6月23日、茨城県の大井川知事は、2050年ごろの構想として掲げるつくばエクスプレスの茨城県内での延伸先を土浦方面に決定し、構想の具体化に向けて検討を進めていくことを記者会見で発表しました。
大井川知事は、「実現可能性のある延伸先であることが、最も重要だと考えて判断した」と述べ、つくばエクスプレスを土浦方面に延伸し、土浦駅でJR常磐線と接続することを目指して構想の具体化に向け検討していくと語りました。
そのうえで、土浦方面への延伸が実現したあと、状況が変われば、茨城空港方面への延伸について改めて議論するとも語りました。
茨城県は2050年ごろの構想として、つくばエクスプレスの延伸先に筑波山方面、水戸方面、茨城空港方面、土浦方面の4つを挙げ、昨年度から絞り込みを行ってきました。
今年3月、県の設置した第三者委員会は、土浦方面に延伸して土浦駅でJR常磐線と接続するという提言書をまとめ、県はこの提言を踏まえ、パブリックコメントを行っていました。
第三者委員会の提言書は、土浦駅延伸のメリットを以下のように5点指摘しています。
- 新たな人の流れの創出:土浦方面の延伸は、東京圏(秋葉原駅)からの2時間圏域の居住人口や面積が増加します。また、延伸先には霞ヶ浦やつくば霞ヶ浦りんりんロードなどの観光地があるため、新たな沿線開発・企業誘致による移住や二地域居住の促進、さらには観光誘客といった東京圏からの新たな人の流れの創出が期待されます。
- つくばと水戸の一体化した大都市経済圏の形成:水戸駅からつくば駅までの時間短縮効果も大きく、県北・県央地域におけるつくばからの60分圏域・90分圏域の居住面積も増加します。これにより、つくばと水戸を一体化した大都市経済圏の形成にも寄与します。
- 災害リスクや輸送障害の軽減:地平設置であるJR常磐線に対して高架構造を想定するTXが延伸され、JR常磐線と結節点を持つことにより、河川氾濫などの災害リスクや輸送障害の軽減に向けてリダンダンシー強化が期待されます。
- 公共交通のサービスレベル向上:2つの路線の結節は、公共交通のサービスレベル向上に寄与し、自動車からの転換も期待できます。
- 実現可能性:現状での単年度収支は、4方面の中では最良であり、輸送密度も高く、費用便益比(B/C)も4方面の中では最も高いことから、実現可能性は4方面の中では最も高いです。
茨城県は、今年度、費用対効果や採算性を向上させる方策などを調査・検討するとともに、延伸ルートや事業スキームを検討することにしています。
つくばエクスプレスは、茨城県のほか、東京都や千葉県、埼玉県などが出資する会社が運行していて、延伸にあたっては沿線の都県の理解をどう得ていくのかや、概算で1400億円に上るとされる事業費をどのように調達していくのかが課題となります。つくばエクスプレス開業時の1都3県の覚書によれば、東京方面以外の延伸にあたっては、その費用を延伸を計画している県が負担することになっています。
東京都は昨年、東京駅近くから江東区方面に新たな地下鉄を建設して、つくばエクスプレスを接続するという計画を発表しています。大井川知事はこうした東京都の計画を踏まえ、覚書の見直しも働きかけているとの姿勢を示しました。
2028年には国の交通政策審議会が、答申を出すと見込まれています。この答申に、つくばエクスプレスの県内延伸が盛り込まれ、いわば国のお墨付きが得られるよう、県は働きかけを強める予定です。
(写真上:つくばエクスプレスTX-3000系車両(写真=Nyohoho/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)、写真下:JR土浦駅)