八島功男議員が代表質問:“持続可能性のある農業基盤整備”への取組について

2023年9月6日、茨城県議会代表質問が行われ、県議会公明党の八島功男議員が登壇しました。 八島議員は、持続可能性のある農業基盤整備”への取組について、“6月豪雨の農作物・土地改良施設の被害対策”と“農業基盤整備と用排水コントロール”との2つの視点から、質問しました。

(1)6月豪雨の農作物・土地改良施設の被害対策【八島功男の質問】

次に、儲かる農林水産業の実現を目指して、持続可能性のある農業基盤整備への取組について伺います。まずは、6月豪雨の農作物・土地改良施設の被害対策です。
本年6月、梅雨前線による大雨及び台風2号による豪雨は、農林水産業に大規模そして広範囲に、推計被害額5億円を超える被害をもたらしました。農作物への直接被害だけでなく土地改良施設や農地、林業では山地崩壊、水産関連でも施設や水産物に多額の損害が発生しました。
そのようななか、県では農作物の被害を受けた農業者を支援するため、「県農林水産業災害対策特別措置条例」を適用し、指定災害として告示したところです。作物によっては、今後被害額が拡大する可能性もあり、県は引き続き被害状況の把握に努めて頂きたいと思います。
6月4日早朝、私は自宅から土浦市沖宿の実家に向かいました。土浦市湖北の県流域下水道事務所霞ヶ浦浄化センターを過ぎると道路が水没し通行不能でした。やっとの思いで、つくば霞ヶ浦りんりんロードでもある霞ヶ浦沿いの堤防に出ると、眼前には人生で初めての光景が迫りました。なんと何キロメートルにもわたって、レンコン圃場の霞ヶ浦側の三分の一が湛水していたのです。堤防沿いの実家もまた、居住して70年を経て初めて床下浸水被害を受けました。
なぜ、湛水したのか。その原因は、まずは想定外の集中豪雨があったことだと考えます。
しかし、地元では、地区の排水ポンプが老朽化し、排水能力が足らないためである。今後、想定内の降雨量であったとしても、排水ポンプに不具合が起き湛水被害が生じてしまうのではないかと、不安視しています。
農業は天候の影響を避けられません。とは言え、激甚化・頻発化する自然災害への備えは十分でなければなりません。
これらを踏まえて、6月豪雨に対する農作物・土地改良施設の被害対策をどのように行っていくのか、知事の御所見を伺います。

【大井川知事答弁】

次に、持続可能性のある農業基盤整備への取組についてお答えいたします。
まず、6月豪雨の農作物・土地改良施設の被害対策についてでございます。
今般の6月豪雨の影響により、本県全域で農作物や土地改良施設などに大きな被害が発生しました。れんこんの生産が盛んな土浦市においても、圃場の冠水でれんこんの葉や茎が損傷するなどの被害が生じたところです。
このため、県では、発災後速やかに被害状況の把握を進め、農作物(のうさくぶつ)の被害対策として、6月22日に、病気まん延防止のための薬剤購入費に対する助成や、経営資金の借入に対する利子補給などを支援する「農林漁業災害対策特別措置条例」について適用することとし、スピード感をもって対応いたしました。
また、被災した農作物について、収穫量と品質への影響を最小限に抑えるため、被害程度や冠水期間など、状況に応じた肥料の追加散布や、病害虫防除などのきめ細かな技術指導を行ってまいりました。
さらに、被災した土地改良施設につきましては、市町などが行う災害復旧にかかる技術的な指導・助言などの支援を行ってきたところであり、本定例会において、災害復旧事業費の増額を補正予算として提案させていただいているところであります。
国におきましては、6月豪雨の被害状況を考慮し、先月30日に本災害を激甚災害に指定することが決定され、災害復旧事業の国の補助率がかさ上げされることから、農業者の負担は、さらに軽減されることとなります。
県といたしましては、こうした各種支援策を通じ、6月豪雨で被災された農業者の方々をしっかりと支援してまいります。
また、自然災害による農作物への被害を防止・軽減するためには、農地に降った雨を排水する水路や排水機場などの土地改良施設が、能力を十分に発揮することが重要です。
しかし、県内の農業水利施設の約半数は、耐用年数を経過しており、将来にわたり能力を十分に発揮させていくためには、老朽化が進む施設の計画的な補修・更新が必要です。
このため、県といたしましては、排水機場など基幹的な農業水利施設について、機能診断の実施や適切な対策工法などを定めた個別施設計画の策定を進めるとともに、施設の重要度や緊急性を考慮した上で、「県営かんがい排水事業」などを活用して対策工事を進めているところです。
また、小規模な農業水利施設につきましては、機能が低下した施設を管理者自らが補修・更新を行う場合に、「県単土地改良事業」などを活用して支援しているところであります。
近年、全国各地で、記録的な台風や集中豪雨が相次ぎ、大規模な災害が発生している中で、被害を可能な限り防止するためには、事前の準備が何より重要です。
このため、農業水利施設の補修・更新を、引き続き計画的に進めますとともに、自然災害など様々なリスクによる収入減少を補償する収入保険制度の加入促進に向けた取組を強化してまいります。
県といたしましては、今後も引き続き、こうした取組の支援を一層強化し、農作物・土地改良施設の被害対策と、被害の軽減に取り組んでまいります。 

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(2)農業基盤整備と用排水コントロール【八島功男議員の質問】

次に、農業基盤整備と用排水コントロールについて伺います。
土地改良事業で整備された用排水機場は、共用にあたり、複雑な利益調整を含め、地元土地改良区で長年維持管理され、地域の農業を支えてきました。その先人の労苦と知恵に心からの敬意と感謝を表しつつ、本年5月に策定された「茨城農業の将来ビジョン」にある「基盤整備の目指す将来の姿」から、土地改良事業について触れたいと思います。
私は、土地改良等の農業基盤整備の本質は、「水をコントロールすること」であり、それには排水能力と、実効性あるポンプの設備が不可欠であると考えます。
これらを決定する土地改良事業設計は、基本的な計画手法があるのは当然として、地域の実情において柔軟な対処が必要です。この地域特性とは、どのような農作物を作るのかという産地特性です。レンコン田を例に申し上げれば、土浦市手野地区の小排水路断面は、幅0.6m×深さ0.8mと断面積は0.48㎡です。レンコン産地として競合する徳島県では幅1.0m×深さ1.0mと断面積1.00㎡であり、断面積は約2倍です。台風等降雨特性の違いとすればそれまでですが、その違いは明らかです。
私は排水路の役割は他にもあると考えています。今、本県産レンコンの一部には黒皮症が発生し、農家は対応に苦悩しています。黒皮症の原因とされる「レンコンネモグリセンチュウ」は水中にいます。圃場の水を適切にコントロールすることはレンコン田の被害防止に有用だと考えます。
加えて、水を一時的に滞留させる調整池の設置が必要だと思います。その上で機械排水ができるポンプの設置を検討すべきではないでしょうか。さらには、新たに水田からレンコン田に転換する場合には、水堀り用の井戸の設置が必要であると考えます。
国は国土強靭化の観点から農業水利施設の長寿命化、食料安全保障の観点から土地改良事業(基盤整備)を推進するとしています。土地改良事業などの基盤整備事業は、農業の生産性向上と高収益化の土台づくりそのものと言えましょう。農作物も農家も、持続可能性を追い求めるために柔軟な変化と挑戦が必要です。簡単に変えることができない基盤整備事業が農業の将来を左右するからこそ、茨城農業の未来像を県と地域が共有すべきだと思います。
ついては、持続可能性のある農業基盤整備への取組について、今後どのように進めていくのか、知事の御所見を伺います。

【大井川知事の答弁】

次に、農業基盤整備と用排水コントロールについてでございます。
農業基盤整備につきましては、これまで農地の大区画化に加え、農業用水を供給する用水路や余分な水を圃場外へ排出する排水路などについて、その機能を効率的に発揮するため、用水・排水それぞれ別々に流量コントロールができる施設として整備し、安定した用水供給と排水性の改善の両立に取り組んでまいりました。
また、大区画化や排水施設の整備により、大型機械の導入を可能とすることで、生産性が向上し、整備された農地において100ヘクタールを超えるメガファーマーが育成されるなど、儲かる農業の実現に大きく貢献してきたところであります。
しかしながら、人口減少による国内市場の縮小や農業従事者の減少が急速に進行する中、本県の農業を魅力ある産業として次の世代に確実に引き継いでいくためには、農業所得の向上が何より重要であることから、農業の構造改革に全力で取り組む必要があります。
特に、消費量の減少に伴い価格が低迷している「米」については、昨今の国際情勢により、国産の需要が急速に高まっている麦・大豆などの畑作物はもとより、子実用トウモロコシなどの飼料用作物や、収益性の高い園芸品目への積極的な転換が求められております。
そうした中、農業者はもとより広く県民の皆様と本県農業の課題や政策の方向性を共有し、構造改革を加速するため、概ね30年後の未来を見据えた指針として、新たに「茨城農業の将来ビジョン」を本年5月に策定したところであります。
本ビジョンにおいて、農業基盤整備を行う土地改良事業については、メガファームの育成や畑地への転換、施設園芸団地の形成など、意欲ある担い手への農地の集積・集約が図られる内容であるものについて、事業を実施することとしており、特に、水田の基盤整備におきましては、地域自らが策定した「儲かる営農構想」に基づき、大規模農業経営体の育成や、特色ある良食味米や有機栽培米、輸出用米などの生産を推進してまいります。
また、「儲かる営農構想」の中では、産地特性を考慮し、適地適作で営農が行えるよう、排水性が改善できる水田を、畑地化エリアと一体的に整備することで高収益作物の生産を可能とし、栽培に必要な用水が供給できる用水整備や、圃場の地下水位を下げ、湿害を防ぐことができる排水整備を実施し、用排水を適切にコントロールすることで、収益性の高い品目への転換や、施設園芸団地の形成を目指してまいります。
県といたしましては、効率的で効果的な農業基盤整備事業をさらに進めることで、「儲かる農業」の実現に全力で取り組んでまいります