【生活保護】「教育」「就労」「住宅」支援で、負の連鎖を断ち、就労の喜びを知らせ、住まいの安定を目指すべきだ。

 議会報告の後の質問会や懇談会の折にお聞きする事に「生活保護」があります。
 多くは、生活保護受給額と年金の差異、最低賃金より多い保護費、生活保護受給者の医療費無料についての疑問、生活保護受給者が車に乗っているなどの適格要件に対する疑問等が寄せられます。
 お聞きする一つ一つは、生活保護受給者の一部の方に関することとはいえ、事実に基づく話として聞けば、全く遺憾なことに思えます。
 つまり、一旦生活保護を受給すると自立しにくい、又はさせにくい状況がそこにあるように感じます。加えて、負の連鎖の如く、貧困の連鎖がそこにあるとすれば、この将来の大きな課題に改善の事業を勧めなければなりません。
 以下は、埼玉県の受給者支援事業を紹介し、「教育」「就労」「住宅」の生活保護受給者チャレンジ事業を参考にしたいと思います。
 『教育』
 『高校進学率がアップ/保護世帯の中学生を対象に学習教室』
 
 「マイナスとマイナスを掛け合わせるとプラスになるよね。じゃあ、これは……。そう、正解!」。埼玉県川口市内にある介護老人福祉施設の一室。大学生が中学生の隣に座り、数学の問題の解き方を丁寧に教えると、中学生は「分かった!」と笑顔でうなずいた。
 
 これは2010年9月にスタートした「生活保護受給者チャレンジ支援事業」の一つである教育支援の一コマだ。この支援では、教員OBと大学生ボランティアが、特別養護老人ホームで学習教室を開き、生活保護世帯の中学生にほぼマンツーマンで勉強を教えている。
 川口市内で週2回の教室に欠かさず通う中学3年生の女子生徒は「テストの点数も上がり、参加したかいがありました」と話し、大学生ボランティアの伊藤純さん(21)は「生徒から『頑張って今の学力より上の高校をめざしたい』と言われた時は、本当にうれしかった」と顔をほころばせていた。
 ■「貧困の連鎖」防げ
 教育支援の狙いは、保護世帯で育った子どもが大人になっても再び保護に陥る「貧困の連鎖」を防ぐこと。とりわけ「連鎖の防止に効果があるのが、高校への進学および卒業」(県社会福祉課)といいます。
 その実績は目に見える形で現れている。11年度の中学3年生の対象者801人のうち、教室参加者は305人と全体の4割近くにまで達し、参加者の高校進学率は97%に上昇した。制度開始前の保護世帯の高校進学率と比較すると、実に10ポイントも増加している。こうした成果を受けて、県は12年度から、教員OBなどの支援員およびボランティアの人員をそれぞれ増員し、学習教室も10カ所から17カ所に増設している。
 ■変わる子どもら
 「こんなにも多くの中学生が小学2、3年生程度の算数ができないとは思っていませんでした」。学習教室を始めた当時をこう振り返るのは、教育支援の取り組みの統括責任者である白鳥勲氏の言です。
 同氏は「それでも、こんなにも多くの中学生が教室に通ってくれるとは……。休み時間を削って勉強に打ち込むなど大きく変化した子もいます。こうした場が求められているのだと、つくづく感じています」と学習教室の重要性を語っています。
 『就労』
 『保護費削減の効果も/職業訓練の受講から再就職まで』
 「生活保護受給者チャレンジ支援事業」の二つ目の柱が、働くことができる受給者への就労支援。埼玉県は全国的な傾向と同様、長引く不況や高齢化の進展により生活保護受給者が増加しており、特にその伸びが著しいのが、主に40~50歳代の“まだ働ける”世代だ。これらの受給者数は12年3月時点で、08年9月に比べて約2・7倍にも膨れ上がっている。
 そこで県は、民間企業などで働いた経験を持つ支援員が職業訓練の受講から再就職まで、一貫して受給者を支援する制度を設けた。その結果、11年度は618人が就職し、96人が生活保護から脱出。こうした受給者の就職により、県は約3億7000万円分の生活保護費を削減することができた。県は12年度の目標を「700人の就職」としている。
 ■“居場所づくり”
 就職支援の技能講習などの場が、仲間づくりの場にもなっている。県社会福祉課の担当者は「生活保護を受けている人は孤立している人が多い。教育支援の学習教室もそうだが、制度には『自分はここに居てもいいんだ』と実感できる“居場所づくり”の機能も必要だ」と強調している。
 『住宅』
 『生活相談きめ細かく/民間アパートへの入居などサポート』
 
 3本柱の残る一つが、住まいの無い生活保護受給者への住宅支援。これは、社会福祉士の資格を持つ支援員が、受給者と一緒に不動産会社を訪れて、受給者のアパート入居の交渉などを行うものだ。
 受給者の中には、民間非営利団体(NPO)などが運用する無料低額宿泊所に長期間、宿泊し続けている人もいる。住宅支援では、アパートへの転居を通じて、こうした人たちの生活の自立を促すのが目的だ。11年度は673人がアパートなどに転居することができた。県は12年度で「800人の転居」をめざしている。
 一方、支援員は単に住居のアドバイスを行うだけではなく、受給者のさまざまな相談にも応じている。「受給者が半年以内に1人で生活できるよう一貫して支援していく」(県社会福祉課)という。
 特に12年度は、転居が困難な高齢者や障がい者など長期入所者への働き掛けを重視し、障害者手帳の取得や年金受給手続きの手助け、病院への付き添いなど、きめ細かな相談・支援を行っている。