して対応すべきではないでしょうか。
その方は、もう住まない自宅は処分したいとも言っていますから、一般法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会へ案件持込により弁護士に対応処理を委ねるべきです。
または、銀行は更なる約定返済元金ゼロ円=利息のみ返済を提案し、意思疎通と納得の上で一括返済要求を取り下げるべきです。併せて、担保の任意処分に協力することが求められます。
更に、後日の紛議の原因となる保証人追加は、無理なく実態に合わせるべきで、本件では追加に馴染まないと考えます。
ともかくも、銀行はプロとしてあらゆる智恵を駆使して顧客保護に奔走すべきです。意思の疎通が不冴えなのは顧客の理解不足は当たり前でやむなしとして対応して欲しいと願います。
さて、前述の個人版私的整理ガイドラインの利用は、まったく芳しくありません。ある意味生活再建の切り札のように期待されていますから、とても残念な内容です。
8月22日から10月7日までのお問合せ件数は、受付件数1,152件(うち一般的な制度についての照会436件、個別のご相談716件)程度です。
また、登録専門家(弁護士等)を照会した件数は、117件。
債務整理開始の申し出件数は、全体で16件です。うち茨城県は、0件。この0件は、余りにも理解できない水準です。
つまり、このガイドラインに不備があるのか、運用に不備があるのか、いずれにしても使い勝手の悪い制度であることに間違いありません。
やはり、適用用件が非現実的です。「既往債務が返済できない、または近い将来返済できないことが確実」のについて、近い将来を6ケ月としている点です。
また、使い勝手は、書類の煩雑さや地震保険の処分など生活の実態を理解しない対応だからです。
更に、委員会の人員不足から、事務が進まない現実もあるようです。
もともと二重ローン問題は、自己破産債務整理手法を踏襲していますから、長期に構造的に破産するほどの困窮をした人と突然の津波等によって資産価値と生活の糧を失い、現在は行政の言っての保護下にある方と同一にはできないと思います。
それは、かつて銀行を救済したときのような理屈を越えた救済策として運用すべきです。金融機関も債権の消去が合法的に実行され資本を毀損しないものなら積極的に対応すべきだと考えます。
いずれにしても、利用されない制度と組織は無駄ですから、実効性を高める指揮が求められます。