【インボイス方式】正確公平性を担保するか、価格転嫁の実態を明示するか、それとも税務署が喜ぶのか。今後の議論必死のインボイス方式。

 消費税の議論の中で、一方は消費税の課題である逆進性対策である軽減税率や簡素な給付、更に給付付き税額控除が議論になるとともに、一方で消費税の正確な公平感ある捕捉も大きな議論になっています。
 それは、「インポイス方式」の導入是非の議論になると思われます。
 「インボイス」、つまり消費税額明示の「納品書」と言えましょう。
 ついては、最終小売りまで価格転嫁を繰り返し、加えて多種多様な物品を加えて、付加価値を高めていく消費物に対して如何なる消費税納税の正確性が求められるのかを考えてみたいと思います。
 まず、確認は、消費税は、食料や電気・ガスなど生計費に課税する税ということです。今は、特殊なもの以外はすべて課税されているとしてです。
 公平だが、所得の低い人にも等しくかかるため、低所得者の生活には重くのしかかる税です。この逆進性を解決するには、ヨーロッパと同じようにインボイス方式を導入して、生活必需品とそれ以外に税率を分けるしかないという議論があります。
 インボイス方式は、課税事業者が物を売る際に、消費税額を記載した納品書を発行し、それがなければ仕入者は消費税の仕入れ税額控除ができないという制度です。
 売上げ側と仕入れ側の納税額は相反する為に相互チェックが働き、過大仕入れや過小売上げの計上による脱税行為が困難になり、そこがガラス貼りになります。
過去にも検討されましたが、中小企業における事務処理の増大を理由に見送りされましたが、正確な所得を税務署に把握されたくないのではという意見もありましたし、大企業も反対しましたと記憶しています。
 消費税の正確性を担保するには、消費税率を流通の多段階でわけて徴収する必要があり、消費税の税率に段階を設けると、インボイス方式を取らざるを得ないと理論されます。そうしなければ、個別の課税仕入の計算が正確にできないからということです。
 日本では、平成元年に消費税を導入しましたが、インボイス制度を実施せず、業者に「益税」をもたらす「免税点」「簡易課税」を組み入れた税制となりました。
 現在、売上が1000万円以下の者は免税業者になっていますが、インボイス方式では、インボイスを発行できない免税業者からは仕入れがされなくなると考えられます。
 結果、中小零細企業も課税業者にならざるを得ません。もちろん免税点は別途検討すべきですが、全ての業者がインボイスから逃れられないと思われます。
 今の消費税の制度(帳簿方式)は、消費者から受取った消費税をごまかすことは出来ませんが、他の事業者から賦課されてきた消費税をごまかすことが出来ると指摘されることがあります。
 帳簿方式では、非課税業者、免税業者からの仕入も消費税が課されたとして処理されても実務上は分かりません。仕入に関わる消費税がより正確に、かつごまかしが出来ないようにするにはインボイス方式が必要となるわけです。
 消費税の正確公平な捕捉は大切なことです。インボイス方式の効果としては、価格転嫁の中味をどの段階で実施され、場合によってはされなかったかを納付書の内訳書により知ることができます。
 さらには、軽減税率の適用があり、8%10%とならない消費物の中味も相応正確になるでしょう。複数税率適用にもオープンな対応が可能と考えられます。
 以上のことを検討しながら、この事務負担の重さを考えざるを得ません。インポイスそのものにも多額な費用負担が生じることでしょう。準備期間の不足や準備そのものの不足が懸念されます。
 それでも、日本人の几帳面さや公平感を求める国民性は、インボイス方式を採用させるのでしょうか。 いま少し軽減税率の議論をしてから本議論を詰めていきたいと考えます。