今夏の参議院選挙に向けて各党が臨戦態勢に入って参りました。
公明党もまた、連立与党としての実績を前面に民主党政権時に蔓延した「不安」を解消し、「希望」ある日本を再建するために、「安定」の政治を目指して参ります。
「安定」とは、衆参ねじれの解消であり、自公両党で参議院の過半数を取るということに他なりません。そして、いま公明党の実績を訴える活動にまい進している所です。
そのなか質問がある場合の最初はTPPに関するものです。ここでは、公明新聞に掲載された記事を記したいと思います。
安倍晋三首相は15日、TPP(環太平洋連携協定)への日本の交渉参加を正式に表明しました。
そこで、今回はTPPの意義や課題などを解説しました。また、TPP参加で打撃を受ける農業に対する公明党の考え方について、石田祝稔・党農林水産部会長(衆院議員)に聞きました。
『輸出増やし成長促す/農林水産業 生産は3兆円減/政府試算』
Q 安倍晋三首相がTPP交渉参加を表明した理由は。
A 成長著しいアジアの需要を取り込むことで日本経済の成長を促すだけでなく、米国などとの経済的結び付きを強めれば、アジア太平洋地域の安定化と日本の安全保障にも有益だと安倍首相は会見で述べました。
TPPは「原則、すべての関税(国内産業を守るために課す税金)の撤廃」を掲げていることが特徴ですが、安倍首相は2月のオバマ米大統領との会談で、一部の品目を関税撤廃の例外として認めることを確認しました。これが日本の交渉参加を決断する際の大きな要因になりました。
Q 公明党はどう考えているのですか。
A 公明党は政府が情報を国民に提供し、国益を最大化するためのコンセンサス(合意)をつくっていく必要性を訴えてきました。
公明党がめざしているのは、アジア太平洋地域での新しい貿易ルールの確立です。TPPの拡大版ともいえるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向け、TPPだけでなく、日本・中国・韓国の日中韓FTA(自由貿易協定)や、ASEAN(東南アジア諸国連合)+3(日中韓)、ASEAN+6(日中韓とインドなど3カ国)なども同時並行で進めていく必要があります。
さらに公明党は、東日本大震災の被災地の復興に支障が出ないよう最大限の配慮を求めています。
Q そもそも、TPPとはどういうものですか。
A 環太平洋連携協定のことで「Trans―Pacific Partnership(トランス・パシフィック・パートナーシップ)」の頭文字を取ってTPPと呼ばれています。
太平洋を囲む国々が互いに輸入品に課している関税をなくしたり、国境を越えた投資や人の移動に関するルールを統一化したりして、モノやお金が自由に行き来できる経済圏をつくろうとする取り組みです。
Q どういう国々が交渉に参加しているのですか。
A もともとはシンガポールやチリ、ブルネイ、ニュージーランドの4カ国による連携でしたが、2009年に米国が交渉参加を表明したことで注目されるようになりました。日本が参加すれば、人口約8億人、世界の国内総生産(GDP)の約4割に相当する巨大な経済圏が誕生します。
現在、関税撤廃や知的財産保護など21分野を対象に11カ国が交渉を進めています。
Q 交渉の状況は。
A これまで16回の交渉会合が開かれ、次回は5月にペルーの首都リマで開催される予定です。年内の交渉妥結(合意)をめざしていますが、一部の分野では調整が難航している模様です。
Q 日本はいつ交渉に参加するのですか。
A 実際に日本が交渉参加するには、交渉参加国の承認が必要です。シンガポールなど6カ国からは承認を得ましたが、米国では議会承認に3カ月程度かかるため、日本の交渉参加はそれ以降になる見通しです。
Q TPP参加のメリットは。
A 関税がなくなれば、輸入品が安くなって消費者は輸入品を安く買えるメリットがあります。自動車や家電を中心に輸出拡大が見込まれることから輸出関連企業にとっては収益拡大の追い風になります。
これが賃金増や消費拡大につながれば、景気が上向いていくことが期待できます。
Q 悪影響も指摘されていますが。
A 安い外国製品や農産物の流入で国内産業が打撃を受ける恐れがあります。日本は各国と協定を結び、貿易自由化を進めてきましたが、一部の品目は関税撤廃や引き下げから除外してきました。特に、コメなどの関税をゼロにした経験はなく、農業団体は国内農家が受ける影響を懸念して、日本のTPP交渉参加に反対してきました。
また、医療サービスの開放を機に保険適用されない診療が増えれば、国民皆保険制度が崩れ、所得による医療格差が生まれかねないとの指摘もあります。
Q メリットとデメリットをよく考えるべきでは。
A 政府は15日、公明党の主張を受け、日本がTPPに参加した場合の効果について各府省バラバラだった試算を統一化し、公表しました。
試算は関税をすべて撤廃し、国内対策をしないことが前提です。それによれば、輸出増などで実質GDPは年3・2兆円(0・66%)増。安い輸入品の流入でGDPが2・9兆円押し下げられますが、消費の増加がそれを相殺するとしました。
経済全体ではプラスの効果があるとはいえ、農林水産業の生産額は3・0兆円も落ち込みます。農林水産業の将来像をどう描くのか厳しく問われています。
『石田祝稔 党農林水産部会長 に聞く』
『環境保全や食料自給率でコメなど重要品目に配慮を』
――安倍首相のTPP交渉参加の表明をどう受け止めるか。
石田祝稔・党農林水産部会長 TPPは例外扱いのない関税撤廃が原則とされているだけに、慎重な判断を政府に強く求めてきた。首相は、オバマ米大統領との共同声明で「聖域なき関税撤廃が前提ではない」ことを確認し、15日にTPP交渉参加を正式に表明した。しかし、交渉参加がゴールではない。交渉参加を決めた以上、国益を守るため、日本の主張を貫くことが最も重要だ。
――公明党は「農業の多面的機能、食料自給率の向上に配慮せよ」と主張してきた。
石田 農業は関連産業の裾野が広いし、農作物を生産するだけではなく、国土保全や環境保全などの多面的機能を持つ。それを守ることは当然だ。食料自給率(カロリーベース)は現状39%と非常に厳しい状態だ。これを何としても引き上げなければならない。
――「守るべき農産品」としてコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の重要品目を関税撤廃の例外扱いにするよう政府に求めたが。
石田 いずれも内外価格差が大きく、関税障壁を設ける必要がある重要品目だ。たとえば砂糖の原材料であるサトウキビは、日本の国境周辺に位置する沖縄など南西諸島の基幹作物だ。サトウキビ生産が衰退すれば、島の生活も成り立たず、領土・領海・領空の保全にもかかわる。砂糖の品質は国内産も外国産も差がないため、値段勝負になると安価な輸入品に太刀打ちできない。
乳製品も品質の差がなく、関税障壁で守らなければ、北海道を中心に酪農の盛んな地域が大打撃を受ける。国策として守らなければならない。
――今後、政府に求めることは。
石田 政府は、TPP参加で農林水産物の生産額が3兆円減少するとの試算を公表したが、これはコメなどの主要品目が関税撤廃された最悪のケースを想定した数字だろう。交渉に臨んだ結果、そうした事態にはならなかったという努力を政府に強く求めていく。
日本の農業は、TPP問題にかかわらず、高齢化や後継者不足など課題山積だ。農業再生のために、公明党は、経営安定対策や基盤整備、後継者育成などに全力を挙げる。
以上です。TPPは通商条約であることから、第1義的には政府が交渉し、条約として国会に提出されるものです。その意味では安倍内閣のタフな交渉力がカギとなります。日本の国益を守るために一切の妥協はいらないと考えます。何所の国も守るべきがあるはずです。そして、日本が交渉のイニシアチブを採れるように積極果敢に攻めて欲しいと思います。