茨城県のバス交通を巡る現状と課題/県議会特別委員会で意見聴取

6月18日、八島功男議員が所属する「交通政策・物流問題調査特別委員会」が開催されました。
有識者からの意見聴取が行われ、一般社団法人茨城県バス協会会長の任田正史さん、一般社団法人茨城県ハイヤー・タクシー協会会長の出野清秀氏を招き、業界の現状と対応策を聴取しました。
以下、「茨城県のバス交通を巡る現状と課題」について、任田会長の説明をまとめました。

茨城県のバス業界の現状と未来
茨城県のバス業界、特に路線バス事業は現在、深刻な困難に直面しています。令和5年3月現在、県内には11の路線バス事業者が存在し、1,116の系統を運行していますが、その経常損益は約29億4百万円の赤字となっています。この赤字は、国、県、市町村からの運行補助金を受けてもなお、解消には至っていません。

茨城県のバス業界が抱える主な課題は以下の点が挙げられます。
まず、新型コロナウイルス感染症の影響による減収が挙げられます。新型コロナウイルス感染症の流行により、路線バス、高速バス、貸切バスのいずれも減収となりました。特に路線バスは赤字がさらに拡大し、黒字の高速バスや貸切バスの収益をもってしても補填できない状況です。
次に、運転士不足の問題があります。路線バス事業者における運転士数は、令和元年度から令和4年度にかけて減少傾向にあり、令和5年度以降も減少し続けています。運転士不足は深刻化しており、赤字の路線バスから黒字の高速バスや貸切バスに運転手を配置せざるを得ない状況です。
さらに、運転士の賃金も課題です。茨城県のバス運転手の平均年収は、全国平均や関東地区平均、そして茨城県の全業種平均と比較しても低い水準にとどまっています。この低賃金が、運転士不足の一因ともなっています。
加えて、燃料・物価高騰の問題も深刻です。ウクライナ問題や円安の影響により、燃料費が高騰しています。路線バスの年間燃料消費量は約1万リットルであり、燃料単価が20~30円上昇したことで、年間20~30万円の燃料コスト増加となっています。

これらの課題に対して、バス会社は様々な取り組みを行っています。例えば、設備投資の抑制、ベースアップによる運転士の定着、求人広告費の増額、大型二種免許取得費用負担、転職支援金の提供、女性運転士の職場環境整備などです。また、小学生へのバス乗り方教室の実施や、バスロケーションサービスの導入など、バス利用促進に向けた取り組みも行っています。

茨城県のバス業界がこれらの課題を克服し、持続可能な公共交通機関としての役割を果たしていくためには、県や市町村の財政支援、そして地域住民の理解と協力が不可欠です。私たち一人ひとりが、バスの利用促進や地域の交通事情に関心を持ち、積極的に協力していくことが求められています。
地域の交通インフラを守るためには、行政、企業、そして住民が一体となって取り組むことが重要です。今後も茨城県のバス業界が健全な運営を続け、地域の生活を支える重要な役割を果たしていくために、皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。