確実に老朽化する社会資本に対して、的確な維持管理や長寿命化、更に更新ができることが求められる。
そしてね的確とは、固定資産の詳細であり、減価償却把握の公会計制度の整備がなされなくてはならない。
私も昨年9月の一般質問で、茨城県においても「複式簿記・発生主義による新しい公会計制度」への転換を求めました。以下の、先進東京都の事例を改めて学び、早急な導入を求めたいと思います。
公共施設や道路などインフラ(社会資本)の老朽化が進行する中、一部の自治体は新たな維持・管理手法を導入し始めている。東京都は独自に構築した公会計システムに基づく会計情報を活用し、成果を挙げている。
『固定資産を一括把握』 『老朽施設の延命化など効果的に』
東京都は、経年劣化が著しい足立都税事務所の改築工事に今年度から西新井警察署跡地で着手する。改築に当たっては、現在、同事務所がある場所での建て替えと、警察署跡地への移転との間で、今後30年間のコストなどを比較。収支差額が1億6800万円の黒字となり、6億8900万円の正味財産が残る移転改築が選ばれた。そのための情報を提供したのが、東京都が独自に構築した新しい公会計制度だ。
東京都は1999年から、危機的な財政状況を乗り切るとともに、適切な財務運営や資産管理を進めるため、企業会計の手法を取り入れた公会計改革に着手した。2006年度から複式簿記・発生主義による新しい公会計制度を導入。石原慎太郎都知事と都議会公明党が強力に推進した。これによって、従来の公会計では難しかった都所有の資産や負債のストック情報の把握が可能になり、事業ごとの費用もフルコストで計算できるようになった。
新しい公会計制度構築に際し、(1)庁舎などの公有財産(2)道路、橋などのインフラ資産(3)都立病院が保有する先端医療機器といった重要物品――を管理する資産管理システムと財務会計システムを連携。東京都が保有するすべての固定資産の数や金額を、一括して把握できるようにした。
こうした会計情報の活用の一環として実施しているのが、「主要施設10カ年維持更新計画」。財政再建時には十分に手入れができず劣化が進行した施設のうち、都民の安全・安心やサービス提供に関わるものをリストアップし、10年間で約8300億円の事業費を見込む。
計画には災害時の避難所になる教育施設や福祉医療サービスの提供施設が含まれる。足立都税事務所の改築も、このプランに基づくものだ。
「財政当局と各担当部局が、施設やインフラなどの固定資産情報を共有したことにより、財源まで視野に入れた計画となった。新しい公会計制度の効果だ」と、財務局関係者は強調している。
会計情報は財政全体に関わるマクロと個別事業を分析するミクロの両面から、資産の管理や事業の評価に役立つ。
マクロ的な活用法の一つは、貸借対照表に示される減価償却累計額の評価。資産額に占める比率が高いほど、資産の劣化が進行していると見られ、今後の更新需要の目安となる。
一方、ミクロ的な活用法では、事業ごとの減価償却累計額を基に、計画的な更新や改修による延命化を検討することなどが考えられる。
さらに、足立都税事務所改築の事例のように、資産の維持や更新に際して、複数の選択肢の中から、最適な手法を選ぶための情報を与えるのも新しい公会計制度の役割。発生主義によって、将来にわたるコストの計算が可能になったからだ。
例えば、河川から土砂が流れ込む東京港のしゅんせつ事業で、東京都は、長年稼働してきたしゅんせつ船が耐用年数を迎えることから、これを補修して使用し続けるか、新しい船を導入するかを検討。その結果、合計のコストを抑えられる、新しゅんせつ船「海竜」などを、昨年秋に導入した。