【義援金】世帯分離による支給可否の接点を考える。

 あらためて東日本大震災にかかる義援金にかかる「世帯」について考えたいと思います。
 これは茨城県内市町村でも、一部差異のある対応になっていることから、県庁保健福祉部福祉指導課とやりとりをしながら考察したものです。
 申し訳けありませんが、結論というわけではなく、対応の差異に現場とどう対応するのかを検討するためのものです。
1.公明新聞の記事
 
 8月27日付けの公明新聞には、岩手県が被災住民に対する義援金支給について、その対応を変更した旨の記事が掲載されました。
 「岩手県では、これまで、1戸に複数の世帯が生活していた場合でも、光熱水費の契約者が別など、生計が別であることを証明しなければ義援金は1世帯分しか支給されなかった。一方で、国の被災者生活再建支援金は住民票に基づき支給され、同じく被災した宮城県では、住民票が別であれば義援金も世帯分支給されていた」「これを受け、7月28日の参院厚生労働委員会で山本博司氏(公明党)が厚労省に改善を主張したほか、・・・・・とあります。
2.岩手県のホームページ
 
 岩手県のホームページの「被災者への義援金の交付について」の項では、同県の配分委員会のーによる配分方針の協議した上でとして、住家損壊見舞金の交付を受ける方(申請者)を、「世帯主です。(又は、被災当時に同居していた世帯員であって、これに代わるものと市町村が認める方です)」とし、更に「※」を付けて、「※1戸の住宅に複数世帯が存在する場合は、被災当時に各世帯が別々に住民登録されている場合に限り、各世帯が交付を受けられます。」と掲載しています。
3.岩手県釜石市のホームページ
 釜石市のホームページの住家損壊等見舞金では、まず、生活の本拠と使用していたことや罹災証が必要なことを記載したのちに、
 当初は、・1戸の住宅に複数世帯が居住している場合は、代表の1世帯主への交付になります。
・1つの建物に複数戸の住宅が存在するとして交付申請された場合は、市町村は当該事実を証明する資料(住宅地図や電気、水道、ガスが戸数文けいやくされた実績があることを証する領収書、民生委員の証明等)を求めることがあります。
 とされていました。
 しかし、9月9日更新として以下の変更が掲載されています。
 ※県の交付要領の改正に伴い、3月11日時点で1戸の住宅に複数世帯の住民登録がなされていた場合に
限り例外的な取扱いとして、複数の世帯に交付できることになりました。
 と変更更新しています。
4.宮城県仙台市のホームページ
 仙台市のホームページの災害義援金の項では、その他の留意事項として、「宮城県からの取扱変更通知に基づき、住家被害における「世帯」の判断は、住民票により行います。例えば、同一住居に住民票上二世帯が同居している場合は、それぞれの世帯で申請できます。としています。
 なお、宮城県のホームページには、配分先に「世帯」の考え方は記載がないと思われます。
5.被災者生活支援法の条文(抜き書き)
 第二章 被災者生活再建支援金の支給
 第三条 都道府県は、当該都道府県の区域内において被災世帯となった世帯の世帯主に対し、当該世帯主の申請に基づき、被災者生活支援金の支給を行うものとする。
 なお、この条文をここに書くことは、義援金の支給対象を被災者生活再建支援金と同一と解してのことなので異論があるかもしれません。つまり、義援金は、日赤に寄付されたもの等の県宛て分配金や県等に寄せられた金員であり、各県の「配分委員会」等に委任していることから、支給対象の基本ではあるものの同一とは言えないかもしれません。
 そのうえで、「被災世帯となった世帯の世帯主に対して」を純然な形式要件と捉えれば、被災世帯カウントの段階や罹災証明発行手続きの中で、相当の同一性や共通性があると解するからです。
 
 私としては、この文言が、形式要件として存して世帯分離に基づく、住民票の世帯主1を義援金支給1とする根拠と解しています。そして、後述しますが、実質要件とは何かを加味したく思います。
6.県内A市
 A市のホームページには、義援金の項に、「義援金とは、被災地に募金、支援していただいた資金です。国(日本赤十字社等)、茨城県、A市に寄せられた義援金を「全壊」「半壊」(大規模半壊を含む)の被害を受けた世帯に対して、配分しています。」と義援金について述べ、対象については、「住宅が全壊・半壊(大規模半壊を含む)した世帯とのみ掲載しています。
 この市に対して、支給対象の世帯については、前掲の被災者生活支援法の第三条の「世帯の世帯主」について、「この条文により、住民票上での世帯主それぞれに支給する判断を求められないか」と問いかけると、「世帯の定義は、同支援法の制度の事務の手引きの中に、『社会生活上の単位を世帯とする』とあるので、住民票上の世帯分離形式に囚われず、実態上での世帯を市として検証して対応するとの回答がありました。
7.県内B市(A市隣接)
 B市のホームページには、特段、「世帯」に対する記載はありません。しかしながら、支給対象の世帯については、住民票上の世帯主に対応して判断しているとされています。
8.7月28日参議院厚生労働委員会における質疑
○山本博司君 
 義援金に関しまして、一点御質問をさせていただきたいと思います。
 一点、今回のケース、支給基準の不公平感ということで御質問をしたい部分でございます。
 これは岩手県のケースでございますけれども、震災前は一戸建ての二階に住んで、一階に両親、二世帯住宅でございました。自宅は津波で全壊をして、家計は大変苦しい中、こうした形での義援金、また生活支援金ということであるわけですけれども、一階も二階も住民票は別々でございます。また、光熱水費も公共料金も半額ずつ負担をしていると、こういう状況で、被災者生活支援金に関しましては二世帯分受けられたわけでございますけれども、義援金は一世帯のみ、母親の世帯のみでございました。ところが、宮城県では住民票が別々であれば各世帯支給をされております。ですので、県によってこの支給基準が違いがあるということでございまして、被災地に大変不公平感が広がっているわけでございます。
 生活実態が二世帯、こう証明されれば本来であれば配分されるべきと、こう考えるわけですけれども、統一見解も含めた厚労省の見解をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(清水美智夫君) 
 日赤等の義援金につきましては、今回初めて厚生労働省、協力したものでございます。
 その理由でございますが、今回の震災被害が広域にわたっておりまして複数県の間での調整が必要であったと、こういう今回特有の事情がございまして、日赤等から要請を受けまして、都道府県間の配分に関して私どもお手伝いしたというものでございます。
 元来、義援金は、日赤経由のものに限られずに、他の団体経由のものでございますとか県への直接のものなどがございまして、各県におかれましては、それらをまとめて、各々の義援金配分委員会を設置して、その責任と考え方の下に被災者に配付されているところと承知してございます。各県におかれましては、その地域の実情に応じ、また、各県の過去の災害の義援金の配付実績などを踏まえて対応されていると承知してございます。
 義援金の個々具体的な配付につきましてはこのような実態となっておりまして、厚生労働省という立場は都道府県に指示をするような立場に置かれてございません。私どもとして、統一基準といったものを作ることはなかなか難しいのではないかと思っております。
 ただ、仮にでございますけれども、岩手県の方から日赤に対しまして、宮城県あるいは福島県と同様の取扱いを行いたいという、仮にそういうお申出があったとするならば、その分、義援金配分の増額をというお求めがあった場合におきましては、現段階でありますれば、まだ日赤には若干の調整財源がございます。したがいまして、日赤は県からの相談に応ずるのではないかなというふうに思っておるところでございます。
 したがいまして、私といたしましては、本日、この場で先生からこういう御指摘があったということを岩手県庁それから日赤に伝えてまいりたいというふうに考えてございます。
○山本博司君 是非とも、この義援金の精神からいって、やはり不平等感のないような形で是非とも取り組んでいただきたいと思う次第でございます。
9.所見等
 ①本件のような義援金の支給対象について、県庁保健福祉部福祉指導課の対応方針は、まず、一義的に世帯は住民票による世帯主単位(例えば同一敷地や同一建物の二世代住宅等で親子で別世帯主としているなど=世帯分離)それぞれ支給対象とする。更に、世帯分離されていなくとも実質的に世帯として別生計等分離しているものも支給対象とするとの回答でした。
 ②その上で、上記の二つのパターンは義援金資金の目的に違うものでなく、生活再建支援として矛盾しない。つまり、現に世帯分離していようと手続き未済でも、別の二通りに支給するものではないと解している。
 ③県としては、市町村から提出された義援金支給の要件に、特段の悪意のあるものと判ぜられる場合を除いて殆どすべて支給対象としている。県として異論を挟むことはない。
 ④ついては、実質的に世帯が分離されている先をも支給対象としていることは、本来の義援金支給対象の実態に見合うものであり、形式要件より義援金の趣旨に適応しているのではないか。しかし、このことが住民票の世帯主単位支給を妨げるものではない。
 ⑤市町村役場の現場の判断に委ねられる世帯管理の実際は、個々の事情を窓口や市町村がきめ細かく汲み取るべきであり、世帯をどう扱うかという議論では対応しにくい。
 ⑥実質的な事象から世帯分離に義援金を支給することは、単に住民票による世帯分離をしていることで支給される形と分離していない世帯の不公平感をカバーすることとも解釈できる。やはり、世帯分離は形式も実態も同一であるということが前提であると考えます。
 以上を、義援金の支給を捉えて考察してみました。
 私は、要は義援金の趣旨に則った支給が実行されることです。そこには作為も不作為もありません。義援金をもらうことが得になるからではないと考えます。そのうえで、更に市民県民の納得性のある施策や相談への対応を心掛けていきたいと思います。