【石井政調会長】民主党は、潔く新年金制度創設を断念すべきだ。

 GW明けの国会論戦が始まりました。
 社会保障と税の一体改革を掲げる野田政権と対峙する公明党は、国会論戦を通して民主党の政権担当能力の欠如を明らかにしていくものです。
 その意味で、5月8日の本会議における石井啓一公明党政調会長(茨城県代表・衆議院議員)の質問は、公明党の主張の基調をなすものです。
 特に、社会保障の全体像を示さない野田政権の消費税増税路線は、年金改革への対応を見ても対峙せざる負えません。
 以下、本会議における石井政調会長の質問要旨を掲載します。
 【問責決議への対応】
 参院において田中直紀防衛相および前田武志国土交通相に対する問責決議が可決された。2閣僚は、言動などから閣僚として不適格であり、問責に値することは明白だ。任命権者たる野田佳彦首相は速やかに問責2閣僚を交代させるべきだ。
 【衆院選公約との整合性】
 民主党は、2009年の衆院選で「4年間、消費税を上げない」と公言したにもかかわらず、実行しようとしている。
 野田首相は、「消費税率引き上げの実施は衆院任期終了後であるから、その前に国民に信を問えば問題ない」と強弁している。こじつけ以外の何ものでもない。(首相は)消費税率引き上げは衆院選の公約には全く反していない、それを理解しない有権者が悪いとでも言うのか。
 【一体改革に関する5条件】
 公明党は、社会保障と税の一体改革の前提条件として、「5条件」を挙げてきた。
 第1に社会保障の機能強化の具体化。第2に景気の回復。第3に行政改革および行政の無駄排除の徹底。第4に消費税の使途は、社会保障に限定。第5に消費税のみならず税制全体の改革だ。
 まず、社会保障については、改革の全体像が示されていない。
 公明党は、国民一人一人が、どのような社会保障のサービスが受けられるのかについて、まずは国民的な合意を得る。その上で、必要な費用を税や保険料、あるいは自己負担で、どう賄うのかという議論の順序で進めるべきだと、一貫して主張してきた。
 しかし、年金一つ取っても、最低保障年金の創設をはじめとする民主党の年金抜本改革の具体案は、結局明らかにされず、来年の通常国会に法案を提出するとの一点張りだ。
 高齢者医療制度の見直しに関する法案も、いまだ国会に提出されていない。社会保障の柱の将来像が全く示されていない。これで国民的な合意が得られるのか。「社会保障と税の一体改革」と言いながら、社会保障の議論が不十分で、完全に「増税先行」の議論になっている。
 現状の政府・与党の対応では、一体改革、消費税増税を国民に求める大前提が整っていない。また、整える努力を民主党政権は怠ってきたと言わざるを得ない。
 【年金に関する総論】
 今般の一体改革で政府が提案する年金関連法案は、自公政権時代に既に提案されていた被用者年金の一元化や短時間労働者の厚生年金の適用拡大、公明党が主張してきた低所得者に対する基礎年金加算制度、受給資格期間の短縮など、現行制度の改善が主な柱となっている。
 民主党は野党時代、現行年金制度は破綻しているとさんざん批判し、抜本改革を声高に叫んできた。本来、現行制度をベースにした機能強化という選択肢はなかったはずだ。
 それにもかかわらず、抜本改革を先送りして現行制度の改善を行うのは、民主党が訴えてきた年金制度の抜本改革は、普天間基地移設問題のように、全く具体案のない幻想だったということであり、年金改革は、結局、現行制度をベースに改善を加えるしかないということを政府自らが認めたことに他ならない。
 まずは現行年金制度に対する認識について首相の答弁を求める。
 【年金機能強化法案】
 産休期間中の保険料免除措置について伺う。次世代育成支援の観点から、現行の育児休業期間中の保険料免除措置を産休期間中にも拡大することに異論はない。一方、国民年金の方への対応は置き去りにされたままだ。
 公明党は国民年金についても、まずは育児休業期間中について夫婦どちらか一方の保険料を免除するなどの措置を検討すべきだと考えている。全ての制度の一元化をめざす民主党政権ならば、なおさら国民年金についても対応策を検討すべきではないか。
 【被用者年金一元化法案】
 本法案の中身は、2007年に自公政権で提出した法案とほぼ同様の内容だ。
 しかし、当時野党第1党であった民主党が、国民年金を含めた年金制度全体の一元化を主張し猛反発する中で、当時の政府案は審議未了、廃案となった。
 当時、民主党が賛成していれば、被用者年金の一元化は10年の4月から実施できていたはずだ。官民格差の是正を遅らせてきた責任をどのように認識しているのか、なぜ今になって当時反対していたのと同様の内容の法案を提出するのか、首相の説明を求める。
 【結びに】
 民主党の新年金制度は、実現性が乏しいことは明白だ。
 政権交代後、一向に進まない具体案づくりを見ても、年金抜本改革など初めからやる気がなかったと言わざるを得ない。併せて、これまで抜本改革の幻想を振りまき、真っ当な年金改革の議論を遅らせてきた責任は極めて重い。
 潔く、民主党が掲げる「新年金制度の創設」は、断念すべきだ。
 『首相答弁要旨』
 一、(消費税の引き上げについて)真意が国民に十分理解されていない点は真摯に受け止め、反省する。
 一、(現行年金制度について)自公政権の制度の持続可能性を高める努力は評価する。また2009年の財政検証でも、将来にわたり年金財政の給付と負担の均衡が図られると確認されている。
 一、(被用者年金一元化法案について)民主党所属の議員から個別の問題点を指摘したことはあるが、党として反対はしていない。