年金受給資格取得期間短縮と年金額改訂ルールの見直し、年金の信頼性向上は長期安定の給付確保。

 昨年、地域を訪問して頂く質問の多くに年金制度の改正について、なかなか理解しにくとの声がありました。
 臨時国会では、公的年金制度の信頼性を高める2つの法案が審議されてました。
 1つは無年金者対策として、年金の受給資格を得るのに必要な加入期間(受給資格取得期間)を平成29年8月から短縮する年金機能強化法改正案。
 もう一つは年金の持続可能性を高めるため、年金額改定ルールの見直しなどを盛り込んだ国民年金法改正案です。
 その改正の意義や内容、両法案のポイントは次の通りです。
 まず、年金機能強化改正案とは、公明党が昨年夏の参議院選挙で訴え続けた無年金者救済法案です。
 そのポイントは、
 ☆資格期間を25年から10年に短縮
 ☆平成29年10月から支給開始
 ☆無年金者64万人を救済
 無年金者対策の年金機能強化法改正案は、先の国会で成立しました。現在は25年の年金受給資格期間が、今年8月から10年に短縮され、新たに約64万人が年金を受け取れるようになります。
 実際の支給は今年10月から始まります。また、将来にわたって無年金となる人が大幅に減ることが期待できます。
 この受給資格期間短縮は、今年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げとの同時実施が決まっていましたが、税率引き上げの2年半延期に伴い、2019年10月まで実施が延期されることが懸念されていました。これに対し公明党は、前倒し実施を強く主張。その結果、政府は受給資格期間短縮の実施を前倒しする法案を提出しました。
 年金額は、加入期間に応じて決まります。自営業者らが加入する国民年金は現在、保険料を40年間納めると月額約6万5000円ですが、10年の場合、約1万6200円となります。
 新たな対象者が年金を受け取るには、自身で請求手続きを行う必要があります。法案成立後、新たな対象者には請求書類が届く予定です。
 次に、国民年金法改正案は、年金制度の安定性を高め、将来世代の給付水準を確保しようとするものです。
<改定ルール見直し>
 柱の一つが年金額改定ルールの見直しです。現役世代の賃金変動に合わせた給付額とする考え方を徹底し、少子高齢化に合わせて給付額を調整する「マクロ経済スライド」の発動ルールも見直します。
<パートの厚生年金加入>
 パート労働者への厚生年金適用拡大の対象に、従業員(厚生年金加入者)500人以下の中小企業などで労使が合意した場合も加えます。なお501人以上の企業では、今年10月からパート労働者への適用拡大が始まっています。
<産前産後の保険料免除>
 国民年金に加入する女性を対象に、出産前後4カ月間の保険料を免除し、期間中の基礎年金を満額保障する制度を2019年4月から導入します。その財源として、国民年金保険料に月100円程度が追加されます。対象者は年間20万人程度の見込みです。
 このほか、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織体制も強化します。
 質問頂く内容は、次の改定ルール見直しにあります。その考え方は、「将来世代の給付守る」であり、「年金カット」は的外れです。
 年金は、年金の負担や受給などお一人お一人の状況で捉え方に大きな差異があります。その中で、世代間の公平を確保することが年金制度の安定に必須です。
 公的年金は、現役世代が納めた保険料や一定の税金を今の年金受給者への給付に充てる“世代間の支え合い”で成り立っているため、基本的には現役世代の負担能力(賃金水準)に応じて給付を見直すことが求められます。
 しかし、過去にリーマン・ショックの影響などで賃金が下がった際、それに見合った年金額に下げることができなかったため、将来の給付を“先食い”する形で現在の給付水準が本来よりも高くなる事態が発生しました。将来の給付水準低下を防ぎ、世代間の公平を確保するためにも、現役世代の賃金変動に合わせた給付とする考え方を年金額改定の際に徹底することが必要です。
 毎年行われる改定では、物価や現役世代の賃金の変動を年金額に反映していますが、「物価が上がって賃金が下がった場合は据え置き」「物価の下落以上に賃金が下がった場合は物価に合わせて改定」というルールになっています。
 新ルールではこれら二つのケースについて、年金の支え手である現役世代の賃金変動に見合った年金額にすることとしました。
 万が一の事態に備え、新ルールを導入しても賃金や物価が上昇していれば年金額は下がりません。事実、自公連立政権下では賃上げが実現しており、今後も賃金が下がらないよう政策を総動員することは大前提です。見直しは万が一の事態に備えるためであり、野党の“年金カット法案”との批判は的外れです。
 新ルールは、低所得・低年金者を対象として最大で年6万円の福祉的給付が2019年10月に開始された後、21年度からの実施となります。
 景気回復期に調整します。
 一方、「マクロ経済スライド」は、物価や賃金が上昇して年金額がプラス改定になる場合にのみ、現役人口の減少などに応じて、給付額の上昇を低く抑える仕組みです。2004年に導入されましたが、これまで2015年度しか発動していません。抑制の見送りによって、現在の給付水準が本来の想定よりも高くなっており、将来の給付水準が低下する恐れが生じています。
 新ルールでは、デフレ(物価の持続的下落)下では同スライドを発動せず、給付抑制は先送りするものの、賃金や物価が上昇するような景気回復期には、給付抑制の先送り分を年金額に反映させるよう調整します。この調整は、受け取る年金の額面が前年度より減らない範囲で行われます。
 

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