先日ご相談頂きました事案に、「昨年の震災で隣地の擁壁が大きく損傷しました。次の地震では倒壊するのではと心配です。防止措置はありますか」とのことでした。
この事案の法的な考え方を損害賠償の観点から整理してみると、次のようになると考えられます。少し言葉足らずではありますが、記載してみます。
① 大きな地震(震度6程度以上)とほぼ同時に、震災を原因とした擁壁や建物の倒壊による損害賠償は発生しないということが原則です。大きな自然災害を人知を超えたものとして責任の所在を人に求められない゜不可抗力」という立場のようです。
② しかし、その後の、地震により東海の危険が発生し、かつ危険防止措置をとることが可能であるにも関わらず、一般的に考えられる対策可能な期間に危険防止措置を取らずに放置していた場合は、たとえ経済的な困難などの事情があっても、倒壊による二次災害の加害者として、倒壊物の管理者は、全額の損害賠償責任が発生するというものです。
③ そして、倒壊しそうなことを隣家として「知りながら」、倒壊しそうな家等の所有者が「知らない」場合で、かつ保全措置の要請をしなかった場合は、操法の過失割合を案分することになるようです。
④ 逆に、倒壊しそうなことを知る所有者が、そま危険性を「知りながら」危険防止措置をとらないために、隣家として危険性が生じているばあいは、危険防止措置をとることへの「要求」や「訴訟」、「仮処分」ができることになります。
⑤ また、隣家として、緊急性が高いにも関わらず連絡がとれない等のために、自ら危険性防止の必要最小限度の措置をした場合は、その費用を請求することができます。ただし、危険性の判断は専門家の判断によるべきです。
民法は、709条の損害賠償の要件として「故意または過失」としています。故意とはワザと、過失とはミスというは分かりやすいでしょう。これを震災にも当てはめるわけです。
そして、それとは別に717条の工作物責任をもって、工作物の占有者・所有者の責任を一般の不法行為より加重しています。
よって、工作物の設置北は保存について「瑕疵」があれば「過失」とみて、損害発生をもって賠償責任を問うというものです。
これらは宮城県沖地震の際に、随分議論され判例も明確であり、一般的な考え方として定着しているものです。
東日本大震災より11ケ月を経過した現在は、危険性ある工作物等を少輔占有しているものに大きな責任がある言わざる負えないというものです。
私たちは、震災という不可抗力な力で破壊された私有物たる土地等についても、何らかの支援を実施し、共同体である隣家との紛議の発生を避けたいと願っています。
しかし、ここが一番難しい「税金たる公」を「私有たる財産」に投入する問題になります。
公平性や公共性をいかに担保していくか、そして必ずしも復旧する資力を持つ方ばかりでない現実をどう捉えるのかを呻吟しながら、個別の対応と全体の調和を検討して参りたいと思います。