今回、合意した軽減税率の意義などについて、公明党の斉藤鉄夫税制調査会長に聞いた。
―今回の合意の意義について。
斉藤 歴史的な合意ができたと思います。
2012年の社会保障と税の一体改革の議論の際から、公明党が一貫して主張してきた軽減税率制度が実現する運びとなり、焦与党が合意した軽減税率の対象品目点となっていた対象品目についても、幅広くするべきとの公明党の主張が大きく反映されました。消費税増税に伴う負担の緩和を国民が実感でき、低所得者対策としての効果も期待できます。
これによって、国民は「消費税が上がっても、生きていくのに必要な食料品は据え置かれる」という安心感を持つことができます。つまり、社会保障財源を支えるのに不可欠な消費税に対する国民の理解が形成され、消費意欲の冷え込みの防止にもつながる。そうした形での制度設計を合意できた意義はとても大きいと思います。
―インボイス制度の導入も明確にされました。
斉藤 簡素な経理方式を経て導入されます。これにより、事業者は取引先に対して、適用税率ごとの取引額と税額、事業者ごとの登録番号などを明記した「適格請求書」を発行することが義務付けられ、正確な納税額の計算と不正防止ができるようになります。
中小企業などが立場の強い取引先に対して、消費税分を価格に転嫁できずに泣き寝入りするようなことを防ぐことができます。
―軽減税率導入によって「税収が減り、財政再建が遅れる」という指摘がありますが。
斉藤 軽減税率導入に必要とされる1兆円規模の財源をどう捻出するかは、今後、与党で協議して詰めていきますが、公明党は軽減税率のために赤字国債を発行することは考えていません。あくまでも税制・財政全体の中で、安定財源をベースにして財源を確保していきます。
社会保障は削らず
―「社会保障が削られる」との指摘に対しては。
斉藤 消費税は社会保障に使われる仕組みになっていて、消費税への国民の理解が揺らげば社会保障の基盤が揺らぐことになります。税率10%時の消費税収は年間28兆円規模とされますが、1兆円規模で軽減税率を導入することは、国民に消費税を理解し支えてもらうための“必要経費”として考えられるのではないでしょうか。
具体的な財源の確保に当たり、軽減税率のために社会保障を削るという考えはありません。一部で、医療や介護などの自己負担額の合計に上限を設ける総合合算制度をやめて、その財源を軽減税率に充てようとしているとの誤解があります。そもそも、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度の定着が前提の制度であり、これは随分、先の話です。諸条件が整う中で、具体化していくべき制度です。
―低所得者対策としては、軽減税率よりも現金を給付する制度の方が優れているとの指摘もありますが。
斉藤 消費税率引き上げを決めた社会保障と税の一体改革関連法には、検討すべき恒久的な低所得者対策として、公明党の主張で明記された軽減税率のほか、総合合算制度と給付つき税額控除が盛り込まれましたが、17年4月の税率10%への引き上げと同時に確実に導入できるのは、軽減税率しかありません。
なぜならば、給付つき税額控除は、総合合算制度と同様に、所得を把握するためのマイナンバー制度が定着しなければ導入できないからです。しかも、給付には申請が必要なため、対象者に行き渡らない恐れがあります。事実、8%への引き上げ時に一時的な措置として実施された「簡素な給付措置」では、申請が必要なため、対象者の6~7割しか給付が届いていない自治体が相次ぎました。
世界的に見ても、低所得者対策として、給付つき税額控除よりも軽減税率を選択している国が圧倒的に多く、そうした国が増えているのです。
事業者の負担緩和に総力
―事業者にとっては税率が複数になることで、事務負担などが増えますが。
斉藤 事業者の皆さまには、納税事務や商品管理などで少なからずご負担をお掛けすることとなりますが、軽減税率導入の意義を踏まえ、ご理解いただければと思います。レジの改修・新規導入への支援や相談体制の充実など、軽減税率導入に伴う事業者の皆さまの負担を軽減するため、政治として総力を挙げてバックアップしてまいります。