【社会保障と税】丹念に読む。公明主張がそこかしこに反映、消費税先行増税に停止条件明確。

 社会保障と税の一体改革について、三党協議に交渉の当事者として参画した石井政務調査会長(茨城県本部代表)のインタビュー記事が公明新聞に掲載されました。
 消費税に対する考え方、三党協議に参加の経緯、修正協議の主張、増税先行の批判について、景気対策、低所得者対策、社会保障全般、税制について明快に応えています。
 
 これらは、民主党の「決められない政治」から一歩踏み出した「ねじれ国会」という現実に、敢えて飛び込んだ結果として勝ち得た果実があると考えます。この三党合意は、今後の政治のあり様とも考えられ、政治の決断を示唆するものです。消費税増税の前にやることがあるとは、この合意を確実に推し進めることにほかなりません。
 民主、自民、公明3党による社会保障と税の一体改革関連法案の修正合意を受け、合意に至る経過と意義について、公明党の石井啓一政務調査会長にあらためて聞いた。
 『消費税引き上げ前に低所得者対策、社会保障改革』
 『景気回復 防災・減災へ重点投資』
 ――消費税に対する公明党の考え方は。
 石井政調会長 急速な高齢化の進展で社会保障費の国の予算が毎年1兆円程度、増えていく中で、医療や介護などを守るためには、安定的な財源が必要です。公明党は、自公政権時代に消費税を含む税制の抜本改革で、社会保障の財源を捻出せざるを得ないと判断しました。
 しかし、消費税率の引き上げには、何よりも国民の皆さんに納得してもらうことが必要です。
 そこで公明党は(1)社会保障の全体像を示す(2)景気回復(3)行政改革(4)消費税の使途は社会保障に限定(5)税制全体の改革で社会保障財源を生み出す――という5条件が、議論の前提条件だと主張してきました。
 ――3党協議に参加した経緯は。
 石井 当初、政府提出の法案では低所得者対策が明確になっていませんでした。公明党は先の5条件に加え、低所得者対策をきちんと行うよう「5条件プラス1(低所得者対策)」を国会論戦で訴えました。それが反映される前に、民主、自民両党が協議入りで一致しました。このままでは両党だけの議論で肝心の社会保障の議論が置き去りにされ、増税先行になりかねないとの懸念を強く抱きました。公明党は自らの主張を展開するために協議に参加したのです。
 
 ――修正協議での主張について。
 石井 まず、新年金改革案を来年の通常国会に、後期高齢者医療制度廃止法案を今国会に提出するとの閣議決定の取り下げを求めました
 最終的には確認書で、今後の両制度の在り方は実施時期も含め、3党間で協議することになり、民主党が一方的に関連法案を提出することはできなくなりました。事実上の閣議決定の取り下げだといえます。
 また、3党が合意しなければ年金や医療制度改革の結論は得られないので、民主党マニフェスト(政権公約)の具体化への道は困難となり、事実上の撤回につながると考えます。
 ――「増税先行」との批判もあるが。
 石井 政府提出の年金、子育て関連法案について、有識者などからなる「国民会議」を創設し、そこに委ねるとの提案もありました。しかし公明党は、政府提出5法案については3党協議で修正し、結論を出しました。社会保障改革を先送りさせない、増税先行にさせないという結果が得られたのです。
 さらに、税制協議において消費税引き上げまでに「国民会議」で社会保障制度改革をきちんと推進することを確認し、増税先行に歯止めを掛けました。
 ――景気対策は。
 石井 政府・民主党が掲げた「名目3%、実質2%」の経済成長目標に関し、自民党は削除を要求しましたが、公明党の主張で残りました。具体的な景気対策として、防災・減災分野に重点投資することを盛り込ませました。公明党が提唱する防災・減災ニューディール政策実現への足掛かりを得たといえます。
 ――低所得者対策はどうするのか。
 石井 一般的に低所得者対策には、生活必需品は低い税率とする「軽減税率」と、引き上げ分の一部を還付する「給付つき税額控除」の2種類があります。政府は当面、低所得者に現金を給付する「簡素な給付措置」を実施し、将来的に給付つき税額控除を導入するとしていました。自民党は税率10%を上回った段階で軽減税率の検討をという意見でした。
 これに対し公明党は、8%に引き上げる段階から軽減税率を選択肢の一つとして検討すべきだと主張し、法案にも明記されました。また8%段階での簡素な給付措置は、しっかりとした内容にすることも税率を引き上げる条件だということを3党で確認しました。
――社会保障関連の改革は。
 石井 年金についていえば、低年金の人への加算制度は「福祉的な給付」として、公明党の定率加算の主張も参考に、保険料の納付実績に応じて加算をすることになりました。
 受給資格期間は25年から10年に短縮することにし、短時間労働者への厚生年金の適用拡大も実現することになりました。会社員の厚生年金、公務員らの共済年金一元化も確認しました。そして基礎年金の国庫負担割合2分の1を恒久化することも決定。これで自公政権時代、04年に行った年金改革が完結します
 一方、子育て支援については、政府案の総合こども園創設は撤回し、公明党が推進してきた現行の認定こども園を拡充することになりました。
 ――税制分野はどうか。
 石井 自動車の取得税、重量税に関しては抜本的な見直しを行うことになり、消費税率8%への引き上げ時までに結論を得ることで合意しました。住宅取得についても、2段階の税率引き上げ時に、それぞれ十分な対策を実施することが確認されました。
 このように公明党の主張が大きく前進したこともあり、今回の合意に至りました。