公明新聞(1月15日付)に、持続可能な開発目標(SDGs)推進について、 国連広報センター所長 根本かおるさん 、公明党SDGs推進委員会事務局長(衆院議員) 岡本三成氏 、公明党国際局次長(参院議員) 高瀬弘美さんの鼎談が掲載されました。
地球を取り巻く、あらゆる課題の解決をめざし国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて、日本政府は昨年12月、主要な先進国に先駆けて具体的な実施指針を決定しました。世界を変えるための17の目標SDGsの推進についてです。
人間の安全保障」実現めざす 岡本
次世代担う若者へ、さらに周知を 根本
岡本 SDGsは、「誰一人取り残さない」をテーマに2015年9月の国連サミットで採択された目標です。30年までに、貧困や飢餓の根絶、環境保全といった17項目の目標達成を掲げていますね。
根本 はい。具体的には「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」などの目標が盛り込まれています。一つ一つの項目は互いに関連し合い、経済、社会、環境のさまざまな課題の解決の糸口となります。
高瀬 共感できます。私も外交官時代に東ティモールにいたころ、女子教育の遅れを目の当たりにしました。母親に適切な知識がないために貧困に陥ったり、子どもが健康を崩すなど、“負の連鎖”の原因になっていたのです。
根本 私が昨年3月に訪問した南スーダンでも、女性の識字率は男性より約10ポイントも低く、女児の3人に1人しか学校に通えていない状況に、深く胸が痛みました。
例えば、SDGsの掲げる「質の高い教育をみんなに」という目標の達成に向け、女子教育の普及に力を入れるならば、貧困の撲滅や健康・福祉の改善など他の目標達成への道筋も開けていくと期待されます。
岡本 しかも、このSDGsが画期的なのは、途上国だけでなく先進国も含めた国際社会共通の目標として定めているところです。日本国内でも、格差の拡大や子どもの貧困などの課題が深刻化しています。
根本 その通りです。従来の国連の開発目標(MDGs)は、主に途上国が目標達成の責任を負うものでしたが、SDGsは先進国も責任を担うのが、大きく違います。こうした壮大な目標を掲げるSDGsを、国連の全加盟国が合意できたことは有意義であり、私は、“地球のマスタープラン(基本計画)”と捉えています。
高瀬 まずは、その国の政治の姿勢が重要になりますね。
そこで、日本政府が昨年12月に策定した実施指針には、優先課題として「あらゆる人々の活躍の推進」や「健康・長寿の達成」「平和と安全・安心社会の実現」など8項目を掲げ、女性の活躍や、がん対策の推進などの施策を進めるとしています。
岡本 公明党もSDGsを前進させるため、昨年1月から党内に推進委員会を設けています。実施指針の策定に際しては、政府に申し入れを行い、全ての要望を反映させることができました。一例を挙げれば、未来を担う子どもたちにSDGsを理解してもらうために学校教育に取り込むことが、実施指針に盛り込まれています。
地域の声聞く公明の姿勢に期待 根本
北九州市水道インフラで国際貢献 高瀬
根本 公明党の要望書を拝見しましたが、広報発信の重要性や学校・地域での学びの取り組みを訴えておられました。多くの方々にSDGsの周知をめざす私たちにとって、大変にありがたい要望でした。
特に次の世代を担う若者に知ってもらいたいですね。国連は、「国連アカデミック・インパクト」という枠組みで、創価大学を含む世界1000以上の大学と提携し、授業の中にSDGsを取り入れてもらうなどの試みを始めています。若い人たちにSDGsに目を向けてもらう機会となることを願っています。
岡本 SDGsの価値観や哲学は、公明党の「大衆とともに」の立党精神、そして、貧困や紛争などあらゆる脅威から人間を守る「人間の安全保障」という基本理念に合致しています。
根本 私が公明党の推進委員会に招かれた時、地方で活動するNPO(民間非営利団体)など市民団体からもヒアリングしていることが印象的でした。実際のアクション(行動)は各地域で起きていますので、こうした姿勢には感銘を受けました。
公明、国・地方議員のネットワークで後押し
岡本 ありがとうございます。公明党の強みは、国と地方3000人の議員ネットワーク、また、NGO(非政府組織)やNPOなどの市民団体、有識者などとのつながりです。これらのネットワークを生かして、SDGsの推進力になれると考えています。
高瀬 地方自治体の取り組みが国際貢献につながっている事例もあります。例えば北九州市では、東南アジア地域の水質改善のため、上下水道インフラの海外輸出を積極的に展開。特に、カンボジアでの水道整備の成果が目覚ましく、北九州市が同国中に水道開発の協力を広げています。
こうした水道インフラの海外展開は、公明党の市議団が国会議員と連携し、わが地域の強みを生かした国際貢献として推進してきたものです。
根本 国連広報センターの役割の一つとして、北九州市のような、世界に誇れるローカル・アクション(地域での取り組み)を国連につなぐ“橋渡し役”があると考えています。
岡本 企業の役割も非常に大きいと感じています。
企業の経営戦略は数年にとどまるケースが一般的です。しかしSDGsが示した“地球環境に優しい持続可能な社会をつくる”という理念を経営戦略に取り込めば、30年、50年先まで世界から必要とされる企業として成長できる。これは、大きなビジネスチャンスです。
根本 企業や国際社会がともに恩恵を受ける関係が大事ですね。ある日本企業では、自社製品の手指消毒剤の海外生産を開始。途上国の衛生改善・向上に貢献しています。
高瀬 持続可能な活動を続けていくには、財政支援も大切ですね。
岡本 昨年の臨時国会で休眠預金活用法【下記参照】が成立し、毎年500億~600億円の休眠預金を、貧困や飢餓、環境問題などさまざまな公益分野に利用できる、画期的な資金活用のメカニズムとして、国際社会にアピールできるものになりました。
根本 期待しています。公明党は、SDGsの活動を、後ろからグッと支えてきた応援団です。運動がさらに前進できるよう、より支え続けていただきたい。
【休眠預金活用法】
金融機関の口座で10年以上出し入れのない「休眠預金」を、子どもの貧困対策など民間の公益活動の財源として活用できるようにするもの。公明党を含む超党派議員連盟による議員立法。休眠預金の発生額は、全国で毎年約1000億円。このうち500億~600億円は、預金者からの払い戻しの要望がなく、金融機関の雑所得として扱われている。預金者の権利は従来と変わらず保護されるため、預金者が返還を申し出れば、預金の元本と利息に相当する金額は払い戻しが行われる。
ねもと・かおる
東京大学法学部卒業。米コロンビア大学大学院修了。テレビ朝日アナウンサー・記者を経て、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で難民支援活動に従事。国連UNHCR協会事務局長、UNHCRジュネーブ本部民間資金調達部副部長などを歴任。