2023年9月6日、茨城県議会代表質問が行われ、県議会公明党の八島功男議員が、大井川知事に、県政の課題について質問しました。
取手市双葉地区においては、6月2日から3日にかけての豪雨により、4日午後まで水が引かず、浸水被害は床上浸水が325棟、床下浸水は241棟に上りました。内水氾濫の典型とも言われるこの事例を挙げ、八島議員は、内水氾濫への対策を大井川知事に質しました。
【八島議員の質問】
都市化が進み、排水が追い付かないことを主因にする内水氾濫などにおける浸水被害軽減への取組について伺います。
6月に県南地域から鹿行地域にかけて降った記録的な大雨により、家屋の浸水や道路の冠水、農地や土地改良施設の被災など、甚大な被害が発生いたしました。
牛久沼については、水位が上昇して堤防を越水した外水氾濫により、家屋の浸水などが発生いたしました。
当時の被害状況や発生要因など、牛久沼の水位の関係性を整理する上で、八軒堰水門の治水機能の強化などについて検討委員会での検証と対策に取り組んで頂くとともに、農業用水の運用に大きな役割を持つ土地改良区の皆さんとも連携を図りながら、再度災害が発生しないよう早急に取り組むべきと考えます。
取手市双葉地区においては、6月2日から3日にかけての豪雨により、4日午後まで水が引かず、浸水被害は床上浸水が325棟、床下浸水は241棟に上りました。国土交通省の雨量計では双葉地区のある旧藤代町は2日間で230ミリと市内歴代2位を記録、土浦市やつくば市でも2日間の総降水量は観測史上最大の記録を更新しました。
双葉地区は、周囲に田んぼが広がり、南北を小貝川と牛久沼に挟まるとの地勢にあること。さらに、雨水は地区2か所の5機のポンプでくみ上げて南側の「大夫落排水路」に流し、さらに南東側にある末端の新川第1、第2排水機場を通じて小貝川に放出するシステムであるものの、今回は上流から大量の雨が流れ込んだ影響で、機場の排水が追い付かず、機場に接続する排水路や周囲の田んぼから溢れた水が流れ込んだと考えられます。
地区の2か所のポンプは稼働こそしたものの、排水先の大夫落排水路が溢水していることから、結果的に水が双葉地区内を循環することで浸水が起こったとされており、これらのことから、識者は、「内水氾濫の典型事例だ」と語ります。
この教訓からも、今後も局地的な大雨による内水氾濫による浸水被害の発生が懸念されます。そして、水害対策は、河川の堤防決壊で発生するような外水氾濫に比べて対策が手薄であることが指摘できます。また、国交省によれば、外水氾濫より、内水氾濫を原因とする浸水建物被害が多いとされ、よりきめ細かな復旧対策とスムーズな被災者生活支援が期待されます。
県は、県内で「内水氾濫」が発生する恐れのある地区が29市町村136地区に上るとの調査結果を発表しています。是非とも全地区の「内水ハザードマップ」の作成や、地形や雨量、雨水の処理能力など地域ごとの実情を踏まえた避難情報の発出方法を検討して頂きたい。
今般のような局地化・集中化する豪雨などに対応していくためには、外水氾濫を防ぐための河川堤防などの整備に加え、排水施設の能力を超えた雨量により河川等へ排水しきれず住宅などへの浸水被害が発生するおそれのある、内水氾濫への対策も急務であり極めて重要です。
以上を踏まえて、内水氾濫における浸水被害軽減への取組について、知事の御所見を伺います。
【大井川和彦知事答弁】
次に、内水氾濫における浸水被害軽減への取組についてお答えいたします。
本年6月に発生した、「令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号」では、つくば市の観測所において、24時間雨量が254ミリメートルと戦後最大の降雨を記録し、牛久沼の越水や、取手市の双葉地区などの内水氾濫による浸水被害をもたらしました。
まず、牛久沼につきましては、総合的な越水対策の検討を目的として、先月7日に「牛久沼越水対策検討委員会」を設置し、第1回委員会を開催したところでございます。
引き続き、この委員会を通じて、越水被害の発生要因、今後の越水防止対策について、客観的なデータに基づき検証し、年内に結果を取りまとめていく予定でございます。
次に、内水氾濫による浸水被害への備えにつきましては、これまで、市町村において、ハード・ソフト対策を総合的に進めてきたところでございますが、ハード対策については、多大な時間と費用を要することから、ソフト対策が大変重要と認識しております。
今回、内水氾濫の被害を受けた取手市においては、市の防災部局と消防との間で情報共有が図られておらず、消防のみで住民への避難の呼びかけが行われ、また、内水氾濫に係る避難情報の発令方針が定められていなかったため、市当局から避難情報の発令が行われておりませんでした。
こうした課題を踏まえ、全市町村に対し、防災部局と消防との連携を確認し、訓練の実施を要請するとともに、内水氾濫による被害発生の恐れがある地区については洗い出しを行い、大雨時には十分な警戒を呼び掛けているところでございます。
また、内水氾濫については、地域ごとに地形などが異なるため発生要因が多岐にわたり、避難情報の発令基準を一律に設定することは困難とされております。
このため県では、避難情報を発令する際の目安について学識経験者に意見を伺い、監視カメラ・水位センサーの設置による現地のモニタリングや住民からの情報提供体制の構築などにより、迅速かつ的確に避難情報を発令することや、内水ハザードマップの作成について、市町村に対して働きかけているところでございます。
今回の災害での課題を教訓として生かしながら、引き続き、水害時の逃げ遅れによる人的被害ゼロに向け、市町村が内水氾濫に対しても適切なタイミングで避難情報を発令できるよう、積極的に市町村を支援してまいります。
県といたしましては、頻発化・激甚化する豪雨による内水氾濫から県民を守るため、市町村と連携を図りながら、これらの対策に全力で取り組んでまいります。