良い写真を撮るには、強靭な心、生命力を持つこと。清い心、純粋さを持つこと。

 私の心の奥底にある青春の光を瞬時に思い起こさせてくれる記事に出会いました。
 聖教新聞り1月12日つけ3面の特集「〈青春譜――池田先生と綴る未来 創価大学〉第19回 写真部
 「今」「この瞬間」を全力で
 私も創価大学写真部の一員でした。
 記事の場面は、私の卒業してから10年を経たものですが、写真部員として創立者池田先生のご来学の瞬間を撮影させていただく機会があり、全く同じ思いを共有するものです。
 当時、私は写真部の暗室のあった松風センター理科実験等にいる時間が教室にいる時間より多いことを自負して吹聴していたこともありました。カラー写真がまだ一般出来ではなく、フィルムも長尺のものをパトローネに切って入替して使いました。現像もプリントも当然自分で行いました。光と影の微妙なバランスにどれほど苦労したことでしょう。
 しかし、最も大変なことは被写体とどう対峙するかに他なりません。記事にある池田先生の激励のお言葉が今も迫ってきます。まあ、当時は、オートフォーカスもなくピントを合わせることすら難しいと悩んでいました。また、創立者と学生の感動のシーンをどのように映し出すかは、まさに撮影者の心のありようであったと今も思われます。
 この記事は、私を40年前の私にして下さいました。感謝申し上げます。
 池田先生が、学生・教職員らと創立20周年記念写真展を鑑賞(1989年11月、創価大学で)。先生はこれまで写真部に対し、「心は宇宙より広い」「心 心 心 写真なり」などの揮毫(きごう)を贈ってきた 池田先生が、学生・教職員らと創立20周年記念写真展を鑑賞(1989年11月、創価大学で)。先生はこれまで写真部に対し、「心は宇宙より広い」「心 心 心 写真なり」などの揮毫(きごう)を贈ってきた
池田先生が、学生・教職員らと創立20周年記念写真展を鑑賞(1989年11月、創価大学で)。先生はこれまで写真部に対し、「心は宇宙より広い」「心 心 心 写真なり」などの揮毫(きごう)を贈ってきた
 今月2日――月が地球に接近し、いつもより明るく、大きく見える「スーパームーン」が夜空を照らした。
 この日は、創価大学創立者・池田先生の卒寿の誕生日。天も寿ぐ“光の芸術”に、シャッターを切った人も多いだろう。
 
 池田先生もまた、折々にカメラを手にしてきた。創大が開学した1971年には、北海道・大沼湖畔で煌々と輝く月を撮影している。当時を述懐した随想「私とカメラ」には、こうつづられている。
 「私は、技術的には決して上手でない。いや、わからないといったほうが本当かも知れない。が、それもよいと思っている。写真とは、技術だけではなく、透徹した心の作業であり、自己を表現するための手段であるという哲学をもっているからだ」
 この言葉は、創大写真部の指針となっている。同部では、創立者の思想や写真の勉強会を行い、「創価芸術展」への出展やキャンパスの桜をテーマとした「創桜展」の開催などを通じて、心と技術を磨いている。学生自治会の写真室に所属し、大学行事の記録に携わる友もいる。
 発足は、開学の年にさかのぼる。写真好きの学生数人が同好会を立ち上げ、翌年にはクラブに昇格。その後、松風センターの近くにあった理科実験棟(当時)の一室に暗室ができ、部室を設けた。
 単なる趣味の集いではない。“創立者のように生命を表現できる写真家に”――皆が真剣勝負でカメラを構え、撮影した作品の講評会を行いながら、実力を高め合った。アルバイトでコツコツとお金をため、機材も一つ一つそろえていった。
 強靱な生命力を持て
 大学から連絡を受けた写真部員の代表が、重いカメラ機材を肩に、目的地へ急ぐ。向かった先は、文系校舎A棟のロビー。そこには、本紙のカメラマンと共に、池田先生の姿があった。80年8月17日のことである。
 「きょうは僕がモデルになってあげるよ」
 諸行事などで頻繁に大学を訪れていた先生の提案で、夏休みに即席の“写真研修会”が行われることになったのだ。
 突然の出来事に、喜びながらも戸惑う友。さっそうと入り口へと歩きだした先生を慌てて追い掛け、研修会は始まった。
 被写体となった先生が、若き写真家たちに声を掛ける。
 「まだシャッターの音が弱いな」「負けるな!」
 「良い写真を撮るには、強靱な心、生命力を持つこと。清い心、純粋さを持つこと」
 ファインダーが熱気で何度も曇る。皆、汗だくになりながら、懸命にシャッターを切った。
 さらに先生は続けた。「人の写真を撮ることは、生命と生命のぶつかり合いである」「相手の生命を引き出すのは自分の生命である」と。部員たちは胸を熱くしながら、さらなる成長を誓った。
黄金の歴史を共に
 その後も、先生は写真部を見守り、温かく応援してきた。
 89年5月。写真部の友は、学内に咲き誇る満開の桜をカラーフィルムに収め、写真を展示した。“多忙な創立者に少しでも安らいでいただきたい”――その思いで前年から開始した「創桜展」である。
 鑑賞した先生は、真心に感謝しつつ、「今度、創立20周年の写真展をやろう。私も出展するよ」と提案する。それが実現したのは、同年の秋だった。
 A棟ロビーのほぼ全面を使用し、創大と創価女子短期大学の写真部をはじめ、創価学園生らが出展。先生が撮影したキャンパスの写真も飾られた。
 開幕式では先生がテープカットを行い、創大・短大の写真部部長が展示を案内した。
 参加した部員は振り返る。
 「私たちの思いに、先生が応えてくださったように感じました。会場に来られた先生を、記録員として撮影できたことは、写真部の誉れの歴史です」
 先生は一つ一つの写真を丹念に鑑賞。「学生の感性は清らかで鋭い。素晴らしい作品ばかりで感銘しました」と語り、友の奮闘をたたえた。
 写真も人生も「この瞬間」は二度と来ない。ゆえに「今」に全力を尽くそう! わが生命を磨き鍛えよう!
 創部から約半世紀。先生と共に歩む卒業生は、プロのカメラマンやマスコミ、光学機器メーカーなど、多彩な分野で黄金の輝きを放っている。